6.この黒***
「何、しに来たんだよ」
根の方に陰気、ドスを効かせて睨み上げる。
「あんたは俺を拒絶したろ」
助けておいて突き飛ばし、ごめんなさいで済むのなら。
最初から尻尾巻いて逃げてもらったほうがまだましだった。
「あれはっ、新が怖いと…まさか新の上着を」
「俺嫌われたって、俺ばれたって悪いことしてんのが、ばれて、嫌われて、」
檄でしょぼくれた言い訳をかき消した。
「俺は、俺は、怖くなかったし、あのまま、抱きしめててっ」
ほしかったが言えない。
どうしても吐けない。
拒絶が、自分の罪が押し寄せる。
押し寄せて息が詰まり出す。
歯軋りで受け流しても、生きている限りそれは続く。
「俺はぁっ、あんたが普通に人と接してっから、ああ、俺は同情で特別でもなんでもなかったってっ」
神と立ち並んで怒号を叩きつける。
叩きのめしたい。
完膚無きまでに。
それが以下というものなのだから。
無表情を張り付かせつつけだ仇がきて、堰を切って止めどない。
目の前の相手が憎くて仕方がない。
好きなのに、ぱぱより憎たらしく見える。
「女の子を助けたことか?あれは、車がびゅんびゅん走っている道を渡ろうとしてて車にぶつかりそうになったから助けただけだぞ、それとも…」
気の弱い錆の声がかんに障る言葉を吐く。
「それとも?あんた、まじで神じゃん」
新は鬼のような形相で、叩きつけた。
「なのになんでだよ、神のくせにっ。神なんだろっ。俺の前にわざわざ立ってっ。わざわざっ門仲たち助けてっ」
言いたくもなにのに言えてしまうのは、心底自分が最低の底を目指しながら生きてきたからだ。
卑屈に捻くれてる。
きっと好きだと言えば、それで済む。
なのに溢れて湧いて、止められなかった。
身を折って、目で追って、新は怒鳴り続けた。
「嫌味かよっ。俺が罪だらけだからか?俺が頭が悪いからか?お前の友を助けたからいい加減悔い改めろとでも?俺に構う暇あんなら他あたれ他ぁ」
腐ったような息を吸い込み、
「俺は、どうぜっ」
そこまで出して掠れてしまった。
力を込めすぎて喉が切れたように痛い。
鼻も痛い。
胸も痛い。
黒い両手が伸ばされる。
腫れ物に触れるような、壊れやすい陶器を抱きしめるような、弱々しいそれ。
それは新をゆるく抱きしめる。
それは新を決して腐らせるための抱擁ではなかった。
「…新は特別だぞ。俺にとって新は特別なんだ。新が望むなら、俺は新以外の人間には優しくしない、約束するぞ」
だから
選んでほしい。
この神を。
そう聞こえた。
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