6.熊穴に籠る日**
「うるさいなぁ」
「すどーさまのしゅらばより静か」
呑気なひそひそ。
女のヒステリックな興奮。
予想通りの展開に、末棄の眼から諦めが瞬いた瞬間。
酷はそれらを排除しにかかった。
まず女の喉を潰し黙らせる。
女の異変に気付いた傭兵から酷は首を捻り上げることにした。
強化人間が四体、ということもあって火気系統がかなり凶悪装備だったが、影のように素早く飛びかかる酷に使用する暇はなくただの鉄の塊。
酷が甲冑の三体を黙らせた辺りでようやく他の強化人間も反応し、鷹宗は首藤の身をその巨躯で庇う。
その他右左は手に手を取り合って酷とは反対、テラスの二体を仕留めに向かった。
懐からナイフを取り出し、その他右左は反撃をかいくぐり傭兵の心臓をひと突き。
僅かな出血を伴い絶命は二人同時。
いえーいと勝利のハイタッチ。
その間に廊下の五人全員頸椎をへし折った酷は、末棄が無事を確認した。
末棄はやれやれまたかと、肩を落としうんざり顔。
あまり無事ではないのかもしれない。
酷はそう感じつつも、まだ他に敵影はないかと探りかかる。
首藤がたいしたこともしていないのに、なんか大変疲れた体で伸びをし立ち上がる。
「いつも思うんだけどさぁ」
「なになにすどーさま」
「なんで傭兵雇ってまで襲うのかな。お金無いんでしょ?」
「あとばらいきぼんぬっ」
そのままでは一生答えはでないと、末棄は
「高濃度アムリタをタダで手にれる方が、遙かに利益が出るんだよ」
二人を見向きもせず、襟を整え身支度。
なんでなんでー?と先生に質問するように答えを求める首藤を無視し、末棄はいつも通り変若水の番犬、警察に連絡。
「ってかこれかじょうぼうえいで訴えられない?」
目新しい単語を使いたかっただけの首藤に「明確な殺意装備してんのにか?」冷たく言い放つ末棄は通話中。
あ、こちらの話ですからと愛想を電話の向こう側のおまわりさんに振りまく。
酷は終始、増援がないかに集中。
「はいはい撤退しますよ四馬鹿さんたち」
「よんばかって…俺含む?」
「含まれないと思う脳みそがまたあったんだなぁ…」
つくづく感に末棄は項垂れながら強化人間たちに指示を飛ばす。
撤退は鮮度が命。
自己処理は警察がする。
次の予定は、と鷹宗が確認。
末棄が颯爽と歩き出す。
末棄はその時その瞬間だけを信用する、それ以外は何も信用しないということ。
変若水も兄弟も会社も誰も彼も。
孤独を整った影に落とす末棄の、まさにその影に酷は寄り添うように潜んだ熊穴に籠る日。
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