第6話

「なあ、フィリル・・・」


「なんですかアルカ」


「本当にないのか?」


「何度も言わせないで下さい。ないものはないんです。今このバーナード領、特に館周辺は国一番の安全地帯といっても過言ではないほどです」


「またまたそんなこと言ってー。本当は隠してるんでしょ?ね?」


「だーかーらー!いないんですよ魔物は!」


「嘘だね、魔物なんて無から湧いて出てくるんじゃないかっていうぐらいいるじゃないか」


「まあそうでしょう。一か月もしたらまた元のように戻るでしょうけど今はいないんです!あなたが狩りつくしたせいで!」


魔物の討伐許可をもらってから半年ほどたったとき、俺はある問題に直面していた。


まさかの魔物のリポップ待ちである。


ゲームのときは魔物なんて無限に湧くので気にしたことが無かったがこんな事態になるとは思いもよらなかった。


しかしフィリルがいうには館から馬車で日帰りで行ける距離にいる魔物はもういないという。


まあ、実際に探せばいるのかもしれないが探知に引っ掛かりもしないほど弱い奴を倒してもなんの旨みもない。


そのため元の数に戻るには他所の地域から魔物が流れてきたりして繁殖する時間を考えて一か月ほど必要だろうとのことらしい。


ちなみにこのとき聞いて初めて知ったのだが魔物は本当に無から湧いてでることもあるらしい。


基本的に繁殖よりも生産数は少ないらしいが極端に少なくなったところだとまるで元に戻ろうとするように一斉に湧き出ることも必ずではないがあるとか。


この特性のせい(おかげ?)で魔物はどんなに弱い種類でもどんなに希少価値が高い種類でも絶滅を免れているらしい。


それと余談だがフィリルが貴族となる功績を得た要因である魔物の軍勢もこの法則によって引き起こされたものであるとか。


「それにこの半年の間一切休みもなく魔物を狩りまくっていたんですからそんなこと簡単に予想できたでしょうに。あなたは変なところで先入観がありますね」


ぐ、鋭い。さすがに前世の記憶を断片的ではあるが覚えているなど一生誰にも教える気はないのではやくこの世界とゲームの相違点のすり合わせを終わらせなければな。


ゲームとで違うとこと同じところがそれぞれあるから結構勘違いしやすいんだよな。この点はもっと気をつけていかなくてはいかない。


「まあたまにはいいじゃないですか館で過ごすのも。ここ半年のあなたは軍人かと思うほどハードな日々を送っていましたからね。魔物での強化もそろそろ上位種じゃないとほとんど変化がないでしょう?」


「まあ、それもそうだね。さすがにその辺にいるような奴を狩ってるだけじゃ頭打ちになってきたし」


この半年、魔物を休みなく倒したおかげで肉体も魔力もかなりの成長を遂げた。


ただ肉体が成長したといっても別に背が高くなったり筋肉もりもりのマッチョになったわけじゃない。


この成長とは魔力での身体の強化がより乗りやすく、そしてやり易くなったということである。


今の俺は半年前の自分が束になっても勝てないほど成長したことだろう。


まあその成長のために過ごしたこの半年間は傍から見たら狂気のような時間だった。


朝早くに起きては魔物の情報があったところへ赴き討伐をし、門限ぎりぎりに帰宅し夕食をとって最低限の用事をすませたらすぐに睡眠というサイクルをひたすらに繰り返していた。


ふむ、振り返ってみるととんでもない生活してるな俺。館を完全に宿屋代わりに使っている。さすがにこの生活をもう一度するかと言われたら断るかもしれない。


まあ、そもそも同じようなことをこれ以上続けてもほとんど成果がないんだが。


さすがに初めて討伐した集落にいた長のような上位個体でもなければ強化ができなくなってきた。


レベルが上がって必要経験値も跳ね上がったということだろう。


一応上位個体でなくとも大量に倒せば一応同じ効果が出るだろうが効率が悪すぎる。


それにこれは俺の体感だが強くなればなるほど実力の開きがある相手を倒したときに得られるものが少なくなっている気がする。


そんなこともあって強くなりたくて大量虐殺をするくらいなら魔法の練習でもしていた方が断然効率がいい。


実践でも実力は磨けるがやっぱり検証なども含めると討伐のついでにやるよりも技術の底上げになる。


「移動中の馬車内で問題を出したりして学力を測っていましたが低下はしていませんが成長もしていませんでしたね。これからは学問の授業も再開しますから」


「えー、半年前に高等部相当の学力があるっていうこともあって討伐の条件を出してもらってたんだよ。これ以上進めるの?」


俺が将来入学する予定のルイニッヒ魔法学院は12~15歳までの中等部と15~18歳までの高等部がある。ちなみに小等部はない。前世でいう中高一貫校みたいなものだろうか。


「進めます。どうせあなたのことですからこの一か月間、魔法の練習と上位個体の討伐の為に遠征をする許可をもらうための説得に費やすんでしょう」


図星だ。俺のしようと思っていたことを完璧に言い当ててる。


「それでしたら勉学には何の憂いもないということも一つ説得材料になるでしょう」


なるほど。こちらのことを考えての発言だったのか。そういうことなら仕方ないがやるしかない。


現状両親に遠征の許可を願い出てもまず間違いなく却下されるだろう。


今の門限を決めての日帰りも両親的にはかなり不本意らしいのでまあ無理だろう。


そんなわけなので説得材料はあればあるほどいい。


しかしまあどうやって説得しようかな・・・。




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