第27話


火曜日は、揚げ物――フライヤーや、丼、弁当の作り方を教えて貰った。


丼や弁当は簡単だったけれど、揚げ物は注意力がいる。跳ねるからだ。トンカツやハムカツにパン粉をつけて結構な量を油で揚げる。


それを揚げ物コーナーのショーケースに並べ、丼と弁当は店の中央付近にある置き場に並べる。午後七時前には、売れ残った揚げ物をパックに詰めて中央のくぼんだショーケースに並べるらしい。


揚げ物を扱う場所に立ち、お客さんの相手をする。


トンカツを言われた分だけフードパックに入れてシールを出す。レジとはまた異なる接客が求められた。ここでもミスはあり、お客様に一気に商品名を言われてもなかなか覚えきれない。


シールの出し方も間違える。そんなときは吉村さんがフォローしてくれた。


レジには新しく人が入ったのか、知らない顔の男性が立っていた。彼も大学生に見えるがどうだろうか。あとで話しかけてみよう。少し人が入れば、午前八時から午後九時まで残業なんていうことも減るかもしれない。


ゴールデンウィークに入れないかと店長に言われたので、二十九日と、五月は従来の曜日にくわえて一日だけ多く働くことにした。廃棄品を貰いたいため、午後一時から九時までにして貰う。給料のシメは末日の十五日支払いだという。もう少し我慢。


廃棄品を貰って帰れる日は、朝の料理も楽だ。


若干苦手意識のある揚げ物売り場の仕事を終えると、俺はレジに立っていた男性に声をかけてみた。


「お疲れ様です」

「お疲れ様でございます」


男性は低い声でお辞儀をする。


「バイト、入ったばかりですか」

「ええ。今日から」


お互い自己紹介をする。男性は佐々木と名乗った。


「佐々木さんは大学生ですか」

「いやいや、大学卒業したけどどこも就職できなかったフリーターです」


申し訳なさそうに背中を丸くする。二十三歳くらいか。もっと若く見える。


「今就職も厳しいんですね」

「もうなんか全然決まらなくて。今はフリーターだけど時間はあっても精神的余裕が全然ないです。就職先が決まるまでここで働かせて貰う予定です」



そう言って笑う佐々木さんの顔には、焦りが若干見えた。


「いいところ、決まるといいですね」

「ほんとうに」 


挨拶をして家に帰る。


母さんは、今日も遅い。

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