第19話「ゼス一行、近衛隊長と一緒に門番ンタン改め悪魔アイバキップと戦うのこと。(後)」
「さっきはよくもやってくれたな!今度こそ貴様を血祭りにあげてはらわたを食らってやる!」
「けっ、てめえこそさっさと魔界にでも還るんだな!」
さすがに二度目の奇策は通じないと判断したのか、悪魔アイバキップ相手にステゴロで戦うロベンテ。どこで剣を失ったのかは定かではないが、一流の剣士とはたとえ素手だとしても戦えるものなのだ。そして今度は彼だけではない、
「隊長を死なすなーっ!」
どこから湧いて出てくるのか500どころでは利かない数の近衛兵。さしもの悪魔アイバキップもあきれ果てたのか、
「おいこら、それでもお前はン・キリの雷光か!もうちょっと英雄らしい戦い方をしたらどうだ!というか、そのこのガキ!まだ呼びに行く気か!」
と、湧いて出る近衛兵と切った貼ったをして蹴散らしながらロベンテにつかみかかるも、
「知るか!俺は今まで師匠に教わった兵法はこういう戦い方なんだよ!」
「くっそぉ!こんな人間ごときにぃっ……!
かくなる上は……」
と、アイバキップも切り札を隠し持っていたのか、どんどんとアイバキップの魔力が高まっていく!
「!」
「まさか人間相手にこの魔法を使うことになるとはな……」
危険なレベルにまで高まるアイバキップの魔力。それは詠唱なしの無属性魔法だとしても極めて危険な威力をまき散らすレベルにまで到達しつつあった。
「いかん、離れろ!」
さすがに、尋常な術ではないことはわかっているのか、皆を逃がそうとするロベンテ。
「ありがとよ、秘奥義、"それではさらばだ"!」
だが、その魔法は脱出用の切り札であった!!
「なっ……!!」
思わず絶句するロベンテ。まさか悪魔も同じ考えを持っているとは思わなかったのだ。
「くくく、残念だが、ここまでだ。楽しかったぞ、矮小な短命種どもよ」
「ちぃっ、捕まえろ!」
「無駄だ、この術が発動した以上、物理的な方法では解呪できんぞ!」
しかし、その直後である。
「エフツー・ゴイトイラ・ガン・ガンマ・ティラ、我望む敵の呪法を覆し暴け、リバース・ウィンク!」
「!」
「!!」
なんと、ルーチェがアイバキップの術を封じた!
「させませんっ!!悪魔なんかに皆様をやらせはしませんっ!」
「ルーチェ!」
「「ルーチェちゃんっ!!」」
アイバキップはもちろん、ロベンテも、そしてクヴィェチナやゼスも考えてないことがあった。なんと、宿を抜け出したルーチェは自力でここまで移動し、大博奕を承知で悪魔アイバキップの脱出魔法を封じ込めたのだった!
さすがに即席の解呪であり、荒っぽい術式であることからせっかく回復しつつあった魔力がまた枯渇しつつあったが、その効果は確かに存在した。そう、回復魔法と違い解呪とは補助魔法の一種であるため彼女ほどの回復魔法の使い手ならば荒っぽい即席術式でも発動自体は可能だったのだ。
「ちぃっ!新手がいたのか!」
もがくアイバキップ。とはいえ、完全にからめとられており、術を行使するのは困難であった。
「今です、皆さん!」
『応ッッ!!』
一斉にアイバキップに襲い掛かる近衛兵達!そして……。
「ちっ、こんな人間如きに捕らえられるとはな……」
なんと、アイバキップを捕らえることに成功した!
明朝、ン・キリ王国謁見の間にて。
「よくやった、そなた達のおかげでこの王国に潜んだ悪魔共を一網打尽にできたぞ!」
ン・キリ王国国王、ン・ヅニ・クイ。悪魔アイバキップが行っていた王国への集団偵察行為を近衛隊長ロベンテ・トゥオーノが防衛したとあって、その機嫌はかなり良いと言えた。
「ところでトゥオーノ、その者たちは何者じゃ?」
「ははっ、これなるはゼス、クヴィェチナ、ルーチェと申すもので、この度の悪魔撃退に一役買った、村の子供たちでございます」
「ほほう、子供が活躍したとな。将来有望じゃのう!
……さて、トゥオーノと将来有望な子供たちよ、この度は見事であった。まさかこのン・キリ王国にまで魔物の類が、しかもスパイとして潜んでいたとは思わなかった。そしてそれを撃退した手腕、トゥオーノより聞き及んでおる。褒賞を取らす、何が良い」
と、その発言を聞くやルーチェが第一声を上げた。
「あ、あのっ!」
「ん?どうした?」
「ここで、ここで働かせてもらえませんか!?」
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