第13話

あれーなんでー?なんで学園に入学すらしてないのに主人公に決闘を挑まれてるのー?やっぱBADEND回避とか無理だったのかなー・・・。



・・・いや、待て落ち着け。別に挑まれてるわけじゃなくてほのめかされてるだけだ。思いっきり武力を見せて脅しの手段として使われてるだけだから。


そもそもゲームの時とは状況が違い過ぎるだろう。周りを見渡してみれば一体なんの騒ぎなのかと子供も大人も関係なくこちらに注目している。その目はあくまでただの興味によるものであって決して軽蔑のものではない。


そして事情を知っている騎士なんかは真っ青な顔をしてこちらを見ている。


いやだから見てるだけじゃなくて行動してくれよ。


というかここまで周囲に注目されてるんじゃ別にいいだろうと思って両親に助けを求めるべく視線を向けたがサムズアップされたあとにすぐ目を逸らされた。


なに?なんなの?その立てた親指は一体全体なんの意図があったの?好きにやっていいってこと?


・・・ならいいや。別に違っても見捨てた責任として許してもらおう。


そもそもよく考えたらこの状況はかなり好都合だ。なにせ向こうから落としどころを作ってくれたのだから。


「おい、どうした。へんじくらいしろ。それともこわくて声もでないか!」


おっと、考え込み過ぎてたか。まあ方針も決まったことだしさっさと返答してやろう。というか王子うっさい。


「ああ、申し訳ありません。少々考え事をしていたもので。それで決闘でしたね」


「そうだ、どうするんだ?あやまるなら今の内だと思うけどな」


「いえ、受けますよ」


「そうかそうかおじけづいたか・・・は!受ける!?」


だからうるさっ。というか喋るのどっちかにしろよ。ちょくちょく挟まってくるな鬱陶しい。


「ええ、受けます。さっさと終わらせましょう。で、どこでやるんですか」


もう本当に面倒くさい。解決の目途が着いたからか急に気持ちが冷めてきた。あー、なんでこんなことになったかなー。


ただおいしいもん食ってめんどい挨拶こなしたらてきとーにその辺の子と雑談して終わらせるはずだったのに・・・。


俺の返答に面食らった様子の彼らだったがこちらが決闘を受けると分かったら表情が一変。またむかつく顔に元通りだ。


どうやらこのグループの子らはザイードが負けるなんて微塵も思っていないようだ。それだけに彼を負かしても納得してくれるのかどうか。


この年頃は事実よりも自分の主観を優先するからなあ・・・。


というか決闘するっていったけど本当にすぐできるとは思わなかったよ。こう、なんというかこの世界の文化はかなり好戦的な気がある。まあゲームがもとになっているからなんだろう。


「どうだ!ここがわが王家の誇る国一番の決闘場だ!」


でっか・・・。前世でいうと東京ドームぐらいはありそうだ。にしても会場から近すぎるだろ。移動時間1分もなかったぞ。よく使用されるからこその近さなのだろうか。


「で、ルールはどうするんですか。剣だけとか魔法だけとか」


ここを明確に決めないと色々言われそうだしな。少しでも相手に口実を与えないためにこういうところはしっかりしなければ。


「特に禁止しない。僕は剣も魔法も使うし君も使えるものなら魔法を使ったっていいさ」


こちらを馬鹿にしたように、というか実際馬鹿にしているのだろうといった返事を返してくる。


「そうですか、じゃあ始めましょう」


そこらへんに大量にある木剣の中から一つを雑に引き抜いて構える。


「む、ちょっと待て。まだ選んでる途中だ」


さっさとしてくれ・・・。量産品なんだからどれも変わらないよ。


結局五分ぐらい悩みに悩み抜いてからようやく選んでザイードも開始位置についた。


いや距離めっちゃ遠くない?端から端まであるんだけど。騎士の人が審判役として拡声魔法を使ってくれてるからいいがそうでもなかったら何も聞こえないぞ。


魔法を使うために少しでも距離を稼ごうって魂胆なんだろうけどあからさま過ぎる。少しでも自分有利で戦いたいって気持ちを一切隠さないのは逆に清々しい。まあ俺魔法の方がメインだからむしろこっちを有利にしてるんだけどな。


だがこの戦いで魔法を使う気はない。いや、正確に言うと魔法を使えるとバレるような戦い方をしない。


なにせこいつを倒して終わりとは到底思えない。


どうせ王子とかがごねまくって最悪護衛の騎士と戦わされる可能性だってあるのかもしれないのだ。さすがにそこまで非常識だとは思いたくないがそんな期待は捨てておいた方がいいだろう。


もし対騎士を考えるなら五歳にしてはいい動きをする程度と思わせていた方が都合がいい。最初から警戒心MAXで来られると条件次第だが勝つのはかなり厳しそうだからな。


こんなこと俺の考え過ぎだと思いたいのだがこういうのは最悪を想定するくらいがちょうどいい。普段の実力よりもかなり制限されるが・・・まあ問題なさそうだ。


『それでは今から決闘を開始する!・・・始め!』


開始の合図と同時にもうすっかり板についた隠蔽をしながら普段よりもかなり弱めの肉体強化をかけてザイードへと一気に迫る。


「・・・なっ!く、このっファイア!」


こちらの速さに驚いてか焦って魔法を放ってくる。あーあ、ただでさえ完成度が低いのに焦りのせいで余計に酷くなってるよ。飛んでくる火球は弱々しく風に吹かれただけで掻き消えてしまいそうだ。


そんなものでこちらが止まる訳もなくザイードに向かって走り続け、剣を振れば当たる距離まで近づいた。


「や、やめろおおっ!」


必死の形相で苦し紛れに剣を振るがその太刀筋はお粗末なものだ。きっと魔法ばかり練習して剣はほとんど習っていなかったのだろう。いや、それとも五歳ならこんなものなのか?


まあどちらにせよ対処が容易なことには違いない。


こちらに向かって振り下ろされた木剣を力任せに払って手放させる。


ザイードが落とした木剣を拾い、丸腰となった彼に切っ先を突き付ける。


「これで僕の勝ち、でいいですよね?」


「・・・・・・・・・ああ、俺の負けだ」


悔し気に顔を歪めているものの一応は負けを認めてくれた。


だがこれに納得がいかない者が一人。


「ふざけるな!それで勝ったと思うなよ。勝ちというならこいつを打ち負かしてからにしろ!」


そういって自らの護衛を示す王子。


指名された側は全てを諦めたような顔をしている。


どうせそうだろうと思ってたよ!ちくしょう!






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