第15話

『しょ、勝者!アルカ・バーナード!』


審判が勝敗を判定してこの決闘は幕を閉じた。


わずか五歳の幼子が近衛騎士を下したという事実を残して・・・。




「・・・・・・。バーナード伯爵。ひとつ聞いてもいいかしら」


「ええ、なんなりと。レヴィア様」


「彼・・・アルカといったわね。あの子は一体何者なのかしら・・・?」


自国の騎士が子供に成すすべもなく敗北したというショッキングな事実を受け王妃は動揺を隠せずに聞いた。


「アルカが何者か、ですか・・・」


先ほどの決闘を見て王妃の質問に対し同じような感想を持った者たちがそれとなく聞き耳を立て、バーナード伯爵の答えに集中する。


「あいつは・・・私たちの自慢の息子ですよ」


そう笑顔で言い切る伯爵。


その答えには周囲はもちろん王妃も苦い顔をしていて”そういうことが聞きたかったんじゃないんだよ!”という叫びが聞こえてきそうだ。


この答えには彼の妻であるアメリ夫人も苦笑いだ。なにせ彼をよく知る彼女からしたらこの答えはあえてぼかしたのではなく素で言っていると分かってしまったからである。


こうなっては本人に直接聞くしかないと自らの子息を呼びつけてあの異常すぎる子供の情報収集を命じる貴族たちであった。




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はー、疲れた。騎士も負かしたしさすがにもう王子も反論できないだろ。


「王子、これでもう文句はないですか?・・・それともまだ反論がお有りで?」


ザイードや護衛の騎士に目線を向けた後に次はお前の番だという意味も込めて王子を見る。


「な・・・ない!ない!認める、俺はお前を認めようアルカ・・・」


そうか。もう悪あがきはなしと。でもそれだけじゃ足らないよなあ?



「ちなみに私を謝罪させるーとか土下座しろなんて息巻いていたのってどこの誰ですかねー?今思い出しても全く納得できないので決闘でもしましょうかねー。2戦もすれば3戦目も大して変わらないでしょうし」


謝れ。周囲にこれ以上醜態晒したくなかったら謝れ。こんな面倒くさい事態引き起こしやがったことに謝れ。必要以上に目立って今とんでもなく居心地が悪いことに謝れ。あとついでに一生社交界に出なくてもいい権利くれ。いやなんならそれくれるんならさっきまでの言葉撤回してこっちが土下座してもいいよ。




圧をかけ続けていたら両親と王妃様がこっちに来てサルートーを許してやってほしいと言われてしまった・・・。


「さすがに公衆の面前で王族が謝罪をするわけにはいかないのです・・・」


俺は理不尽なことでさせられそうになってたけどね。


「そうですか。まあ別に謝罪はいいです。しなくても。ただ王子の行動は到底許せませんね」


「お願いします。そこをなんとか許してくれませんか?この子にはあなたのような人が必要なのです。ちゃんと言い聞かせて見せますのでどうにか・・・」


さすがにあれだけのことをしでかされてそれを受け入れるわけにはいかない。なにせあいつのせいで俺は一生周囲から舐め続けられてバーナード家が衰退する原因になるかもしれなかった。


なにより一切常識を教えてもらっていなかったのかと思うほどの王子の傍若無人っぷりは絶対に矯正させるべきものだ。


「いえ、あんなのに権力があるとか災害でしかありません。それなのに対外的にはお咎めなしなんてそれを助長する要因にしかならないと分かりませんか?言い聞かせると言ったって五歳になる今日までに教育できていなかったのにそんなことを言われたってはっきり言って全く信用できません。そもそも王族がこの体たらくだとしたら国自体が信用できないです」


と、ここまでノンストップせ言ってやった。


なんならまだまだ言うつもりだったのだがそれ以上は両親に止められてしまった。


「ふごむご・・・っぷは。なにするのさ!まだ話のとちゅ」


「この話を受ければ学園卒業まではこのような場にでなくてもいいぞ。もちろんこれは前の約束と違って絶対に覆さない」


「申し訳ありません王妃様。全て許しますし処遇も全てあなたにお任せします」


「え、ええ?よろしいのですか・・・?」


「はい、二言はありません」


王子?そんなやつよりも社交界に出なくてもいい方が大切だろ。しかも今度は絶対的な拒否権だ。やったぜ!これだけで今日ここに来たかいがあったな。なんなら今はその決め手になった王子に感謝してもいいほどだ。


「じゃ、戻って料理食べてくる」


それだけを伝えてスキップしそうなほど浮かれながら会場に戻った。


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「あ、行ってしまいました・・・。しかし提案した私が言うのもなんですが本当にこの案を呑んでよかったのですか?今回の件は王族や社交界デビューしたてであることを考慮してもいくつかの処分が必要なはずですが・・・」


「ええ、いいんですよ。レヴィア様には私たちの学生時代からお世話になっていますからね。」


「それに私がよく知るあなたなら信用できるからレヴィア」


「アメリ・・・」


「でも、次はないから。今回のこれもあなたが私の幼馴染で学生時代の恩人で王妃という立場があってぎりぎりってこと忘れないで」


「もちろん分かっています。本当に申し訳ありません・・・」


3人の会話は一段落し、話題は先ほど食事をしに退出した子供へと移る。


「それにしても本当にあんな言葉で受け入れるとは思いもしませんでした」


「まああの子はこういう柵の場は嫌いだからね」


「だとしてもあれだけ問題点を指摘していていることから無理だと思っていたのですがまさか即答とは」


「優先順位の優劣の差が激しい子なのよ。多分この場に出なくて済むっていったら土下座ぐらいするわよ」


「ああ、だろうな。間違いない」


「強さといい性格といい不思議な子ですね・・・」





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