空に目が浮かんでいた

狐照

空に目が浮かんでいた

空に目が浮かんでいた。


正確には三日月だったが、彼には瞼を伏せた巨大な何かの目に見えた。

現に睫が、二重が見えるのだあるのだ。

彼は右手で縋る先を手繰ったが、空を切ったため恐怖倍増。


恐ろしくなり、気付かなければよかったと恐怖で立ち竦み、周囲の夜空の異変にも気付いてしまった。


星がない。

雲がない。

月の姿を借りた目しかない、暗い暗闇。


 

彼は夏の終わりの嫌な出来事気のせい、そう思い目を合わせてしまった。

 

黒目が彼を捉え、瞬かれた。


「いやああ!!なぁああっまばたいたよぅう!!!」


彼はもう怖くて怖くて怖くて、縋り付こうとしてまた空を切る。

縋りたい相手を探すと、大分距離をとられ呆れられていた。


「うぅくっ!うちゅうじんだよぉ!ぜってぇやべぇよお!」


彼はもう怖くて怖くて怖くて、足をじたばた。

どうしたら良いのかも分からずじたばた。


「…夜なんか、見てるからだろーが」


「う…え?」


「俺見てりゃー怖くねーだろ」


少し苛立ち鋭い鷹の目で、ほらこいよ。

彼は、頭上で瞬きぱちくりん、な気がしてならなかった。

が、足を止めおいでと言ってくれた人が大好きすぎてどーでもよくって、駆け寄って縋ってキスをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

空に目が浮かんでいた 狐照 @foxteria

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ