第5話 BAD END
「今なんと?」
ベレトの
「ベレトをリーリエ王女陛下の伴侶にするという話ですが。お断りさせていただきたい」
ただでさえ
「それはどうしてでしょうか?」
喜怒哀楽のどの感情でもない。台本に書かれた台詞を
「ベレトは王になる
「身分など真実の愛の前では
「アン・ドロテア。貴方が
母として我が子の将来を明るいものにさせたいのは当然のことだ。だがアンの心中にあった本当の
「最後に一つだけお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「どうぞ。アン・ドロテア」
「何故王女陛下はわざわざこの村に足をお運びになったのでしょうか?」
「と、言うと?」
リーリエは木製のテーブルに置かれたティーカップを手に取ると黄金色の紅茶を口に注いだ。それは至って冷静で、動揺もなく一国の王族の風格を
「ここリトラ村は帝国の領地。ならば召集令なり文書を送ってくださればよかったのではないでしょうか?王女陛下の命ならば我々はこうした問答の場もなくベレトを帝国に送ったでしょう」
国からの召集令は大きく2つに分かれる。1つは急な大戦勃発による18歳以上の国民を出動させる徴兵令。もう1つは国への文化的功績や
「確かにその手もありますね。ですが別に私はベレト様を拘束し、連行と題して彼を帝国に連れて行くつもりはありません。あくまで彼の同意がない限りは私としても強制はしません」
ティーカップの中身を飲み干したリーリエは椅子からスッと立ち上がり、アンの横を素通りしてベレトの正面に立った。
「どうかな?ウチに来ない?」
そんな今日ウチでゲームしない?みたいなノリで言われても‥‥
帝国か‥‥多分このままこの王女様に着いていけば俺の人生は勝ち組確定。金も、娯楽も、女も思いのままなのだろう。
だがそれは本当に俺がしたいことなのだろうか?この村を1人で守る一騎当千の兵士。あの日ハルカと誓い合った俺の夢だ。
そうだ。別に俺は富豪になりたいわけでも、ハーレムを築き上げたいわけじゃない。好きな村、好きな女を守って自分の夢叶えられればそれでいいんだ。それに両親2人を放って自分だけ幸せになろうとするなんざどんな親不孝もんだよ。
「さっきも言ったけどアンタのことは知らないし。前世とやらもよく分からんし興味もない。だから」
もし人生にセーブポイントがあるとしたらここだろう。”行く”か”行かない”の選択肢が現れて、間違えて選んだら即バットエンド行きの理不尽極まりない選択。
俺はこの日のことをいつも考える。この2択以外にも選択肢があったんじゃないかって。
「悪い。行かねぇわ」
今はただ。無惨に、残酷に、俺の運命は確定した。
BAD ENDに。
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