第3話 神様、あんまりです。

目が覚めた。横たわっている俺。

そこは一面真っ白な世界だった。


「あれ?俺死んだ…よな?」


見回しても、何も変わらぬ風景。

ここは一体どこだ?

誰もいない、音もない。

そんな虚無の世界に放り出された俺は少し安堵していたのかもしれない。


「野中が死ななくて良かった。」


自然と出た言葉にハッとした。

いつの間にか嫌いな人生に大切な物ができていた事に気づけたみたいだ。

おかしくて1人で笑っていると影が重なった気がした。

顔を上げた俺の前に居たのは幼い顔の青年のように見えた。


「立花駿くんだね。」

「そう、ですけど…何故俺の名前を?」


その人はニコッと微笑むと俺と視線を合わせる


「僕は君たちが言う、神様だよ。ごめんね、救ってあげれなくて」

「神様…?」


何が何だか分からなかった。

神と名乗ったその人物はなんだか悲しそうに笑った。


「では、ここからは君の今後について話をしよう!」


ニコッと笑った神様はここが天界である事、死ぬ運命に無かった俺が友人を庇って死んだ事。

そして、もう元の世界に戻る事が出来ない事が告げられた。


ー帰れない、もう誰にも会えないー


【何も無い】と言えば嘘になるが、あながち未練をそこまで感じる心を持ち合わせていなかった。


「意外とスッキリした顔してるね。大丈夫かい?」

「いや、なってしまったものはしようがない、としか言えないので大丈夫です。」

「そうか、そんな君に提案があるんだよ!」


ピッ!っと人差し指を立てた神様はニコニコと俺に告げる


「君、転生に興味あるかい?」


【転生】

肉体が生物学的な死を迎えた後に、非物質的な中核部については違った形態や肉体を得て新しい生活を送る。


俺は突然の事についていけず、ボーッと神様の顔を見た。


「実は僕は君のいた地球ともう1つ、別の世界を統べているのさ。」


神様はその世界について教えてくれた。

その世界の名は

【リアンテス】

剣と魔法の世界だった。


「そういえば、僕名乗ってなかったね。僕はリアム。リアンテスを守護し統べている神様だよ。」


よろしく、と神様は手を差し出す。

俺はその手を取ると神様が立たせてくれた。


「君は僕の加護が弱かったから助けられなかったんだ。だから今度はリアンテスで僕の加護のもと健やかに過ごして欲しい。」


俺に断る理由は無かった。

俺は二つ返事で了承した。


「よし、じゃあせっかくだから大盤振る舞いだよ!僕の加護があればほぼつまずく事はないと思うけど、せっかくなら世界を見て欲しいから役立つシステムを授けるね。」


そう言うとリアム様は俺の額に手をかざす。


「よし、これでいいね。転生後はしばらく記憶が無いけどそのうち思い出せるはずだよ。あ、向こうに着いたらちゃんと協会でお祈りするんだよ?そしたらまた話せるだろうし、君の助けになれると思うよ。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「お礼をいうのはむしろこっちの方さ!では、素晴らしい異世界ライフ、楽しんでくれたまえ。」


リアム様がそう言葉を紡いだ瞬間、辺りが光り輝いた気がした。

その眩しさに咄嗟に目を閉じる。


そして俺は転生した…様だった。

今俺は、森にいる。

目の前には魔物の群れ。

所謂、絶体絶命だった。


ー神様、これってあんまりでしょー

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役立たずのレッテルを貼られましたが、本気は出してません 玲也 @Reiya_77

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