第16回 小説とシナリオの違い
これまで現役シナリオライターとして、「文字書きの修行とバイト兼ねてシナリオの副業するのもありだよ!」と言ってきた私ですが、小説とシナリオは似ているようでやはり細かい違いはあるものです。
シナリオの書き方をそのまま小説に持ってくるとまた違う問題が発生するので、今回はその辺をお話しようかなと思います。
シナリオというのはいわば台本です。
朗読動画のシナリオでもゲームシナリオでも、それぞれ書き方に差異はあるものの、物語を表現するために必要な筋書き、と考えていただければ良いでしょう。
例えば、動画シナリオだと以下。
***
義母「中卒の上に男の子も産めないバカ嫁なんて我が家には必要ないのよ!」
私はがく然としてしまいました。
義母は学歴主義で、夫と結婚するときも説得に苦労したものでしたが、まさか勝手に離婚届を出していたなんて…。
義母「息子にはもっとふさわしい嫁と結婚させるから、さっさと実家にでも帰りなさい!」
義母がバタンと玄関のドアを閉めたのを目の前にして、私は突然のことにぼんやりと立ち尽くしていたのです。
***
ゲームシナリオだとこんな感じかな?(自作ゲームしか作ったことがないのであまり他人に見せる向けではないのですが)
***
#???
「――ああ、ヒトの子。ヒトの子。愛しい子」
「お前が欲しい、どうしても」
「隠して、攫って、連れてくぞ」
「一緒に行こう、神隠し――」
#主人公
「――……。」
「う、ううん……?」
#女医
「ああ、目を覚ましましたね」
#主人公
「あなたは……? ここは……」
#
たしか、私は大学のサークルでキャンプに来たはずだ。
バーベキューや川遊びをして、少し散歩も兼ねて森林浴を楽しんでいたはず――。
#曜子
「私の名前は八雲曜子と申します。ここは――」
#
曜子さんは、不意に曇った表情を浮かべた。
#曜子
「……ここは『神隠し村』、と呼ばれています」
#主人公
「神隠し村……?」
#
聞いたことがない。そもそも、山の周辺にそういった集落の類はないはずだ。
何より、村の名前がなんだか不吉だった。
***
シナリオと小説の違いで一番わかりやすいのは、台詞の前に人物名がつくことでしょうか。
劇の台本と考えれば、誰が喋っているか明確にするのはある意味当たり前ですよね。
ただ、これを小説にそのまま持ってくると、大多数が「これ小説じゃなくて台本じゃね?」という感想になります。
小説の場合は、誰が喋っているかは地の文で説明するべきなのです。
逆に、シナリオの地の文で誰が喋っているか、わざわざ説明すると野暮というか回りくどくなってしまいます。
そういった違いを理解した上でシナリオライターの副業をすると、小説との違いはあるものの文章力自体は強化されると思っています。
一番大きいのは、プロットや本文を添削してもらえて、感想や指摘をいただけること。
文字書きにとって、必ずフィードバックがもらえるのは貴重な機会です。
自分の文章にケチを付けられるのは嫌だ、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり自分で気づかないところを指摘してもらえたほうがより魅力のある文章になるのではないでしょうか。
なにより、自分の好きな文章で少しでもお小遣いがもらえるのは嬉しいですしね。
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