第11話

「そろそろ私たちの番だ。行くぞ」


「そうね、アルカ。しゃきっとしなさい」


えー、まじで行くの。すげえ嫌なんだけど。絶対何か問題起こるって。俺の勘が滅茶苦茶警鐘鳴らしてるもん。


「わ、分かったよ」


しょうがない。せめて表面だけでも取り繕ってさっさと終わらせてしまおう。どうか何事もありませんように。



「サルートー王子。この度は誠におめでとうございます」


「ありがとう。バーナード伯爵。さあ、サルートー」


「えと、ありがとう。・・・バーナードはくしゃく。それとおま・・・なんだ。・・・そうか、分かった」


少々たどたどしいものの礼を言う王子。最後に何か言いかけていたがお付きの騎士に何かを言われてやめたようだ。


にしても何故だかその騎士たちから申し訳なさそうな視線を感じる。


さて、これであとはてきとーに喋って終わりか。王子のもとから立ち去りながらどこらへんに行こうか考える。


今はまだ王子への挨拶が終わったのが上位貴族しかいないからな。料理でも食べながらもう少し待つか。


「あ、すいませんジュースください」


ちょうどメイドさんが通りがかったので飲み物をもらっておく。


「あ、うま」


さすが王家だな。食のレベルが高い。果実の濃い甘さを引き出しながらも後味は爽やか。メインではないジュースですら前世ですら味わったことのない美味さだ。


この世界ゲームがもとになってるからか文明のレベルが結構ちぐはぐなんだよな。



そろそろ子爵家の挨拶が終わるか。にしても一人だけ妙に王子と仲良さそうな子がいたけどなんだったんだろう。挨拶が終わった後も迷わず高位貴族の子息たちが集まるとこに行って普通に受け入れられてるし。


それにその子王子と話してるとき思いっきりこっちのことを二人して指さしてたしな。


まじで関わり合いになりたくない。もう絶対重要キャラだろあんなに目立つ奴。


「じゃ、そろそろ友達作りに行ってくるよ」


「ようやくか・・・。正直食事だけ食べてあとはうやむやにして帰る気だと思ったぞ」


その気だったけど視線が痛いからしょうがなくだよ。


「そう、じゃあどこに行けば分からないだろうから私が連れて行ってあげるわ」


いや、それは困る。こちとら爵位の低い相手と気楽に喋ってたいだけなんだ。あんた絶対あの王子も合流してきた豪華すぎる集団に突っ込ませる気だろ。


「ううん、大丈夫。それに親同伴だと恥ずかしいしさ」


「なに、気にしないでいいのよ。皆最初はそうしてるんだから」


頼むからやめてくれ。なんなん、わざとなの?あ、目が笑ってない。これわざとだ。


「あなたのことだから、爵位の低い子たちと気楽に喋って終わらせよー、とかどうせ考えているんでしょう」


と耳元でささやかれた。バレてた。俺の目論見完全にバレてた。うちの保護者どもは俺の理解度が高すぎて困る。


「い、いやー。でもさ、それのなにが問題なのさ」


「問題あるに決まってるでしょう。爵位は線引きよ。別に仲良くするなとは言わないけど優先順位をつけなさいってことよ。第一向こうも急に自分よりも爵位が上の子が来たら委縮しちゃって可哀そうでしょ」


そーですかー。ちなみにあなたが連れて行こうとしてる集団は例外の子を除けば基本的に伯爵位より上の子が大多数なんですけど?正確には分からないけど多分一人か二人ぐらいしかいないよ?


「そんな知らない家の子のことを気遣う前に自分の家の子が委縮しないか気にかけてあげたら?」


「アルカのことだから面倒とかは思っても委縮はしないでしょ。それになんだかんだ能力主義だからこの国は。見なさい、あの子なんか子爵家の子なのにあのグループの中心にいるわよ」


いや、別にしないけどさあ。しなけどさあ・・・。もうちっと気遣ってくれよ。


「どうせ能力ならあの中でもあなたがダントツよ。胸張ってさっさと行ってきなさい」


いつもは優しいのにここぞというときは本当に容赦がないな母さんは。にしてもああいうことをさらっというなんてもしかして親バカなのか?


俺の中で母さん親バカ説が持ち上がったがすぐにかき消す。


なにせ子供たちが一斉にこちらを見てる。あ、一応王子の隣には騎士もいる。一人は王子に付いてもう一人は王妃に付いているようだ。


んと、観察してる場合じゃない。さっさとこいつらと会話をしなくては。できれば友好関係を築けるように・・・。


「初めまして、僕はアルカ・バーナード。アルカって呼んで」


まずは無難に自己紹介を・・・。と思ったのだが問題発生か?なんか皆にやにやしながらなにも言わない。


お、何だ?聞こえなかったか?もう一回言ってやろうか?あ?


にしてもなんだか見ててイラつくタイプの笑顔だな。こう、人を馬鹿にしたようなこちらを下に見ているような顔。ちらっと騎士の方を見てみるがこちらは対照的にただただ申し訳なさそうにこちらを見るだけだった。


さてどうしたものかと考えるが唐突に王子が話しかけてきた。


「ふん、言われなくてもお前のことは知っているぞアルカ」


あ、そうなんだ。こちらとしては一切認知されたくなかったよ。


「はくしゃく家のもんだいじめ!お前のようなやつがこの場にいるなど、なにより割って入ろうなど頭?が高いぞ!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうきたか。






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