第19回 『真面目に読んだら負け』について思うこと

 今回のお話は、創作論というよりも物申す系のお話になってしまいます。

 お気を悪くされたら申し訳ございませんが、ご容赦くださいませ。


 私が某小説投稿サイトのコンテストでランキングを眺めていた時のこと。

 とある作品が目に入り、読んでみようかとクリックしたのですが。


『真面目に読んだら負けw』


 ……そんなタグがついているのが目に入り、私はそっとブラウザバックしました。


 そのタグを見た時、どうにもモヤモヤしたので、それが何故なのか、ここに書き記しておきます。


 真面目に読んだら負け。

 なんだか馬鹿にされたような気がしたのです。

 同じコンテストに作品を応募している作家の皆さんにも、コンテストでどんな作品が読めるか楽しみにしている読者の皆さんにも、あまりに失礼ではありませんか。


 小説投稿サイトの作品は、基本的には無料で読めます。

 しかし、お金は払わなくても、「時間」は支払っているのです。

 読者の時間とは、すなわち読者の人生、読者の寿命の一部です。

 大袈裟に聞こえるかもしれませんが、事実です。

 読者の方がせっかく貴重な1日24時間のうちの一部を、その作品を読むために消費してくださる。

 それなのに、その作品を読んで損した気分になったらと思うと、いたたまれません。


 それに、そのタグをわざわざ作者自身がつけるというのは、『保険』をかけているようにしか見えないのです。


「この作品がつまらないと思われても、俺はまだ本気出してないから」


 私だったら「じゃあ最初から本気出せよ」としか思いません。

 たとえスベったとしても、「あちゃー、ダメだったか。本気で笑わせるつもりだったのになあ」くらいは言って欲しいのです。

 芸人魂ではありませんが、真面目に読む気がある読者には真面目に小説を提供するために、作者も頭を悩ませるものでしょう。


 さらに、前述しましたが、同じコンテストに作品を応募して、書籍化や賞など、夢や実績を追い求めている作家の皆さんにたいへん失礼だと思います。

 そんなタグがついている作品が、自分の作品と同じ棚に並べられている。

 私はそのコンテストに参加していませんが、そんな想像をしただけで身震いします。

 しかも、そのタグがついている作品は、なんとランキングで6位ほどの上位にいたのです。

 この現実を見せつけられた作家の皆さんには同情しかありません。


 そう、6位だったのです。

 読者を馬鹿にしているとしか思えない、その作品が。

 そう思うと、これは現在の読者の総意のようにも思えます。

 読者も(全員ではないにしろ)頭を使ってWeb小説を読みたいと思う人間もそこまで多くないのかもしれません。

 頭を空っぽにして、とりあえず暇つぶしができればいい。

 私はそれを否定するつもりはありませんが、Web小説の世界というのはこういうものなのか、と愕然としました。

 真面目に読む気のない読者には、真面目に読まなくてもいい小説を提供するのもアリなのか……と深く考え込んでしまった次第です。


 結局のところ、『真面目に読んだら負けw』というタグのついた作品は、「あ、真面目に読んじゃダメなのか、じゃあ読まない」と、そっとブラウザバックするのが最善なのでしょう。

 読むか読まないかは、最終的には読者の選択次第なのです。

 ただ、私は作者として真面目に作品を書きたい、と気持ちを新たにした出来事でした。

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黄色の研究 永久保セツナ @0922

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