7.これ黒**

「お前が、言った言葉の意味が分かった」


新が捨てていった鞄と携帯を回収する日秋の背中に、一触は口を開いた。


「良い、子だな」


「だろ? 倍額で買ってあげたくなるだろ、睡眠薬」


嬉々として振り返る、自分の神。

歳は遙かに上、だというのに衰えを知らない精神。


「泳がせて、正解だとは言わせないぜ」


「…お前が倍額を払うことで、彼は仕事をしなくても済むからな」


「…なんだ、分かってたの?」


「悪いな」


「可愛くない、不眠症のお前のために買ってたのに」


かちゃん、と刀を担ぐ日秋。

帰りましょうという背中に、一触は少し驚いた。


「追わないのか?」


あれだけ構っておいて、最終的には放置する。

日秋らしいといえば、日秋らしいけれど。


「いいの、日秋さんそこまで優しくない」


だから帰ろう、俺の一触。

空いた手を差し出され、守は神の指示に素直に従った。


「信じてるから、良いの、良い結果を」

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