第18話 スプリングセミナー編一日目⑪
夕食の時間が終わり、四人は部屋に戻ってくつろいでいる。入浴まで三十分間の自由時間が与えられているのだ。
「わーい、ベットだぁ! ボヨーンボヨーン!」
レイナは興奮した様子で、ベットの上で飛び跳ねる。
「ジャンプして、ジャンプして、ダイブだぁ! ピョーン!」
レイナは自分のベットから、隣のチカのベットに勢いよく飛び移り、その勢いを利用してそのままチカに抱きついた。
「イェーイ、チカに着地だよん!」
「うふふ、レイナちゃん楽しそうですね!」
チカは抱きついてきたレイナの頭を撫でながら言った。
「私んちはベット無いからさぁ、ベットを見るとついついジャンプしたくなっちゃうんだよねぇ」
「ちょっとレイナ! ものすごく汗かいてるじゃない。はしゃぎ過ぎよ! 武田先生を呼んでまた怒ってもらおうかしら?」
「それだけはやめておくれよぉ、ユリ〜」
この日だけで既に二回も怒られているので、レイナは武田のお説教はもうこりごりなようだ。
「まあまあ、少しくらい良いじゃないですか。今日は一日勉強頑張ったので自由になった今はっちゃけたい気持ちもわかります」
「レイナはずっと寝てただけでしょ!」
チカが擁護しようとするもユリは容赦なく正論をぶつけた。
「そ、それはその……あっ、もう入浴時間だ! 早くお風呂入ろうよん!」
「あなた露骨に話そらしたわね……まあ、いいわ。お風呂入りに行きましょうか。レイナ臭いから早く汗を流して欲しいし」
「嘘!? 私が臭い訳ないよん!」
臭いと言われた事でレイナは大きなショックを受けた。
「大丈夫ですよ、レイナちゃん。レイナちゃんの汗はとっても良い匂いです」
チカはレイナの体に鼻をうずめながら言った。
「チカは汗フェチだったの!? 待ってて私も今から汗をかくから! 別にチカのためじゃないわよ! たまたま汗をかきたくなっただけなんだから!」
ユリは空いているレイナのベットの上に立つと兎のようにジャンプを始めた。
「皆、下らない事してないでさっさと行くよ」
リョウコが呆れ気味に言って部屋の外に出ると他の三人も後を追って外に出た。
このホテルには一室につき一つずつ風呂があるのだが、それとは別に大浴場がある。長野県の天然温泉を使った豪華な風呂だ。
せっかく豪華な温泉があるのだから大浴場を使おうということで意見が一致し、四人は大浴場に向かって歩き始めた。
女湯と書かれたのれんをくぐり、四人は脱衣所に到着した。
服を脱いで籠に入れると、大浴場の中へと足を進める。
「うっひょ〜、お風呂が沢山あるよん! 近所の銭湯よりも広い! よ〜し、入りまくるぞ〜!」
沢山の浴槽を見てレイナは興奮を隠せない様子だ。
「こらこら、待ちなさい。まずは体を洗ってからでしょ! 温泉に入るうえでのマナーよ!」
「まったく、ユリは厳しいな〜」
四人は並んで椅子に座るとシャワーを浴び始めた。
「あれ? ユリちゃん、シャンプーハットかぶってるんですか?」
ユリは自宅から持ってきたシャンプーハットをかぶって頭を洗っていた。
「ユリは昔からね、シャンプーハットが無いと頭を洗えないんだよ」
「ちょっと前までリョウコだって使ってたじゃない!」
「ちょっと前って小学生の頃の話でしょ? 流石に高校生になってまでは使わないよ」
「仕方ないじゃない! 小さい頃、目に大量のシャンプーが入ったのがトラウマなのよ!」
「ユリちゃんは意外と子供っぽい所が多いんですね!」
「チカのバカ! もう知らない!」
ユリは拗ねてそっぽを向いてしまった。
「よーし、お風呂に入るぞー!」
レイナは頭と体を洗い終わると椅子から立ち上がり、一番近くにある浴槽に向けて走り出した。
「待ってください、レイナちゃん! そのお風呂は……」
「ホップ・ステップ・ジャンプ!」
チカの静止も聞かずにレイナは水泳選手のように思い切り浴槽にダイブした。
「ぎゃぁーー! 冷たい! 死ぬぅーー!」
「レイナちゃん、それは水風呂ですよ!」
「助けて、助けてぇー!」
あまりの冷たさにレイナは手足をバタバタさせてもがき苦しんでいる。
「待っててください、今助けますよ!」
チカはレイナを助けるために水風呂にダイブした。
「きゃぁー! 冷たい! 冷た過ぎます!」
助けに行ったは良いもののチカ自身もあまりの冷たさにパニックになり、手足をバタバタさせ始めた。
「もう二人とも何やってるんだよ!」
見かねたリョウコが水風呂に入ると、右腕にチカを左腕にレイナを抱えて浴槽の外へと運び救出した。
「う〜、死ぬかと思ったよん……」
「ありがとうございますリョウコちゃん! それにしてもすごい力ですね!」
「毎日、腕立て伏せを百回以上やって筋肉を鍛えてるからね。ほら、触ってみるかい?」
リョウコが腕に力を入れて差し出すと、チカが筋肉を触り始めた。
「うわ、カッチカチですね!」
「腕以外ちゃんと鍛えてるよ。腹筋も触ってみな!」
「リョウコちゃん、細身なのにすごく固い腹筋ですね! こんなに固い腹筋、初めてです!」
「はっはっは! そうだろう、そうだろう!」
リョウコは自慢の筋肉を褒められて満足気に笑った。
「う〜、はっーくしょん!」
突然、レイナが大きなくしゃみをした。
「レイナちゃん、大丈夫ですか!?」
「水風呂で体が冷えきっちゃったみたい……」
「それじゃあ早くお風呂に入って温まりましょう!」
四人は沢山ある浴槽を順番に周り始めた。
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