第2章ー2学期ー
入学からもう3ヶ月が経ち、長期休みに入って、その休みが明けた。僕ら3人は長期休みの思い出を語りながら登校していた。そして、休み明け1日目の始業式、転入生が紹介された。その転入生は、隣国の王女様、フルート様だった。
「初めまして、この2学期間、この学校にお世話になります。これからよろしくお願いします。」
そして、その時から、フレンの様子が変わった気がした。
「フレン、どうかしたの?最近、元気がない気がするけど。」
「いや、そんなことがないけど。もしかしたら、休みが快適すぎて学校が嫌になったのかも知れないな。」
「それ本当?」
やっぱりユウもフレンがおかしいことを感じ取ってるみたい。
僕が感じたフレンの異変は本当みたい。
「大丈夫だって。頑張って勉強を再開しないとね。」
やっぱり何かおかしい。どうしてなんだろう?僕はこういうことを考えるのが苦手だ。人の感情を読むというのはやっぱり僕にはできないことみたい。
「どうかしたのですか?」
「あ、フルート様。別に気にすることじゃないですよ。」
ユウが答えた。ユウはやっぱり人と仲良くなりやすいんだな。いろんな人と話せるんだし。
「そう、なのですか?それと、様付けはやめてくださいな。どこか壁を作っているようで嫌ですの。なので、普通に呼び捨てでいいですよ。」
「そうなんですね、わかりました。」
「お、俺、やることあるから行くよ。」
「あ、うん。」
もしかして、フルート様と何かあったのかな?避けてる感じがする。ユウも感じてるかな?
キーンコーンカーンコーン
もうお昼ご飯の時間だな。今日もみんなと中庭でお昼ご飯を食べよっと。まだここに来てないみたいだからまずユウのところに行ってみよう。
ガラガラ。今はこの音が楽しみ。この音が聞こえるとみんなが来てくれる、会えるから。
「んぅ、あれ?もうお昼?」
ユウはずっと寝ていたみたい。最近、よく眠るようになったらしいけど、どうやったら眠らなくなるのかを探してるみたい。
「お昼だよ。ずっと寝てたんでしょ?」
「ごめんごめん、後でノート見せて?」
「わかったよ。」
「あれ?フレンはまだいないの?」
「そう、遅いよね。いつもは終わったら駆けつけてくるのに。」
何かあったんだろう?
「教室に行ってみよう。」
「そうだね。」
ユウの提案で教室に行ってみた。
ガラガラ。だけど、そこにフレンはいなかった。不安だ。どこに行ったんだろう。そう思っていると、廊下から悲鳴が聞こえた。
「何があったの!?」
そこに行ってみると、カッターを持ったフレンと、血まみれで立っているフルート様がいた。
「どう言うこと?何があったのフレン?」
「あ、アミスタ。」
「こいつが!フルート様の腕を切ったんだよ!」
「俺じゃない、俺はやってないぞ!」
「こんなことをする人だったなんて、悲しいですわ、お兄様。」
「お兄様!?」
「そうですわ、フレンさんは私のお兄様ですわ。同姓同名だと思っていたのですけど、やっぱり、お兄様ですわ。」
「ふ、フレン?このことは、本当なの?」
「あぁ、本当だ。」
フレンはどうしてこのことを隠していたんだろう?フレンは、王様になるのが、嫌だったとか?フレンならありそうだけど。でも、フレンが腕を切ったって言うのは信じられない。フレンはそう言うことをするような人じゃないから。僕は、フレンを信じてみよう。
「フレン、とりあえず、移動しよう。」
「、おう。」
ガチャ。ここは屋上、今の騒動があれば誰も来ないだろうと思ったから。それに屋上の扉はスライド式じゃないから固定して、引きこもることができる。今は落ち着くまでそうしておこう。
「・・・俺、2人には話しておこうと思ってるんだ。俺が2人に会うまでに何があったのか。」
「いいよ、聞かせて。」
僕は賛成だ。聞けたら今の状況を変えることができるかもしれないと考えたから。
「俺も賛成だよ。でも俺、馬鹿だから理解するのに時間がかかるかも。」
「ユウ、全然それでいいよ。じゃあ、話すね。」
「お願い。」
「俺が、フルートの兄だってことは知ってるよね。俺、王位継承権あったんだけど、どうしても王になりたくなかったんだ。普通に働いて、結婚してっていう生活をしたかったんだ。」
彼の話を聞いて、心が痛くなった。彼はやっと手にした自由を今、潰されそうになっていることをわかっていた。
フレンは13歳の時に体質「ガイア」に目覚めて、国民からも王になれという圧を受けていた。フレンはその圧の中を必死に生きていた。そして、ある日、フレンは城を抜け出した。それを知ったフルートがフレンの後をついて行き、その先の崖に突き落とした。そして今はフルートが王になっている、らしい。
僕には考えられないような苦痛があったのだろう。でも今の暮らしに満足しているらしく、夢に今で見ていた普通の生活らしい。それが、たった今崩れようとしている。フレンの妹に。
「そんなの!自分が王になったんだから別に気にすることもないし!突っかかるようなこともないじゃん!なんで今!?」
「・・・多分、俺の予想なんだけど、国が、うまく行ってないんだと思う。そもそもフルートには王になるような素質が元からなかったんだ。だから俺を連れ戻しにきたか、俺になんか恨みでも持ってきたのか。」
「恨みって、自分から王になったのに理不尽だよ!」
理不尽、確かにそうだ。僕はどうすれば、フレンを救えるんだろう。
キーンコーンカーンコーン
「どうする?場所移動する?」
「いや、教室に戻るよ。次の授業、小テストあるから。」
「無理はしないで。」
「ありがとう。」
ガチャ。扉を開けるとそこには、武器を持った生徒がたくさんいた。
「やっと扉が開いたぞ!」
「やれやれ!」
「お返ししろ!」
ど、どう言うこと?なんでこんなに人が。
「オラァ!」
その時、箒が、ユウの頭に当たった。
「イッ!」
「ユウ!血が。」
「だ、大丈夫。それほど痛くはない。」
「でも、頭から血が出てる。」
「ッ!」
「ふ、フレン。どうしたの?」
フレンの雰囲気が瞬時に変わった。それに嫌な予感もする。
「アミスタ、ユウと一緒に待ってろ。行ってくるから。」
「なんで!?まずは先生を呼ぼうよ!この人数は無理!」
「じゃあ、行ってくる。」
ガチャン。扉の閉まった音からフレンが怒っていることは僕でも読み取れた。フレンはあの群衆をどうするんだろうか?殺すんだろうか?それを見た僕とユウはどんな反応をするんだろうか?もしも、フレンが、死んじゃったら・・・。
「アミスタ!変なこと考えない!いいか?ここから降りるぞ。」
「お、降りる!?ここ、屋上だよ?五階建ての。」
「俺が鳥の羽をコピーする。この前みたいなことは内容に気をつけてやるから。」
「でも、それ、5時間続くんでしょ?」
「大丈夫、羽だけコピーすれば体にそれほどの負担はない。」
「わかった。やってみよう。」
ユウがコピーしたフクロウの羽はとても綺麗な白色だった。でも、今、フレンと対面してもどうすればいいかわからない。彼の体質はとても強いもので、僕らでは到底力にならない。それにこの前、コピーしている間でもコピーをもう一度することができるとわかったから、ユウを変にフレンに近づけない。やっぱり、ここはユウを外で待たせていたほうがいいかもしれない。僕だけでフレンのところに向かわないと。
「ユウはここで待っていて。フレンの体質をコピーしたら、それこそユウはもう体が持たないよ。」
「・・・わかった。でも本当に危なくなったら加勢するからね。あと、フレンを助ける方法、考えてるの?」
「うぅん、何も考えてない。でも行くしかないと思ったから。」
「あ〜、アミスタにも俺の脳筋が移っちゃったか。まあそんなこと言ってられないけど。絶対に無理はしちゃだめだからね?」
「わかってる。」
本当は分かってないかもしれない。フレンのためなら、無理をするかもしれない。もしかしたらフレンも、さっき、屋上に閉じ込めたことはこう言う気持ちだったのかな?大切だから、助けようとしたんだろう。
ガラガラ。フレンは教室にいた。そこで、リンチにされていた。俺は、そこにいた連中に、激しい怒りを覚えた。もうそのほかの音が聞こえなくなるくらいに。
「フレン。もう、やめよう。ユウの傷もそんなに深いものじゃないし、ユウも怒ってないよ。」
「ダメだ。あいつらは、俺だけじゃなく、ユウも、アミスタも傷つけようとした。あいつらを許せるわけがねえ。それに、俺の妹も俺だけで済ませばいいのに俺以外のやつにも仕向けたんだ。絶対に、許せるわけがない。殺す。」
ダメだ。言っても聞かない。怒り狂ってるんだ。どうやって、頭を冷やさせたらいいんだ。
「大地よ。我が手に剣として集まれ。」
フレン、本当に殺すつもりなんだ。
ガラガラ。いきなりドアが開いた。そこにいたのは、ものすごい顔をしたフルート様が立っていた。そしたら、ものすごい声で言った。
「その力さえあれば、私は!王としてみんなに認められるんだ!!その力、お前の命と引き換えにいただく!!!」
彼女は豹変していた。いや、今まで猫を被っていたのだと思い、恐怖を覚えた。「命と引き換え」ということはこれが成功したらフレンは死ぬと言うこと。嫌だ。フレンが死ぬのは絶対にダメ。どうする?どうする?どうする?彼を死なせないために、僕は、僕はどうしたらいいんだ?そう考えていると、女子の甲高い声が聞こえた。
「死ねえええええええええええ!!!」
僕はフレンに考えなしに走って行った。彼女の右手が光ったと思えば、僕の胸に当たった。僕はすぐに息ができなくなり、意識を失った。
僕が起き上がった頃には、周りはボロボロ、僕に触れた彼女の右手は黒色になっていた。炎に焼けたわけでもなく、腐っているわけでもない。ただ、黒かった。僕は呆然としていたら、ユウが駆けつけてきた。
「どうしたんだ!?アミスタ!?」
「ど、どうしたって何?」
「・・・いや、なんでもない。フレンは?」
「そうだ!フレン!」
ガラガラ。フレンと呼ぶと弱々しくドアが開いた。そのドアの開いた先には左足を引きずったフレンが現れた。
「なんともない。足を怪我しただけだ。」
「なんともないわけないだろ!俺、中からすごい音がして駆けつけたんだからね!」
「す、すごい音?本当に何があったの?」
僕は、もしかしたらフレンが暴走したからか、とは思った。でも、ここまで怪我をしているのならフレンが暴走したとは考えにくい。じゃあ、なんでこんな・・・。もしや、フルート様が?
「アミスタ、本当に何も覚えていないのか?」
「覚えてない。気づいたらこんなことになってたんだよ。」
「そうか。」
ユウも、フレンも何があったのか僕に話そうとはしなかった。僕は何もわからずモヤモヤする。
「うっ、うぅ。」
こうしてモヤモヤしている間にフルート様が起き上がった。彼女は黒くなった右手を見て、僕を見た。彼女は悲鳴をあげてぶつぶつと何かを呟いていた。
「ぶつぶつ、ぶつぶつ・・・。」
僕は彼女の姿を見て可哀想に思った。だから、彼女に話しかけてみようとした。
「だ、大丈夫、ですか?」
「ち、近づかないで!」
彼女は何か怯えていた。いや、明らかに僕に怯えているように見える。僕はまた混乱した。僕は彼女に何かしたのか?
「アミスタ、今は近づかないほうがいい。」
「どうして?」
「・・・アミスタも疲れてるだろう。とりあえず先生が来るまで休んでおいてくれ。先生には俺が全部話すから。」
「う、うん。」
そこから先生がやってきて、パトカーや救急車も駆けつけてきた。僕は警官に色々聞かれたが、フルート様に触れられてから覚えていないと言っておいた。そして、彼女が何をしようとしていたのか後からフレンから聞かされた。彼女はフレンの体質を手に入れようとしていたことは知っていた。彼女は体質を手に入れるためにいろんな文書を読み漁り、自分には害がなく、体質を手に入れる方法を知った。彼女の知った方法とは、魔力を体に直接入れること。体質は魔力からできていると言うことから考えたらとても簡単なことだと思った。でも、触れた僕には体質がないから失敗したのだろうと思ったんだが、魔力を取られるなら僕は死んでいたらしい。そしてその後に僕は気を失った。その間に僕は気配が変わり、豹変して、暴走したらしい。僕は僕の中に悍ましい何かが住んでいると思った。今回の事件でフルート様は国から放り出され、僕は悪意がなかったと言うことで一応様子見ということになったらしい。みんなと離れなくてよかった。
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