第14回 実践編【後編】プロットを作ろう

 前回の実践編【前編】でメインキャラクターの設定を作りました。

 続きまして、物語のプロットを作ってみましょう。

 この実践編で作ったプロットは自由に使っていただいて大丈夫です。

 使っていただいた場合はパクリ疑惑防止のために、私(永久保)から借りた旨とこの創作論のリンクなど貼っていただくとわかりやすいかと。


 さて、プロットというのは物語の設計図であり、骨となる部分です。

「物語という家を建てるのにプロットという設計図無しでいきなり作るのは無謀」とよく例えられます。

 でも、プロットってどう作ればいいんでしょう?


 まず、プロットを作る前に、書きたい物語の中に入れるエピソードを洗い出して整理する必要がありそうです。

 あなたは、前回の実践編【前編】で読んだキャラ設定を見て、なにか思いつきましたか?


 たとえば、黄泉子ちゃんはわらべちゃんとお友達だけど、好きになった漫画が打ち切りになる黄泉子ちゃんと比べて、わらべちゃんの推し漫画は大人気になったりします。

 黄泉子ちゃんはそんなわらべちゃんが羨ましくて、内心嫉妬している、とか。

 しかも、わらべちゃんはそんな漫画に飽きて読むのをやめると漫画が打ち切りになってしまう。

 黄泉子ちゃんにとっては複雑な気持ちを抱えそうですよね。

 そんな対照的な二人の衝突を描くのもエピソードのひとつになりそうです。


 たとえば、黄泉子ちゃんは料理上手で、お弁当も毎朝自分で作っています。

 わらべちゃんはそんな黄泉子ちゃんにおねだりしてお弁当を交換してもらってる、みたいな日常を描くのもありですね。


 たとえば、ある日、黄泉子ちゃんが突然隣のクラスのイケメンに校舎裏に呼び出されて告白されちゃいます。

 でも、黄泉子ちゃんはイケメン君とそんなに接点がないし、イケメン君にはなにか裏がありそう……。

 黄泉子ちゃんに相談を受けたわらべちゃんはどんなアドバイスをするか考えるのも面白そうです。

 この場合、イケメン君がメインキャラクターになりそうなら、彼もキャラ設定をしておきましょう。

 キャラが多いほど人間関係も複雑になり、より奥の深い物語になりますが、初心者は増やしすぎるとコントロールが効かなくなるので注意。群像劇は少しハードルが高いです。


 ……といったように、エピソードを思いつく限りネタ出ししておきましょう。

 長編になればなるほど、エピソードは多いほうがいいです。


 さて、プロットを書く前にやることがまだあります。

 あらかじめ、物語のスタートとゴールを決めておきましょう。

 スタート地点とゴール地点が決まっていれば、あとはゴールに向かって物語を進めていくだけ。

 ただ、直線距離で行ってしまうと、当然話はすぐ終わってしまいます。

 曲がりくねった道や遠回りせざるを得ない道、または越えられない壁を設置したり、流れが急で通れない川を通したり。これは物語の途中にある関門の話です。キャラクターはこれらの道を通って、あるいは壁を何とか乗り越えたり壁をぶち壊したり、川を渡る橋を作るなどの解決法を考えて関門を突破するわけです。これらの関門をエピソードで表現するわけですね。

 黄泉子ちゃんとわらべちゃんのお話は日常系なのでゴールが見えづらいですが……そうですね、スタート地点を「黄泉子ちゃんとわらべちゃんは友達だけど、黄泉子ちゃんはわらべちゃんに対して密かに嫉妬を抱いている状態」として、ゴールは「二人が色んな経験をして本当の親友になる」とかにしておきましょうか。このゴールに至るまでの間に、いろんなエピソードを挟んでおくわけです。


 プロットには「全体プロット」と「1話ごとのプロット」があります。

 プロットの種類は起承転結や3幕構成など色々ありますが、私は少し特殊なプロット構成を作っています。

 参考リンクはこちらです↓

https://froggy.smbcnikko.co.jp/series-name/3minutes-story/


 私が参考にしている構成は盛り上がり方が緩やかなN字になっています。

 内容を見てみましょう。


①CQ(セントラルクエスチョン):期待の約束(例「果たして二人は結ばれるのか?」)

②プチハッピー:うっかり成功しそうになる

③ボトム:もっともどん底

④再起:復活する

⑤上昇:気持ちよく上昇する

⑥クライマックス:成し遂げる

⑦プラスα:おまけorひっぱり


 ①の時点ではスタート地点はフラットな状態です。

 ②でちょっといいことがあって、感情がプラスになります。

 しかし③で悪いことが起こってどん底に突き落とされます。

 このままだとどうなっちゃうんだろう……と思ったところで、キャラが解決法を考えて④で復活します。

 そして⑤でどんどん気持ちよく上昇していき、⑥で①の「期待の約束」を成し遂げます。

 ⑦はおまけですね。次の話に続くならひっぱり(引き)になるでしょう。


 参考リンクでのストーリーの考え方によれば、


・まず「①CQ」と「⑥クライマックス」をセットで考える

・出来るだけ「③ボトム」で落として高低差を作る

→①③⑥で「V」を作る

・共感を呼ぶ「④再起」を作る

・見続けたくなる「②プチハッピー」と「⑤上昇」を作る

・読後感の良い「⑦プラスα」を作る


 が基本になります。①がスタート地点、⑥がゴール地点です。

 これを全体プロットで考えます。


 それでは、いよいよプロットを考えていきましょう。

 まずは全体の流れを整えます。


 ①期待の約束:果たして黄泉子ちゃんとわらべちゃんは本当の親友になれるのか?

 ②プチハッピー:黄泉子ちゃんとわらべちゃんがクラス分けで隣同士の席になって仲良くなる

 ③ボトム:黄泉子ちゃんとわらべちゃんが衝突し、二人の仲が険悪になる

 ④再起:わらべちゃんが黄泉子ちゃんのピンチを助ける

 ⑤上昇:二人は協力して、ピンチを乗り切る

 ⑥クライマックス:黄泉子ちゃんとわらべちゃんは仲直りして、本当の親友になる

 ⑦プラスα:二人は親友の証として、お揃いのアイテムをお互い交換して身につける


 全体はこんな感じかな……?

 この全体の流れを意識して、それぞれのパートにネタ出ししたエピソードを入れていくわけです。

 たとえば、②には黄泉子ちゃんのお弁当をおねだりするわらべちゃんのエピソードとか入れられそうですね。

 1話ごとのプロットは起承転結で考えることが多いです。

 この起承転結で、ある程度文字数の配分を考えます。

 実は起承転結は4つのパートを4等分……ではないのです。

 起承転結は起:10%、承:40%、転:40%、結:10%くらいの配分で考えています。

 1話2000文字書くと決めたら、起:200文字、承:800文字、転:800文字、結:200文字ですね。おおまかでいいです。

 WEB小説で読みやすい文字数は1話2000~3000文字くらいと言われているので、だいたい2000文字をちょっと超えるかもくらいの意識でいいでしょう。


 起:ツカミの部分、印象的なセリフやシーンから始まる。

 承:物語の始まり。起に至った理由をここで説明。事件発生など。

 転:事件を解決する。

 結:転で事件を解決した結果。


 よく「起承転結の承って何なの?」と思われがちですが、私はこういう理解をしています。

 起は10%しかないので手早く台詞などで物語を立ち上げなくてはいけません。スピード勝負です。

 そのあと、承で起に至った理由や経緯などを説明するという感じ。


 例として、黄泉子ちゃんのお弁当をおねだりするわらべちゃんのエピソードを書いてみましょうか。


起(200文字)

・わらべ「黄泉子ちゃん、お弁当交換しよ~」

・黄泉子(またか……)

・ここ最近、二人はこんな会話を繰り返している

承(800文字)

・黄泉子とわらべがクラス分けで隣同士の席になり、友だちになる

・昼食の時間には一緒に机をくっつけてお弁当を食べている

・わらべが「黄泉子ちゃんのお弁当、いつも美味しそうだよねぇ」と話しかける

・黄泉子が毎朝自分でお弁当を作っていると話すと、わらべは「すごい! 一口食べさせて」と頼んでくる

転(800文字)

・わらべにおねだりされると、何故か断れない不思議な雰囲気がある

・それから、黄泉子はいつも通り毎日お弁当を作っては、わらべとお弁当を交換して食べあっている

・わらべはいつもコンビニ弁当を持参しているので、黄泉子は思い切ってわらべの分のお弁当を作って学校に持っていく

結(200文字)

・黄泉子のお弁当を見たわらべは大喜び。「お弁当箱を洗って返す」と申し出るが、黄泉子は「わらべちゃんが持って帰ったら、明日のお弁当作れないでしょ?」と笑う。

・わらべに喜んでもらえてよかったと嬉しく思う黄泉子であった。


 みたいな感じかな……。あまり細かく決めすぎてもプロットに沿いすぎると文字数が稼ぎづらいので、もっと漠然としててもいいかも。


 で、全体プロットを見ながら1話ごとのプロットを組み立てて、スタートからゴールまで全体を統一していけば長めの小説の完成です。私の経験則として、最初にプロットを曖昧なまま書き始めると打ち切りエンドみたいな終わり方になるのでプロット、超大事です。


 あとはプロットに沿って本文を書いていくだけ。

 長編になればなるほど書く時間や気力が大変ですが、書き終わったときの達成感はなかなかのものです。

 長編を書き慣れていない方は、全体プロットを1話として短編を書く練習をしても良いでしょう。

 全体プロットのN字はキャラクターの感情を表しているそうです(感情曲線と呼んでいます)。

 この感情曲線を上手く操って、読者の感情も揺さぶれるように研鑽を重ねましょう。

 それでは、実践編を終わります。楽しく書き書きしましょうね。

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