4.ただ黒**









「でばがめ?」


声を掛けた先に、木に隠れていた人物が姿を見せた。

いかにも、性格はきついですそれが問題ですか、風な男だった。


「逢い引きには見えなかったが」


嫉妬も怒りも揺るぎも見えない声で、男は帯刀する神に近づいた。


「妬けた?」


「誰がだ」


ぴしゃりと跳ね返され、日秋は肩すかしをくらう。


「…あの子。虐めんなよな?」


「見逃せと?」


「まだ子供だ」


その発言で男は日秋を凝視すした。

軽蔑の意味を込めて。


「そうは、できない」


「…堅物」


新の行っている行為は、子供であろうとも許されることではない。

男は日秋を説き伏せようと口を開け、押し止められた。

抜き身の刃が男の喉元を捕らえていた。

少しでも動けば柔らかく皮膚は裂ける。

日秋はもう笑っていない。

神様の目をしている。

こうなっては自分に勝ち目はない。

そうなるよう選んだのは自分だ。


「…お前に言われたくはない」


せめて嫌味を零すと、神は至極光悦に微笑んで、


「虐めないでやってくれ」


刀を鞘に納め、右手を男の頬に添える。

真正面から視線を絡み合わせると、神の真意が男の胸に進入してきそうだった。


「あれは頭良い子供なんだから」


あれは、子供なんだから


誰に言うこともなく、神は口を閉ざした。











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