第10話

まず、登場人物と確定しているのが今日のパーティーの主役。第三王子であるサルートー・ハイネだ。ゲームでの立ち位置は覚えていないが名前を聞いて思い出せた程度には重要なキャラだったのだろう。


更にはゲームの舞台は貴族たちが皆通う学園。今日のパーティーに出席している同年代はそのまま将来の同級生だ。


メインキャラがいるかどうかは分からないが可能性はかなり高いだろう。


俺はこのゲームキャラたちと極力関わりたくない。


理由はなんらかの形で彼ら不興を買ったときに原作と同じようなルートを辿ることが怖いからだ。


まあ、決闘という俺にとっての処刑イベントが来ても余裕で勝てそうだから最悪そのような形になっても大丈夫そうだが俺は周囲の人間に常に疎まれながら学校に通えるほど心が強くない。


それに決闘での敗北以外にも実際は落とし穴があるかもしれないからな。


だから臭い物に蓋をするじゃないができるだけ関わりあいになりたくないのだ。


その為になるべく関わらずに済むように努力してきたんだけどなー・・・。


しかし現実は無常である。両親は俺の気も知らずに笑顔で手を引いてくる。


その一歩が破滅につながる可能性があるとも知らずに。


だが親にそんなこと言っても意味不明だし、ぼかして伝えても考え過ぎだと笑われるか面倒くさいから行きたくないだけの言い訳ととられるだけだろう。


まあ、面倒くさいも三割くらいあるが。


そんな風に思考に浸ることで現実逃避をしていたが扉を開けた瞬間に目に入る眩しすぎるほどのシャンデリアの明かりとそれに照らされた豪華なパーティー会場が俺を現実に引き戻した。


あー、もうこうなったら祈るしかねえわ。


ただでさえうろ覚えなゲームのキャラの小さいときの姿なんて分かるわけがないので自ら避けることは実質不可能だ。


まあ多分階級が高ければ高いほど重要度が高い人が多いのだろう。王子もそうだしな。


そうなれば自由時間のときにある程度家の爵位ごとに集まりができるらしいから子爵とか男爵辺りのところにいればいいだろう。


うん、完璧だな。



「ああ、どうもヘンドリック卿」


「こちらこそシェリフ卿。して、その子が・・・」


「ええ、息子です」


「お初にお目にかかりますヘンドリック卿。アルカ・バーナードと申します。以後お見知りおきを」


「ほう君があの・・・。どんな問題児かと思えば中々どうして利口な子ではないか」


「お褒めに預かり恐縮です」


「受け答えもしっかりしているし作法も中々様になっている。とても五歳とは思えぬな」



両親が親交のある貴族との挨拶回りを済ませる。


しかし行く先々でさっきの人みたいな感じのことを言われたな。


「ねえ、もしかして僕の評判って相当悪い・・・?」


「もしかしても何も前から言ってたでしょ。まあさっきの挨拶回りでかなり改善したと思うわよ」


どうやら五歳でのお披露目は俺が思っていたよりも重要っぽそうだ。


なにせ今も遠巻きに見られてるしなんか言われている。


話の内容は聞こうと思えば聞けるが聞いてもこっちが傷つくだけでなんのメリットもなさそうなのでやめておく。


「これも道中で厳しい作法の授業をしたおかげだな」


父さんが言うには言葉遣いも礼儀作法もどちらも年相応以上の振る舞いをしているからそのギャップで評価の回復が早いだろうとのことだ。


言葉遣いは問題が無かったが作法は年相応程度だったからこのパーティまでにしっかり身に着けさせたと。言葉遣いができても作法が年相応程度では評価の回復にどうしても時間がかかってしまうだろうとも。


「そうなったらアルカの評判をよくするために色々な会に出て回らなきゃいけないからな。でもそれは嫌だろう?その為にこの回だけで済むように身に着けさせた」


一応あの厳しい授業もちゃんとこちらを思ってのことだったのか。


「ちゃんと考えてのことだったんだ。そりゃ・・・どうも」


辛い思いをしたから素直に感謝はしづらいがそれでも一応言っておくべきだろう。


「ああ、どういたしまして。・・・そろそろ王子様の登場だから食事を置いて静かにな」


む、そろそろか。しかしまだ来なさそうだしもう少しはいいんじゃないか。なにせ王家主催なだけあって料理が美味い。


「ダメだ。こんなとこで評判を落とすわけにはいかないだろう・・・。」


あ、取り上げられてしまった。ちくしょう、さっさと王子出てこねーかな。


あ、なんか入口の方ががやがやしてる。


「サルートー王子殿下のご入場!」


やっときた。なんだか強そうな騎士に挟まれ、豪華なドレスに身を纏った女性に手を引かれ会場に入ってくる子供。


あれがサルートー王子か。なんだか意思の強そうな眦が吊り上がった眼に金髪をしている。その顔立ちは将来を期待させるつくりだ。ありていに言うとめっちゃモテそう。


王子の手を引く女性はどことなく王子の面影がある。いや、逆か。王子がこの人の面影を宿しているんだ。


「ねえ、あの王子様の隣が王妃様?」


「ああ、サルートー王子の母である第二王妃のレヴィア様だ」


小声で父さんに聞くと予想通りの答えがかえってきた。


王妃様の方は髪色や全体的な雰囲気は王子に似ているが、眼つきは穏やかでである。


ふむ、王子の眼つきは国王譲りなのかもしれない。


そして護衛としてついてる二人の騎士だが両方ともかなり強い。


フィリル程強くは無さそうだが今の俺だと厳しい相手だろう。


遠くからなら二対一でも勝てそうだが逆に近距離からだと相手が一人だけだとしても勝ち目は薄いだろう。どうしても相手の攻撃を剣でさばきながらだとそっちの方に気を取られてあんまり魔法を使いこなせないんだよな。


こう考えると近接戦闘能力も鍛えたくなってくるな。一応身体強化を使えば家の騎士には結構な確率で剣でも勝てるようになってきたのだが。やはり王家に仕えるだけあってその実力も並みはずれているということか。


そんなことを考えながらじっと観察しているとふと王子と目が合った・・・気がする。


なんだかこちらを見てニヤッとした気がしたが多分気のせいだ気のせい。


うん、気のせいだろう。初対面の俺の顔なんて向こうが知る訳ないし。


だからそんなに反応しなくていいと思うんだよなあ俺の勘・・・。





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