第4話 後輩にプレゼント

春風から、弁当を作って貰ってからというもの、毎日、昼休みに


手作り弁当を渡されるようになった。


そのことにより、食生活が改善されて、栄養が十分に行き渡り健康体となった。


「佐藤、最近、顔色がいいね。前は、死んだ魚の目をしていたのに、今は目が生き生きしとてるよ」




「そうかー?そうだろうか?」


これも、毎日、弁当を作ってきてくれる春風のお陰だ。少しウザイところが玉に瑕だが、感謝してもしきれないな。


春風から、弁当と手料理を作って貰ったことで、佐藤は、されてばかりじゃダメだ。


 春風に何かお返しをしたいと思うようになる。 


 天城先輩に、日頃、お世話になっている人にどういうのをお返しに贈ったらいいのかを訊く。


天城先輩は、「どんなことをされたにもよるけど、手料理を振舞って貰ったなら、ハンドクリームやエプロンなど、普段の料理するときに役立つものがいいんじゃないかな」と佐藤にアドバイスをする。




「じゃあ、相手には、ハンドクリームとエプロンを贈ることにしますね、アドバイスをありがとうございました」と天城先輩にお礼を言う。


「いえいえ、相手の人が喜ぶといいわね~」


相手が喜ぶかは分からないですけど受けた恩は倍返ししたいです」


「そっか、たくさん愛してあげてね」


「なんでそうなるのですか?」


「え?だって倍返しってことは愛情を倍注ぐということでしょう?」


「いや、あいつにそんな感情なんて持ち合わせていませんよ」


「そうかなー、そのうち、佐藤くんの方から本気になっちゃったりして」


「あり得ませんね」






「そっか、佐藤くんにも春が来て嬉しいわ~」


「だから、そんなのじゃないですから。ただ、受けた恩を返したいだけですよ」




「そうなのね~いつか素敵な恋に発展するといいわね」




「え?冗談ですよね」


春風と俺が恋人?ないなあり得ない。冗談は口だけにしてもらいたいものだ。




 「アドバイスありがとうございました。では、これで失礼します」




「真面目ね~私の前でそんなにかしこまらなくてもいいのに」


「俺の上司ですから、そうはいきませんよ」




いくら、親しく話せるといっても会社の先輩だ。親しき中にも礼儀ありだ。


 


どれにしたものか迷う。他の男性の意見でも取り入れてみるか。


「なあ、橋本、お前、彼女にエプロン着させるんだったら、どんなのが好みだ?」


隣のデスクの同期の社員の橋本に訊いてみる。


 「彼女にエプロンかー。ていうか佐藤彼女できたんだね。おめでとう!」


「いや、俺の彼女じゃなくてだな......」




「じゃあ、未来の嫁かい?」


「違う。これって意味同じじゃね?」




「ま、まさか、イマジナリー彼女か!妄想の彼女に着せるのを選ぶとは、三次の彼女作ろうな」




「哀れみの目で見るのやめろ。」


いくら、独り身だからって妄想彼女を作るほど、恋に飢えていない。ラブコメを読むのは好きだけど、自分で彼女が欲しいとは思わないのだ。だって、彼女が出来るってことは、自分のプライベートな時間が削られることになるのではないか......今は、恋よりも推し活を優先したいところだけど、未来たんが卒業してしまった今、推し枠が空いてしまっていた。


「日頃、お世話になっている人にだよ。他意はない!」




「ああ、それなら納得、エプロンのプレゼントあげてまた作って貰うとかな」




「なんだか、おこがましくないか?」


「いいんだよ。それで、OKしたら脈ありってことじゃん」


「そいうものか?」




「わかった、今日、仕事帰りにでもいいの探してみる」




「進展あったら教えてね」


「ウゼー」




仕事帰りにエプロンを買いに行ったのだが、どれがいいか散々悩んで、最後には、スタッフに訊くこととなった。


 


女性に贈るエプロンを探しているのですが、どんなのが好まれるのでしょうか」




すると、スタッフの女性は丁寧に受け答えしてくれた。


 「女性に贈るものですと淡いピンクや白などのシンプルな落ち着いた色のエプロンが人気ですよ」


と言われ、桃色の淡いピンクのエプロンを購入した。




 翌日、昨日の仕事帰りに買ったエプロンを渡そうとしたが、周りに大勢の人が居ることで気が付いた。この状況下で渡したら、変な誤解されないかと。結局、昼休みも、就業後も渡せないまま会社を後にした。


 いいや、どうせ俺からのプレゼントなんて春風も期待していないだろうし、妹にでもあげるかと、すっかり春風に渡すのを諦めてしまってiた。




その日の夜、夕食も食べ終わり寛いでいると突然の来客があった。


「はーい」玄関に出ると、春風が立っていた。いったい何用だろう?


 「夕食なら終わったぞ。今日は、どうしたんだ」




「今日の先輩の様子が可笑しかったので気になって来ちゃいました」


「夜に無暗に男の家にくるんじゃない」


年頃の女性が、一人暮らしの男の家に来るのはあまりにも危険過ぎる行動だと思う。


 いや、俺が、何かするわけじゃないのだけど。


「大丈夫ですよ。先輩は無害ですから、先輩は、わたしの体を見てもえっちな気持になったりはしないでしょ?」




「まあな」


だが、春風は胸は大きいが中身は子供。ガキに欲情するほど俺も猿じゃない。


やっぱり」


「寒かっただろ。上れよ、お茶ぐらい出してやる」


「いいんですか?やったぁ!」




俺は、キッチンでお茶の準備をする。




「紅茶でいいか?」


「あ、ミルクも入れてミルクティーにしてください」


「注文が多い奴だな」




「ほらよ。ドカンと雑に置いてやる。




「ちょっと、この店のスタッフ態度悪いんですけど!モグモグにクレーム投稿きしますよ!」


「生憎、うちはカフェでもなければ俺はスタッフでもないんだが」


「もう二度とこんな見せ来るかー!」




「もう、二度とうちに来ないんだな。わかった。望み通りに出禁にしてやろう」


勝手に来て、家主にクレームをつけるとは失礼な奴め。それと、うちはカフェじゃない。




「わー、ウソです!また来たいですー!」




「別に、本気で出禁にするつもりはねえよ。お前の料理美味かったから、また食べたいし」




「あれ?わたし、先輩の胃袋を掴んでしまいましたか?!」


「うるさい!それで、もしよかったら、これ」と言って紙袋を渡す。


「プレゼント、ですか?なんで?わたしこんな貰うようなことしましたっけ?」


「中身は、エプロン?わぁ、桃色で可愛いほんとに貰ってもいいんですか?」




「ああ、好きに使ってくれ」


「やったー!家で料理作るときに使おう」




「うん、それで。もし良かったらそのエプロン付けてまた飯を作ってくれないか?」


「つまり、わたしに通い妻になれと?そう言うのですね!」


「先輩も、大胆だなー!」




「あーもー。ウザい!お前はやっぱり出禁だー!」


春風から、からかわれ、つい頭に血が上ってしまう。やっぱり、コイツはウザい。


「そうしたら、ろくな料理がたべらえませんよ。いいのですか?わたしの力が必要じゃないですか?」


「勝手にしろ!」


これからも食事をお願いしたいのだが、素直になれずに言えない佐藤のであった。


                    ***

勢いに身を任せて書いた1~5話でした。もし、ここまでの話で面白いと思いましたら、応援をよろしくお願いします。嬉しくなります!

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