第31話 愛奈ちゃんの家

 愛奈ちゃんの部屋を掃除する日になり、車で家へ向かう。私たちと同じく相模原市に住んでいるようで、二十分程度で着いた。仕事場から近いところには住みたくないらしい。愛奈ちゃんは週に一回の日曜日しか休みがない。休みの日は買い物かホテルに泊まってダラダラ過ごす。仕事の日は日中昼前に起きてジムに行ったり忙しい毎日を送っている。


 クリスマスに年末年始と特にイベントが多かったため、最近会えていなかった。案内されて中へはいる。三階建ての二階にあるここは1Kでキッチンが広い。小さいコンロが余計にそうさせている。


 それにしても……大きなゴミ袋が丸出しだ。四十五リットルの袋にそのままゴミを捨てているような感じ。部屋を見てみると、机の周りに漫画や化粧道具など色々なものが散乱している。ゴミ屋敷という程ではないようだし、予想より片付いている……よね?



「汚ったないでしょ? やろうと思っても、気付いたら漫画読んでんの。やばいよね」


「私、頑張る。いつも頑張ってて忙しいもんね。仕方ないよ」


「優しすぎる……ありがとぉ〜! 掃除用具は出しといた。あとはちょくちょくわかんないことあったら聞いて〜。手伝わないけどいい?」


「いいよ、ゆっくりしてて」


「音楽かけとこっか?」


「うん、よろしく」


 愛奈ちゃんは音楽をかけた後、床に置いてあった漫画を読み始めた。まずはキッチンから始めよう。コンロに汚れが媚びついている。普段料理をしている証拠だ。スプレーをかけて、時間を置いている間に溜まっているお皿を洗う。キッチンの後は部屋の物を片付ける。


 どこに置くか愛奈ちゃんに聞きながら収納していく。散乱していたから、物がなくなるとかなりスッキリした。掃除機をかけて、次はお風呂場。うわ……髪の毛が溜まってる。そこかしこに黒カビが生えている。愛奈ちゃんはこういうのが気にならないんだ。私はとっても気になるけれど、人によって感覚は違うよね。


 お風呂場のあとはトイレ掃除も終わり、全部終わった。綺麗になると達成感があるなあ。やりがいがあって楽しかった。音楽が鳴っているのを忘れるくらい、集中していたみたい。時間は……16時半か。愛奈ちゃん今日も仕事だし、いつ帰ろうか。


 愛奈ちゃんに終わったことを伝えると、ガバッと抱きついてきた。フワッと女の子のいい香りがする。



「一万円でいい?」


「え?! 高すぎるよ……」


「相場わかんないもん。会社員よりお金稼いでるし、この位痛くもなんともないし」


「いやいや、ホントにもっと安くていいから! 普通高くて二千円とかじゃないかな。何気に楽しかったし……」


「まじ? 掃除が楽しいとか有り得ないわ。羨ましい……じゃあ五千円で決まり。これ以上下げないよ」


「ええ……わかったよ、ありがとう」


「いやいや!! こっちの方がありがとうだし。ありがとうすぎるくらいだわ! じゃあゆっくりしてってよ。なんか食べるっしょ?」


「今日仕事だよね? 長居するつもりはなかったし、もう帰ろうかな。送ってもらわなきゃ帰れないもん。ごめんね」


「なんで謝るのさ!まだ時間余裕じゃん。もっと居てよ」


「そ、そう?愛奈ちゃんがいいなら……何時までいようかな」


「夜ご飯食べていけばいいじゃん。それから送っても間に合うし……いいでしょ?」


「本当にいいの?」


「いいって言ってんじゃん! ねぇ〜お願い〜」


 結局夜ご飯まで頂くことになった。私に長く居て欲しいなんて言ってくれて、胸が熱くなる。掃除をしただけでこんなに感謝してくれる。役に立ったという実感がわく。愛奈ちゃんは私の掃除姿を見て、家事代行サービスの仕事が向いているんじゃないかと言ってくれた。確かにそうかもしれない。


 楽しいことで稼いだ方がいいし、家事をこなせばいいだけだから気を遣わなくていいもんね。仕事ができないことで悩む必要もない。最近需要が高まって、報酬も高い。まさかこんなことがきっかけで決まるなんて。私に出来ることなんてほとんどないのだから、探すのに苦労するだろうと思っていた。信用して頼んでくれた愛奈ちゃんに感謝しないと。


 冬だし簡単だからと、キムチ鍋を食べることになった。近くのスーパーへ行き、材料を買う。掃除してくれたからと言ってまた全部払ってくれた。私がお金を払おうとするのを制止されたのだ。


 そりゃあ夜のお仕事だし、稼いでいるだろうけど……なんだか申し訳ない。こういうのに慣れてないだけなのだろうか。そのお返しとして、私が作ることにした。どう見ても二人分の量じゃないから、数日かけて食べてもらおう。野菜たっぷりだし、健康的だから大丈夫だよね。


 熱いお鍋で身体も温まり、車で送ってもらった。家に着いて愛奈ちゃんとお別れする。オネエ様はソファでスマホを弄っていた。次の仕事は家事代行が良いかもしれないと伝えると、賛成してくれた。



 東宮くんからメッセージが来ていて、日程調整についてだった。送ってくれた日程をオネエ様に伝え、こちらが都合のいい日を送る。すぐに返事が来て、ストーカーと対面する日は来月に決まった。東宮くんの両親も謝罪したいと言っているらしいが、さすがに緊張するからやめてもらった。


 前回東宮くんと会ったあのカフェで話し合うことになった。オネエ様に東宮くんはどんな人か聞かれて、高校時代の人気者だったと答えた。以前聞かれた時は苦手だと伝えたが、カフェで会ってから変わったんだよね。私から見た彼がどんな人か、彼を見てどう思うか……そこまで聞かれてないだろうが、細かく話した。私にとってオネエ様以上の人は居ないって、伝わるといいな。




 それから数週間ドキドキしながら過ごした。日が近くなっていく度に、あと何日か数える。愛奈ちゃんと遊ぶ時も頭から離れなくて、何かあったのか心配されてしまった。愛奈ちゃんも信用できる人だから、言っていなかったストーカーのことや対面することなど全てを話した。進展があれば報告するつもりだ。


 録音した方がいいと言われたので、スマホのアプリの作動確認も済ませた。特に準備するものはないため、ただその日が来るのを待つのみだ。オネエ様は何ともない顔をしていたが、時折真剣に何かを考えている。きっとオネエ様も緊張しているのだろう。面倒事に巻き込んでしまったな。何も言わなかったせいで、オネエ様に被害が行く方が怖いからこうするしかない。



 信用されていないのではないかと、悩ませたくないのもある。五歳くらい歳上だし色々な経験をしているだろうし、とても心強い。オネエ様が付いていてくれなかったら、どうすればいいかわからないや。何とも頼りない大人である。



 ─────


 やっぱ今読むと文章が下手なのもありますが、説明ばっかりでダイジェスト感がすごいですね。成長を感じるぜ!!


 全部修正するとなると骨が折れるので、そのまま出してます。すみません……🙇‍♀️

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る