第17話

「はあ、家に帰ってみんなと話してたらもう眠いや」


「珍しいな。いつもなら後2、3時間は起きてるのに」


「うーん、多分疲れたからだと思う」


「疲れたって・・・普段の討伐の方がよっぽど疲れると思うんだけど」


「何言ってるのさ!堅苦しいマナーを気にしながら大勢挨拶して回って挙句の果てにはトラブルの対処のために頭をひねって、更に終わった後も色々と話しかけられて大変だったんだよ!あんなのと比べたらオーガキングが率いてた上位個体しかいない集落の討滅の方が何倍も楽だよ!」


「少しトラブルがあっただけの社交界と本来なら王都から騎士団の派遣を要請するレベルの事態を比べないでちょうだい・・・。大体あなた話しかけられても全部軽くあしらって料理を食べ続けてたでしょ」


「むぅ・・・。というかその比較で今日の出来事の方が大変だったのか」


「あのときも中々大変でしたけどね。アルカが最後の追い込みに失敗して逆に包囲された時なんて少し焦りましたよ」


「え?フィリル、私そんな話聞いてないんだけど・・・?」


「え?私はてっきりアルカが自分で一部始終を説明するって言っていたからもう知っているのだと・・・」


「いや、あの討滅に関しては何の問題も無かったとしか言わなかったわよ。・・・アルカ?」


・・・やべ。


「あー、眠い。すごく眠い。眠いからもう寝るね!あ、あと明日は王都を散策するからフィリルもちゃんと起きてよ!じゃ、おやすみっ!」


「待ちなさい」


はっ、待てと言われて待つバカがどこにいると。さっさと部屋に入ってドアと窓をガチガチに補強して寝るぞ。


身体強化を使い最初からトップスピードで自室に向かう。


「あら?逃げられるとでも思ったのかしら」


そう言いながら母さんが氷の鎖をこちらに伸ばしてくる。


「そんな見え見えのものにっ!」


屋敷を荒らさないのは・・・闇だな。


対騎士にも使った闇の茨で鎖を防ぎ俺を守るように周囲に生み出す。


「ちっ、我が子ながら魔法が上手すぎて腹が立つわね。でもこれなら、シェリフ!」


「ああ、任せろ。話を聞きたいのは俺もだ」


あ?父さんが手伝ったって今更遅い。


「じゃ、おやすみー!」


すでにこの手はドアに・・・触れない。なんだ?この引っ張られるような感覚は?・・・まさか。


「制御権の奪取?」


俺が生み出したはずの茨が何故か俺を引き留めていた。慌てて直接制御しようとしたがまるで他人の魔法のように一切操れる気がしない。


「その通りだ。まだお前には教えていなかったがな。はあ、にしても本当に上達したな。闇属性なのに俺が制御を奪うまでここまで時間を食うと思わなかった。おかげで逃げ切られるところだった」


「なに、もう勝ったつもり?別にこの程度すぐに解いて・・・冷たっ!」


闇には光ということで絡みつく茨に光属性の魔力を流して崩壊させる。これで自由になったと思い油断した隙にもの凄い勢いで何かが俺に巻き付いてくる。


「解けないでしょう?私の”鎖”はあんなのと違って脆くはないわよ」


「いやあの茨だって全然脆くはないんだけど・・・」


自らの魔法をあんなの呼ばわりされて少しへこむシェリフ。


「この・・・!」


俺の体に密着しているし、なによりここは屋敷の中。火魔法で溶かすわけにはいかない。ならばと闇の浸食を試みるがほとんど歯が立たない。くそっ!少しでも綻びができれば無理やり力で解けるのに!


そんな四苦八苦してる俺に悠々と近づき両脇をがっしりと固める両親。


「さ、寝るにはまだまだ早い時間よ」


「じっくり聞かせてもらおうか」


くそっ!くそっ!!なにか・・・どうにかしてこの場を切り抜けなければ・・・!最悪遠征の約束どころか今までの討伐すら禁止にされるかもしれない。それだけは絶対避けなくては!


「ふぃ、フィリル。助け・・・」


「自業自得です。なにより私を騙していたんですね」


「いや、そもそも別に俺が説明するとしか言ってないし。結果だけ見れば何も無かったのも事実だし」


「問答無用!そんな屁理屈が通じると思わないことです」


「さあ、お話しようか」





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「はあ・・・昨日は酷い目にあった」


あの後俺は三人からこってり絞られていた。その中で討伐の禁止なども出たのだが今回のトラブルで近衛騎士を退けることが出来たのは討伐での経験が生きたということと、フィリルの『どうせ禁止したってこっそり出ていくだけですよ。それなら今まで通り監視付きの方が安全です』という言葉のおかげで事なきを得た。


しかしお咎めなしとはいかないだろうということで今後は逐一フィリルと共に報告書を作成することと遠征は週に一度までという制限を付けられてしまった。


報告書は面倒だが週一という制限はまあいいだろう。魔法の隠蔽もそうだがこの世界にはゲームのときには無かった技術が数多く存在する。


昨日シェリフが見せた制御権の奪取もそれに当たる。やはり俺自身を強くするのもいいがこういった技術の習得もやらなければ俺の目指すところには届かないだろう。


そういう意味では丁度よかったとも言える。それに近衛との決闘でも近接戦の弱さが気になった。もし俺がもっと近接戦に長けていればあんな下手な芝居をしてでも油断を誘う必要も無かった。


まだまだ強くなるためにできることは山ほどある。


だがまあ、さしあたっては・・・


「さ、アルカ。行きますよ、王都観光!」


ゲームでしか見れなかったこの王都を見ることが先かな。





_____________________________________




応援やフォロー嬉しいです!ありがとうございます!


★をつけてくださるともっと嬉しいです…!一つでも良いのでm(_ _)m(懇願)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る