第7話

まあ悩んでもしょうがないということで早速行動だ。


「お父様、お母様。大事な話があります。どうか聞いてくださいますか」


「どうしたアルカ急に改まって。話ってなんだ」


父と母が怪訝な顔をしながらも一応聞く姿勢に入ってくれる。


「率直に言います。今よりも行動範囲を広げたいので外泊の許可と門限の撤廃を。無理を承知でお願いします!これを許可してくれるなら勉強なりなんなりなんでもするので!この通りです!」


そして間髪を入れずに土下座。まだ五歳の体なのであまり綺麗な姿勢はとれないが大事なのは心だ心。


「む、いや急にそんなことを言われてもダメなものはダメ・・・「あなた、ちょっとまって」」


「ん、なんだアメリ?」


案の定断られそうだったのだが急に母さんが待ったをかけた。


なんだ?なんか嫌な予感がする。


一体父さんに何を耳打ちしているのだろうか。そしてなぜ父さんは天啓を得たような顔をしているのか。


全身を悪寒が包む。つい先月追い込みをミスって逆に上位個体の群れに囲まれたときもこれほどの悪寒を感じたことはなかった。


俺の勘は全力でこの場から逃げろと告げている。なんだ、なんなんだ。


まだ五年ほどしか生きていないが俺の勘が外れたことはほとんどない。


今すぐに勘に従って逃げようかとも考えたがここで逃げては二度と許可を得ることなどできまい。


それに勘など外れてなにごともなく許可がもらえる可能性だってある。


しかし、そう思って留まったことがとんでもない悪手であり勘に従い逃げたほうがましだったとはこの時知る由もなかった。



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む、ようやく話がまとまったようだ。


途中から俺に聞こえない程度の音量でメイドや執事ら使用人まで巻き込み会話をしていたがようやく終わったようである。


しかしやけににこやかで不気味だ。一応逃走経路を確保しておこうと思いちらりと後ろの扉を確認したがいつのまにか使用人たちで塞がれていた。


え、なに?なんなの?


本格的にまずい気がするここは一旦退避だ。


「すみません、少々用事を思い出してしまったのでこの話はまた今度にで「まあ聞きなさいとりあえず椅子に腰かけて、な」も?」


いつも貫禄のある父さんだが笑顔を浮かべるといつもの3割増しで迫力を感じるな。


というかまじでなんなんだほんとに。頼むから逃げさせてください。


しかし父親であり当主でもあるシェリフの言うことを無視して無理やり逃げるわけにもいかない。


しぶしぶであるが椅子に座り直し聞く姿勢を作る。


「あー、お前のいう外泊と門限の撤廃だがな叶えてやろう」


え、まじで?やっぱ勘なんてあてになんねえな!


「ちなみに条件とかは・・・」


「なにもないぞ」


よっしゃあ!もう二度と勘なんて信じねーよバーカ!


「なにせこれは”決定事項”だからな」


おや?雲行きがちょっと・・・。


「いまから一か月後。第三王子であるサルートー・ハイネ様の五歳のお目見えパーティがある」


「ふんふん、めでたいね。それで?」


この国の貴族は五歳になると王都でお披露目をして社交界デビューをする風習があるらしい。まあ強制ではないのだが暗黙のルールというやつだ。


男爵家や子爵家などは数が多いのでやらないところも多いのだが伯爵家以上ともなれば歴史が長く役職上も重要なものばかりのためやらない方がおかしいくらいらしい。


「お前のお披露目はまだだったろ?」


「まあ、うん。半年前に言ったよね」


もちろん伯爵家であるうちも風習に則ってお披露目をしようとしたのだがそれに俺は猛反発。


まあ当たり前だ。もともと知らない人と話すのは苦手だし貴族としてのマナーなんて学業と違い前世で学んでいたこともなければ学ぶことが楽しいわけでもない。


使用人いわく「アルカ様もこの分野は年相応でいらっしゃる」とのこと。


それになにより子供の内の社交界なんて遠いところまでわざわざ言って特に実にもならないようなことを話して終わりで時間がもったいない。


そんなことをするなら魔法の練習をしていた方が何百倍もましである。


その為俺は魔法学院に入学したらしっかりとコネクションを作るという約束とそれを可能とするだけの能力を両親に示して免除してもらっていた。


「その王子のパーティだがお前にも招待状が来ていてな、ちょうどいいから出席してそこでお披露目もするぞ」


「はああああああああああああああああああああああああ!?」


おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。え、ちょ、うそ。まじ?


「いやいやいや、待って?約束が違うんじゃないそれは」


「しかしな、アルカ。さすがに王族からの招待を行きたくないからなんて理由で断る訳にもいかないだろう」


「理由なんてどうとでもなるでしょ!本音と建て前ぐらい使い分けようよ貴族なんだら!」


くそ、絶対に出てなるものか。どうにかしてこの父を説得しなくてはならない。何かいい手はないのか?


「それとも父さんは王族とはいえ命令でもない招待に屈して息子との約束を破る気なの!」


「いや、しかしだな・・・」


お、ちょっと押してるぞ。結構自分でも無茶苦茶言っている自覚はあるがこちらも必死なのだ。許して欲しい。というか面倒臭い彼女ムーブが強いのはどの世界でも共通なのか。


「はぁ、アルカ。あまりお父さんを困らせないでちょうだい。そもそもその約束に関しては日帰りという条件をつけたから通ったということはあなたも分かっているでしょう?」


あ、まずい・・・。調子に乗り過ぎたか。我が家の鬼神ははがお冠だ。その証拠に口調は穏やかだが抑揚がなく表情は能面を思わせるほどに無表情である。普段は表情豊かな人だけあって滅茶苦茶不気味だ。


「それなのにあなたときたら毎日門限ぎりぎりまで出かけては討伐ばかり。強くなるため?大いに結構ね。私たちは貴族だもの。戦う者として強いことは重要なことだわ。学業の心配は無い?そうね、確かにあなたは賢い。今すぐ学院に入学してもトップの成績でしょう」


「じゃ、じゃあいいじゃん!何の問題もないでしょ?」


頼むから勘弁して下さい。明らかに褒めて落とすための前振りじゃん・・・。


「でも、礼儀作法や風評はどうにもならないでしょう」


はい、そうっすね。


「第一、伯爵家の子息が社交の場に現れないなんてとんでもない問題児だと周囲に喧伝してるようなものよ。それでも兄弟がいたらましだったけれどあなたは一人息子で次期当主。その醜聞は直接バーナード家のものになるのよ。それがあなたにとってもこの家にとってもとてつもないデメリットなのは賢いあなたなら当然わかるわよね?」


俺にはうなずくことしかできなかった・・・。


この後もお怒りは続き自分の問題点をいくつも突き詰められ最終的に社交の場に上がることが決定づけられた。


誰か助けて・・・。





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