第6話 自分もクズってことはわかってるよ
「
大変に業腹ではあるけど、さっき入室してきたメンバーのうちの2人、御霊知夏の1つ上のお姉さん、つまり俺の2歳上の2人。長女の玲火さんと次女の桜火さんに助けを求めてみた。
御霊知夏みたいな自称お姉ちゃんじゃなく本物のお姉さんのオーラを纏ってて、当時の俺はいつのまにか好意を抱いてた。俺の初恋の相手。もちろん今となっては真っ黒黒歴史だけど。
昔、まだ御霊家の人間を今ほど嫌悪してなかった頃、何度かアプローチして一緒に遊んでもらったこともある。
もちろん、彼女たちからすればただの妹の友達の1人であって、恋愛的な感情なんて一切なかったに違いないけど。
それでも少しは交流があった2人だからこそ、俺がこんなことを望んでないと訴えれば、万が一、億が一、いやもう無量大数分の一の確率かもしれないけど、家族を止めてくれる可能性がなくはない。って感じの淡い淡い期待に任せて必死に助けを求めてみた。
「んー、ごめんね、それはむりかなぁ〜」
「あたしもむりかな〜」
俺の初恋相手の2人は申し訳無さそうな表情すら見せず、シンプルに俺を切り捨てる。
それどころか、2人とも、俺に見せつけるように2人の間に立っている男の腕にギュッと抱きついて幸せそうな表情をする。
「チッ」
わかりきった結果ではあったが、苛立って自然と舌打ちがまろびでる。
2人に抱きつかれて、それでも顔色を変えず生気の抜けたような表情を浮かべる彼は
3人でラブラブな姿は、ある種このあたりの住民の名物的存在でもある。
端嶺さんは、御霊の人間にいろんなものを奪われ続けて、俺と同じようにいい感情を抱いてないはずなのにも関わらず、早い段階で自分自身ってものを捨て去って玲火さんと桜火さんに服従を誓っていた。
その精神性が気に入らなくて、俺は勝手に敵愾心を抱いてる。
そんな人がこの場でも無感情に佇んで時間がすぎるのをただただ眺めて日和ってると思うと無性にイラついてきて、ついでに、ロクに身動きも取れず限界にきた苛立ちが吹き出すように、無意識に八つ当たりする言葉が紡がれていた。
「............
『あんたも地獄に付き合ってくれよ』ってな気持ちで、ついつい玲火さんと桜火さんに抱きつかれて平然としてる端嶺さんに当たってしまう。
俺がこういうことを言うことで彼がどんな状況に追い込まれるか、想像に難くないのに。いや、むしろだからこそ「八つ当たり」として言葉がでてきたわけだけど。
「......っ!?!?!?!?」
俺の言葉にどう返事をするのか、玲火さんと桜火さん、その他家族のみんなの視線が端嶺さんに注がれる。
彼は生気のない虚ろな表情を崩し、少し焦ったように視線を泳がせたあと、軽く咳払いして口を開いた。
「い、いやいや、
動揺しすぎでしょ。誰がどう見ても嘘じゃん。
「あー。端嶺ってば、今嘘ついたねー。私達に抱きつかれて嬉しくないんだ。ねぇ玲火、これはもっとちゃんとわからせてあげた方がいいんじゃない?」
「そうだね、桜火。もう端嶺の周りには私達以外誰もいないっていうのに、私達への愛情が足りないみたい......。もっといろいろ奪わないとだめなのかなぁ」
「ひっ!!!! や、やめて! 俺は2人のこと心から愛してるから! だからもうこれ以上......俺から奪わないでくれっ!!!! おいっ、綴明くん! まじで恨むからな!!!!」
「さーせん」
当てつけで道連れにしちゃって悪いとは思わなくもないけど、まぁ俺の溜飲を下げるための犠牲になってくれてありがとうございます。
あぁ、御霊の人間のことをさんざん悪く言ってるけど、こんなカスみたいな八つ当たりしてる時点で、俺も相当にクズなんだよな。しっかり自覚してますよ。
「次はどの部分いっとく? そろそろ手足もいじゃおっか、桜火?」
「それもありだねぇ〜。でも手をもいじゃったら手で気持ちよくしてもらえないし、とりあえず今は足だけでいいんじゃない、玲火?」
「ま、待ってってば! 俺、玲火のことも桜火のこともほんとに愛してるんだって! だから......『いいからあたしたちはこっちでお話スるよ〜』......いやだぁああああああ!!!!! 綴明理真!!! 覚えてろ!!!!!!」
「知りませんって。あんたも、知火牙さんと同じ穴のムジナでしょ。人の心がない。イカレてやがる」
ブーメランが飛んできてることにはちょっとは気づいてたけど、言い切ってスッキリした。ありがとう、端嶺さん。
玲火さんと桜火さんは、逃げようとする端嶺さんを2人がかりで取り押さえて自分たちの履いてたパンツで彼の口を塞ぐと、こちらを振り返って口を開く。
「あ、そうだ。私たちはやむにやまれずこれから端嶺をわからせてくるけど、その前に。
「そうそう、ママたちも他のみんなも、あなたがパパたちへの心からの謝罪をするのだけ聞いたら、あなたを家族の一員として認めてあげるみたいだし、すぐ解散できるみたいだし、余計な時間使いたくないと思うな〜。端嶺への侮辱は特別に許してあげるから。だから、早く謝りなよ。さもないと......」
「「スペシャルコースに切り替わっちゃうからね〜」」
そう言って、端嶺さんたちのやり取りを見ていろいろと考えを巡らせる俺をスルーして、3人で部屋の外に出ていってしまった。
スペシャルコース............。
桜火さんたちがその言葉をいった瞬間、数人の彼氏くんたちがブルリと身を震わせてるのが視界に映っていた。
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