8話 後輩と同棲の提案

先輩、今日は、付き合ってくれてありがとうございました。ハッピーXmas!」




「今日は、楽しかったですよ!」


聖夜、街中のクリスマスツリーの前で、春風からお礼を言われた。


「先輩も、マシな格好すればそれなりにイケているんですからね」




「普段は、ダメな言い方だな」




「だって、普段はくたサラですもんw」




「悪かったな、くたびれサラリーマンで!」




パンケーキカフェを出た後で、服屋でウィンドショッピングをした。その後で今の状況に至るのだった。




               ***




「先輩、やっぱりそのGファッションは無いですよ。ゴキが擬人化したらこんな感じ?」


弱そーと笑ってくる。某フォーマーズみたいなゴリマッチョなゴキの擬人化したらキモいは!




「失礼な!これしか服を持っていないんだよ!」


いきなり、デートに誘われて新しい服を買う余裕がなかったんだ。




「じゃあ、まず、パンツは黒でいいとしてボトムスは、白シャツでいきましょう!」


「パンツ?下着を買うのか?!」


「ズボンですよ!恥ずかしいこと言わないでください!」


「あとボトムスって、なんだ>重装備したメファッションか?」


「20代後半にもなって恥ずかしくないんですか?上に着る服ですよ!」




「そうなのか」


「まったく、これだから、陰キャオタクは」とブツブツ小言を言う、春風。


「パンツとシャツは決まったので、最後にアウターを選びましょう!」




「あうたー?なにそれ??」


「上着のことですよー!ほんとん、なにも分からないんですから......」




「あ!これなんかよくないですか?」




「パーカか大きいんだな」


「オーバーサイズのマウンテンパーカですね。ベージュと黒のツートンカラーが......」




「ん?なにか言ったか?」




「べ、別になにも!


さあ、試着室で着替えますよ!」


「え?!このまま買わないのか?」




「ダメですよ!ちゃんと試着しないと。さあ、こっちに来て入ってください」


「いいですか?開けますよ!」


「ちょ、待てよ!早いはやい!まだ前をとめてないからさ」




「乙女か!開けますよー」




春風は、黒一色の俺を上から下まで、コーディネートしてくれた。


「てか、なんで、パーカの前をとめているんですか!?開けてあけて」




「え?開けておくものなのか??」




「これだから、オシャレ初心者はー!」








「いちいちうるさいなー!」




「先輩だってちゃんとしたのを着れば見目はいい方なんですから」




「なにか言ったか??」


ボソッと言われたからよく聞こえなかった。


「な、なんでもない!」


(聞かれていなくてよかった。心臓の音がうるさいな。さあ、ファッションレビューだ!)




なんということでしょう。上から下まで黒一色だったGファッションから、パンツは黒のままだけど、シャツは無地の白。アウターはオーバーサイズのマウンテンパーカを羽織って、ベージュと黒のツートンカラーでスタイリッシュにアウトドアファッションに仕上げてきて、ほんとに、先輩?不覚にもカッコイイと思ってしまったのは秘密だ。






イルミネーションの装飾が施された道を歩き、俺たちは街中のクリスマスツリーの前まで見つめ合う。




まあ、春風にでも誘われなかったら、一人、家でクリボッチとなって、配信を観て、一人淋しくエアー彼女とあんなことやこんなことをして一人淋しく過ごしていたことだろう。




 そんな、クソ陰キャキモ童貞に、いい夢を見させてくれた彼女には感謝してもしきれないな。




そんなことを言い春風が俺に長細い手提げ袋を渡してくる。




「先輩のことだからXmasに女子からプレゼントなんて貰った」ことないですよね」




無いけどこれは、哀れみか?」




「はい。哀れな童貞に、魂の救済を」と中を見てみると、ネクタイが入っていた。


「今、巻いてあげますね、先輩」




と、優しく言い、俺のシャツに黒チェック柄のネクタイを巻いてくれた。


俺の中の悪魔も浄化されてしまった。デビルハンターもビックリだ。




「ネクタイか」


「はい、これを付けて、お仕事頑張って下さい!」




「俺にもっと働けということか?過労死させるつもりか?」




「そうしたら青春時代にタイムリープして再青春してください!」




「あったな、そんなWEB小説」




今は、書籍化されて商業作家となっている。こうして、どんどん先を追い抜かれていって俺の夢が叶うことなてないんだ




「いいよな、書籍化される作家はきっと才能があったからなんだろう。俺には才能は無いがな」




「何言っているんですか?書籍化されないから才能がないんじゃなくて、努力しないから才能の芽が出ないんですよ。努力は才能なんですよ、それを怠ってはダメです、努力はいつか報われるんですから!」




「俺が努力していないとでも言いたいのか!?毎日、ボロボロになるまで働いて、疲れて帰ってさ、小説書きたくても書けないんだよ!」


これが、現実だ。努力が報われるのは文才がある奴だけなんだ。働かないと生きていけない。夢だけじゃ生活していけない世知辛い世の中だ




「それじゃあ、わたしが全力で先輩のことを支えます!先輩だって努力するればきっと......」




「俺を支えるって具体的にどうするんだよ?!」




どうせ、勢いで言っただけだろう。こんな社畜を支えるとか。そういえば、くたびれサラリーマンがJKと同棲してお世話してもらう小説があったな。男の夢だけど、所詮はフィクション。


リアルでJKと同棲してお世話してもらうなんてあり得ない。




それか、家出JKを拾ってお世話してもらうか?ダメだ。犯罪臭しかしない。




「弁当は毎日、作っているので、今度は、毎晩、夕食を作りに行きます!」




「いや、通い妻かよ!?いいのか?負担にならないか?俺なんかの為に」


会社にバレて、春風が変な目で見られたら大変だ。断らないと!


「俺のことは、放っておいてくれよ。他にいい人を見つけて幸せになれよな」




「いえ、先輩だからいいんです!先輩が、いいんです!」




(愛してる!わたしがずっと傍で支える人)




「だから、わたしが先輩と同棲して毎日、お世話をしてあげます!」


え?何言っているんだ?俺と春風が同棲?!


「これから、よろしくお願いしますね。先輩!」




まさか、自分の身に起こることだとは思わなかった。

               ***


読んでくれてありがとうございました。

今回で、春風が勝ちヒロインの道を一歩進めました。(確定じゃない)


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