第8回 「……」と「――」の使い分けについて考える回。
突然の自分語りになりますが、私は小説内で「……」とか「――」を多用する癖があります。
大学時代、創作サークルの部誌に投稿する小説のタイトルがどうしても思いつかず、学友に原稿を読んでもらってタイトルの候補をいくつか出してもらおうと思ったのですが、「セッちゃんの小説、『もし小説内で一番多く使ってる単語をタイトルにする』としたら『……』とか『――』になるよね」と冗談交じりで言われたことがありました。
そのときは「は?」と思ったのですが、あとで読み返してみたら本当に「……」とか「――」をやたらと使っていたのです。
ちなみにその癖は未だに直っていません。沈黙の余韻が好きなのかもしれない。
さて、皆さんは「……」と「――」ってどう使い分けしてますか?
「どっちも同じ沈黙だし、使い分けも何もないじゃないか」と思う方も多いでしょう。
たしかにどちらも言葉を発していないときに使う言葉(言葉?)です。ならば「……」だけで事足りるし、「――」は何のためにあるんだ?
大昔に読んだ本なのでタイトルも内容もほとんど覚えていないのですが、「――」は「何か言葉を発しそうな沈黙」と書かれていた記憶があります。何かを言いかけて結局言葉にならない、みたいな。
「――……そうか」みたいに、「――」と「……」を同時に使う場合もありますね。本当はもっと喋りたいのをためらうような余韻を感じます(個人の感想です)。
あとは、下の例文のような補足的な使い方も結構小説で見かけます。
【例文】
ボブは早起きしたので朝食と一緒に昼のお弁当も作っておくことにした。
朝食のメニューはカリカリに焼いたベーコンの上に半熟の目玉焼き――ボブは塩と胡椒で食べるのが好きだ――と、ほうれん草のバター炒め。お弁当箱には作りすぎて余ったそれらと、ついでに冷凍食品の小さなグラタンも入れておいた。(以下略)
この場合の「――」を「……」で書いている例は私が読んでいる限りではあまり見かけませんが、あるにはあります。
あとは、地の文でセリフをつける場合なんかも「――」を使いますよね。
【例文】
周りは僕を慰めてくれたが、僕にとっては怒りを増幅させるだけだった。
――お前たちは、誰も僕を助けてくれなかったじゃないか。(以下略)
こういった言葉の使い方や技術を修得するためにも、本は読んでおいたほうがいいとみんな言うわけですね。
ただ、小説をひたすら読んでいれば小説家になれるかと言ったら必ずしもそういうわけでもないので、インプットしたらアウトプット(実際に書く)が必要になると思います。
小説家によっては「……」や「――」をまったく使わない場合ももちろんあります。そういった言葉の取捨選択も小説の持ち味になるのではないかと思う今日この頃です。
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