連星
家に帰るとほぼ毎日ネットの海をさまよい、新しい光を探していた。
自身では輝けないことがわかっているので、コバンザメのように寄生先を
探すしかないと思ったからだ。
”周りから多くの事を学び、少しでも輝きたい。”
後から考えればこれは一番の遠回りで、悪手であった。
理由は至極単純で、ネットで誰かを見つけるよりも、現実世界で尊敬できる人を探したほうが早いからだ。
一度当たりが出たから、確率が低くても賭け続けるギャンブラーのように
私はSの幻影を追っていた。
たいていの場合、このような賭けは失敗に終わるが、私は運がいい。
今回も”ジャックポット”を引いてしまった。
Bは私より年下の大学生だった。
彼の第一印象は気遣いができる人。
誰とでも臆面なく、自然に、しかも当たり障りなく話せる能力は私が喉から手が出るほど欲しいものだった。
しかも、自分より短い人生でそれらを学んでいる。
興味を抱かずにはいられなかった。
彼からは”方法論”よりも”考え方”を学んだ。
これはSも言っていた点だが私の考え方はとても幼い。
温室育ちの宿命だ。
「俺、女の子と話すの苦手なんだよね。変に意識しちゃってさ」
「あぁ、なるほどね…でも相手からしても同じじゃない?」
「え?」
彼はめったなことでは反論してこなかった。
そんな彼が珍しく私に応射してきている。
-自身の中で論理的に破綻しているところがないか?-
頭の中がずっとぐるぐるしている。
「相手から見ても君は異性なわけじゃん。相手だって同じ問題はあるはず」
「うん」
「でもさ、例えばAさん君とゲームするとき気遣ってるように見える?」
「見えない」
「そうそれ、相手もただの人間だからそこだけ見てればいいんじゃない?」
盲点だった。
”相手の目線になって考えよう”なんて子供でも知っているが、実践となると
私は年下の大学生にも劣るようだ。
「確かに…全く気が付かなかった。」
観察力と考え方、この二つの点で彼に勝てたと思う瞬間はなかった。
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