第4話
俺がフィリルから授業を受けるようになってから日課となった業務報告を兼ねた会食にて、食事をある程度食べ進めたところでフィリルが俺の両親へと報告に入る。
「・・・と、このようにアルカさんは初級とはいえ既に複合魔法を使用するまでに至っており魔法の上達具合は私から見ても異常と言える程に目覚ましいです」
「・・・」
お、そーかい。そりゃどうも。
「しかしながら授業などに対する態度に関してはあまり褒められたものじゃないですね。自分の好奇心を抑える気が全く見受けられません。この点に関してはご両親からも注意してあげた方がいいでしょう」
「・・・!・・!!」
んだよ、うるさいな。余計なこと言うなよ。
「なんですか、アルカ。言いたいことはちゃんと言ったらどうですか」
「・・!!・!!!」
「あ、そういえば拘束は解いたけど沈黙はかけたままでしたね」
「・・・っはぁ、いやうっかりみたいにいってるけどわざとだよね!」
「まあ、そうですね」
否定すらしない!こいつは俺のことをまだ三歳児だと分かってないのか?普通は両方とも逮捕された犯罪者がかけられるような魔法なんだが。
「なんでこんなことするのさ!」
「報告に邪魔になる為、それとさっき報告の時にも言いましたが逃亡のお仕置きです」
なんも言えねえわ。いやだとしてもそんな魔法かけるなって言いたかったのだが分かって無視してるなこれ。
「はー・・・アルカは相変わらずだな。さすがにそろそろ学習したらどうだ」
そう言って呆れたのは俺の父であるシェリフ・バーナード。
このバーナード領の領主であり当主。
ちなみに魔法の腕も中々のものらしい。
とてつもなく貫禄のある見た目をしているがこう見えて23歳である。
「ねぇ、とうさま。ぼくきょうフィリルからとんでもないこときいたんだけどいっていいかな」
そしてフィリルに後遺症が残らない程度の怪我までは俺に負わせていいと許可したという行動だけみたらやべーやつだ。まあその理由について一応理解はしている。確かに言いつけを破ってばかりなのは悪いと思っている。まあだからといって・・・
「ん、なんだ。言ってみろ」
「じつはね、とうさまがフィリルにぼくのことについてはこういしょうを・・・」
「待て、すまんアルカ。父さんが悪かった。だから少しだけ黙ってくれないか?な?あとで何でも買ってやるから」
やっぱ納得できないよね!別に俺だって破りたくて破ってる訳じゃない。ただちょっと好奇心が抑えられないだけだから!
「あなた・・・後遺症ってなにかしら・・・?」
これに反応したのが俺の母でありシェリフの妻であるアメリ・バーナード。
シェリフと同い年らしいがこちらはいい意味でそうは見えない。見た目と実年齢の乖離が大きい夫婦である。
アメリもシェリフ同様に魔法の腕が高いらしい。
そしてなによりシェリフよりも俺に甘い。
シェリフもなんだかんだ甘いがアメリはそれ以上だ。
「いや、それはだな・・・」
「分かってるんですか!アルカはまだ三歳ですよ!」
そうだそうだ、もっと言ってください。
「確かに危なっかしい行動ばかりでそう言いたいあなたの気持ちも分からなくはないですが!」
え?うそでしょ?信じてたのに・・・
「あなたの味方はいないみたいですね、アルカ」
ぽん、と肩に置かれたフィリルの小さな手が今はとても大きく感じた。
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結局あの後俺はシェリフと一緒にアメリに説教されてしまった。
何度か抜け出そうと試みたのだがその度にフィリルに察知されことごとく邪魔され、それに気づいたアメリがより怒って説教が長くなるという負の連鎖に陥ってしまった。
しかしシェリフと力を合わせた合作すらも見抜かれるとは。やはり実力だけで貴族に成り上がったのは伊達じゃないということか。
だが、この程度で俺がくじけるとでも思っていたのか!
フィリルは魔法の発動を魔力のゆらぎ?というので察知しているらしい。しかも俺は魔力がでかい上にそれを隠す技術がないから分かりやすいとも。
ならその技術を教えてもらおうと思い聞いてみたのだが結果は今朝の通りだ。
だが俺は今度こそフィリルからこれを隠し通す自信がある。
なにせさっきシェリフから手本を見せてもらったばっかりだからな。
そもそも先ほどの説教、シェリフは単独ならばフィリルの目すらもかいくぐり逃げられただろう。
それほどまでにシェリフの闇魔法の腕は高い。
俺の闇魔法の素質は間違いなく父譲りだろうとはフィリルの言葉だ。
合作も俺に付き合ってくれただけで隠蔽という面ではシェリフにとって足枷でしかなかっただろう。非常に悔しいがな。
が、そのおかげで見えてきたものもある。
特に自らを隠す技術。さすがに目の前で見張られていれば無理だが屋敷内を探知してる程度の警戒度のフィリルなら間違いなく欺けるだろう。
先ほどの記憶を頼りにシェリフがやって見せたことを自分なりにかみ砕いて再現する。
まずは闇の魔力で自らを覆い、探知を誤魔化す。
これだけならフィリルに教えてもらったことだがシェリフが行っていたのはこれだけではない。
ここから更に覆った魔力で通常の魔力の流れを装う。
こうすることで自らの魔力を隠しながら相手には通常時の情報を送ることで騙すということだ。
正直慣れないのもあって制御がめちゃくちゃムズい。
が、こうでもしないとあいつから隠れて魔法の練習ができないのだ。
フィリルは俺に最も適性のある水と闇を推してくるが俺はせっかく使えるようになったばっかりの火魔法を練習したい。
危険だとかなんだとか言われているがやっぱり好奇心は止められない。というよりも止めたくない。
俺は自分の気持ちを押し殺さないと決めているのだ。
「じゃますんならだれだってかかってこいy」ガチャ
「アルカ、ちゃんと寝てます・・・はー、やっぱりですか」
あ、やべ
「え、いや。なにかな」
「誤魔化したって無駄ですよ。さっき思いっきり出してましたよね、炎」
くっ、ここまでか。
「なんでわかったの・・・?はんせいをふまえてとうさまのまねをしたのに」
「いや、別に今回は魔法を使ったと分かった訳じゃありません。それよりも今、なんていいました?シェリフ卿の真似と?」
「う、うん」
「・・・なにしてるんですかシェリフ卿。どうせ真似できないだろなんて言って手本なんか見せるからですよ。だから言ったのに、この子は紛れもない天才だって」
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