第22話
「今日は俺が勝つよ、フィリル」
「いーえ、今日も私の勝ちですよ。最近あなたの方が勝率がいいですからね。いい加減ここらで連勝して師匠としての威厳を保たさせてもらいます」
俺の宣言に対してそう返すフィリル。
「アルカー!頑張ってー!」
そしてなぜかこの場にいて俺を応援しているリルカ。いやまあ今となっては全然なぜかじゃないんだけどね。まさかフィリルから芋づる式にバレるとは思ってなかったなあ・・・。最初彼女がこの領地に訪れると聞いたときは滅茶苦茶焦ったしバレないように変装もしてたんだけど向こうは確信してたみたいで全く通じずに一発でバレたよ・・・。まあこれの詳しい話はまた今度かな。
にしても彼女を見ると色々あったなと思い返す。まあその中で最近の出来事と言えば・・・俺アルカ・バーナードは8歳になった。
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「ぜー・・・ぜー・・・、どうですか。これが師匠の意地ですよ、ごほっ・・・」
隠蔽に複数属性の同時大量起動、更には最近ようやくものにしてきた制御権の奪取。俺も持てる全力で挑んだが今日のフィリルの気迫は凄まじく紙一重で負けてしまった。
「はあ・・・アイシクルランスを防いだときは勝ったと思ったんだけどな。まさか
「さすがに私も弟子に負けるのは悔しいですからね。いい加減必死に鍛えなおしてるんですよ。それにあなたとの毎日の手合わせもいい経験になりますし」
そうやって今日の試合の感想を話し合っているとリルカがこちらに向かって来る。
「今日もお疲れ様。惜しかったわね、まあ私には凄すぎて何がなんだか分からなかったけれど。はいこれタオルと水。先生もどうぞ」
「ありがとう」
「どうも・・・しかし先生呼びはなんとかなりませんかね。こちらに来たときにたまに教えるぐらいしかしていないのに・・・」
「何言ってるんですか。あなたはあの『大侵攻の英雄』ですよ。むしろこちらとしては何もお返しができないのが心苦しいぐらいなのですが」
そう、リルカはたまにだがフィリルに魔法を指南してもらっている。最初はいつも通り断ろうとしていたフィリルだったが向こうがその気になれば自分を面倒なことをさせることができる立場だと思い出してすぐにその話を受けていた。
それでも初めはいやいややっていたのだが続けていくうちに何か心境の変化があったようで今では教える側も教わる側どちらも楽しそうにしている。
その様子を見た時に不思議に思って理由を聞いてみたら曰く、『実力は普通ですけど真面目なのでかなり教えがいがあるんです。なにせあなたは一を教え得たら十一を勝手に身に着けてくるような人ですから対等なパートナーとして見るときはともかく生徒として見ると教えがいがなくてつまらないので』
この返答を聞いて俺は両方に失礼じゃないかと思った。前者は才能が無いように聞こえる__まあ主人公パーティの一員なだけあって才能はピカイチのはずなのだが__し後者は面と面を向かってつまらないとか言うなんて酷過ぎる。
「まあそれでもいいなら今日もご指導いただけますか?」
「・・・まあ今はとっても機嫌がいいので」
「弟子をボコボコにしたから?」
「いやボコボコにはできてませんから。したかったですけど」
「いや酷いな!」
「あなたが振ったんじゃないですか・・・。まあとにかく休憩も取れたのでやりますよリルカ。アルカは今日もこれで自由です。まあといっても今度は剣術の練習があるんでしょうけど」
「その通り。じゃ、行ってくる。リルカ、今日も頑張ってね」
「ええ、アルカこそ頑張ってください」
そう言って俺は今日も家の騎士に剣の教えを乞いに行った。
「お、来ましたねアルカ様。それじゃ早速始めますか」
俺の姿を見て剣を取って立ち上がり構えてくる青年。
「うん、今日もよろしく。サイト」
そういって俺も青年__サイト__へ剣を向ける。
「じゃ、いつでもどうぞ」
「それならありがたく!」
その言葉に甘えてこちらから斬りかかる。ちなみに身体強化はあくまで体格差を埋めるためにしか使っていない。なぜならこれは俺の近接戦闘の技術を鍛えるのが目的だからだ。
「おっと・・・やっぱり大分上達してきました、ねっ!」
こちらの攻撃を軽々と避けて反撃を仕掛けてくる。すぐに剣を戻して上段からの振り下ろしを防ぐ。
「それは、どうもっ!」
だが今の強化だと防ぎきれないので剣を滑らせるようにして受け流す。
「なっ!」
急に対象がすり抜けたせいで思いっきり空ぶって無防備な姿を晒しているところに仕掛ける。
「死に晒せやーっ!」
もちろん模擬戦用の剣なのでよほど当たり所が悪くない限り死ぬことはまずない。ずっと負け続きだっとのがようやく勝てそうなのでつい気持ちがあふれちゃっただけである。
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「・・・いや聞いてます?だからほんとに死に晒せとかやめてくださいって。心臓に悪いんですよ。アルカ様は上司なので」
「いやごめんって。今日こそはようやくって思ったらいままでの悔しさがぽろっと漏れただけだから」
「いや負けず嫌いなのはいいんですけど立場を考えてくださいって・・・。こちとら場合によっちゃ死ねって言われたら死ななきゃいけない職業なんですから」
「いやほんとにごめんって。悪気はないんだよ。ほらあるじゃん。戦ってる間は口が悪くなるの」
ああ、結果?あの後普通に防がれて数手打ち合った後に負けたよ。今日こそは勝てると思ったんだけどなー。一応サイトは技術だけでも見習いは軽く超えてるって言ってくれたけどさ・・・。
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