第5話 イカレた一家とあからさまなフラグ
「やぁ、目が覚めたと聞いて様子を見に来たよ。
「っ」
それに続いてぞろぞろと複数人、というか見たところ御霊家が勢ぞろい+αが入室して来たかと思うと、そのうちの1人の女性が言葉を続ける。
「そうね、男の子の強すぎるツンデレは需要が低いよ。素直に旦那さまの悪口言ったことを心の底から謝罪して。今なら心からの謝罪だけで許してあげるのだから早くしてくれるかな? 早く終わらせて旦那さまに抱いてもらうんだからさ」
「............
彼女は
御霊知夏と御霊凛火恋の実の母親だ。娘の知り合いの前で、『旦那に抱かれるために急げ』とか言うやつは狂ってる以外の何者でもないだろ。
「おいおい、理真くん。僕の大切な嫁に対して『狂ってる』とは失礼じゃないか。仮にも君の未来の義母なんだ。もっと丁重に接することはできないのかい? いや、丁重にといっても、万が一にでも僕の凛夏を女として見たりしたら、いくら娘の想い人だからといって生かしておくつもりはないんだけどね?」
「..................
有名な話だ。
御霊知火牙は自分の嫁に2〜3人の子どもを産ませた後、あとはデキる心配なく思う存分ヤルために、嫁たちのを自らの手で摘出して飾っているという。
なんとも趣味の悪い話だが、俺は以前に、御霊知夏にそれが並べられてる様をみせられたことがある。いつか私のもこんな感じで加工して理真にあげるからねとか言って。俺は当たり前のゲロったけど。
生きたまま剥製にされるって話も、その話とリンクすればにわかに真実味を帯びてくるってわけだ。
このイカレポンチめ。
「ははは、この僕のことを知っていてこれだけ不遜な口をきけるのはホント大物だよ。流石は僕の娘が選んだだけはある。見事な漢っぷりだよ。君なら安心して家族に迎えられそうだ。僕のことはお義父さんと呼んでくれていいんだよ?」
「あなたみたいなクズのこと、そんな呼び方しませんよ」
「..................お前......いくら旦那さまが優しいからって、娘の夫だからといって、ウチがいつまでも許してあげると思ってるのかい?」
凛夏さんがかつて見たこと無いほど髪を逆立ててキレてる。不動明王もかくやという感じだ。
「待ってママ! ごめんなさい、理真は私のことが好きすぎて、パパとママに挨拶するので緊張してツンツンしちゃってるだけなの! だからあんまり怒らないであげて! 理真も。これ以上パパの悪口はやめて。ツンデレはそこまでだよ」
「ぐふぅっ!!!」
俺のことをかばってるかのような言い草をしたかと思うと、俺の腹の上に目掛けてジャンプで飛び乗ってくる。
御霊知夏の体型的には160センチ中盤くらいで、やや痩せ型。そこまで重くないとはいえ、飛び乗ってこられると内臓がひっくり返ったのかと錯覚するくらいにはダメージが来る。
すべての元凶はコイツ。
俺からすりゃあ、いっそ御霊知火牙の怒りでも買って、さっさとこの世とおさらばする方が気楽ってもんなんだよ。
自分で命を絶つ勇気はないだけで、そっちがヤってくれるなら、それでも構わねぇんだよこっちは。くっころだよ。
それに、悪口って言うけどさ......。
「嫁の子袋を取り出して部屋に飾るのはシンプルにサイコ野郎でしょ。その娘もとんだメンヘラだしよ。俺は事実を言ってるだけ」
「へぇ......。家族勢揃いで囲まれてるこの状況で、知夏姉ぇのこと『メンヘラ』だとか、パパのことクズだサイコだなんて悪口言えるなんて、ほんと、なかなか度胸座ってるね」
「だね。さすがは知夏が選んだだけあるよね〜」
「あぁ。なかなか良い漢気だな」
「なんでも良いから早く知夏に子ども仕込みなよ〜」
「そうそう、知夏がこんなにお膳立てしてるんだから早く決めちゃいなって〜」
「漢ならさっさとヤっちまえ」
「いまのまま認めるわけにはいかないけどね」
「そうね、ダーリンを貶めた落とし前はつけてからじゃないと」
など、他にも口々に囃し立ててくる彼ら彼女らは知夏の兄弟姉妹たちとその母親たち。
母親
この現代、しかもよりにもよってこの街でそんなハーレムがまともに維持されていて、父親1人と母親5人、11人兄弟姉妹が仲良く家族をやってると言うんだからその時点で驚きではあるんだけど。
父親が当たり前のように何人もの女を妻とか言って囲んで浮気してるのに、それに対して誰も文句を言わない気狂い一家。
気持ち悪すぎて本気で鳥肌たつわ。
それ以上に、娘あるいは姉、もしくは妹の企てた拉致計画を諫めるどころか家族総出で協力してくるようなイカれ具合。
そのヤバさの前には、ハーレムがどうだとか異母兄弟姉妹とかそういうのは霞んで見える。
人間として持っているべき最低限の倫理観が欠けているとしか思えない。
ベッドを囲むように佇んでるのは、知火牙さんと、凛夏さんを始めとした5人の知火牙さんの嫁さんたち、そしてその子どもたち10人。
さらに数人は一部の子どもたちの彼氏と思われる人たち。
何人かは前に少しだけ言葉を交わしたことがある。
彼氏くんたちはさっきから微妙そうな目線をこちらに向けて無言を貫いてる。憐れむなら助けろ。
まぁ俺も別に彼らにいい印象を持ってるわけじゃないからお互い様っていうかなんていうかね。
ともかくそんな彼ら彼女ら合わせて大体20人くらいが、俺とその上に乗っている御霊知夏を囲んでいる現状。
いやマジでなんの儀式なんだよ。
俺、これから生贄にでもされんの? いや、ある意味ではまさに生贄か......。俺どう見ても供物だわ。
この家族がオカシイことは前からわかってたけど、まじで生理的に無理。
5人も妻を娶って健康な子宮を取り出して部屋に飾る夫も。
半ば無理やり健康な子宮を摘出されても夫を愛し続ける、むしろ愛を強める5人の妻たちも。
そんな親たちを見て違和感を感じてなさそうな子どもたちも。
何があったのかは知らないけど、御霊家の子どもたちに絶対服従を誓っているらしいパートナーたちも。
どいつもこいつもムリ。キモチワルイ。
俺は絶対あぁはならねぇ。
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