第19話 パツ美女

 南条玉枝なんじょうたまえさんは、若い頃はやんちゃで金髪のギャルだった。


 高卒後、バイトをしていた工務店の跡取りと結婚してからは、少し大人しく黒髪にしているけど。


 プライベートの服装は、絶対にイケイケだと思っていた。


 しかし……


「お待たせ、ノリ坊」


 まず目に入ったのは、ふわっと舞うスカートの裾。


 その中に、スラッとした脚線美が包まれていることを俺は知っている。


 腰を縛るタイプだから、そのキュッとクビれたウエストラインはきっちりと表現。


 さらに、真ヒロインたちの中で1番小さいとはいえ、一般水準では十分すぎるほどのEカップ巨乳が、パツッと際立っている。


 何よりも、真ヒロインたちの中で最年少の36歳の若々しさ。


 年相応になったとはいえ、まだギャル時代のやんちゃさ、愛らしさを示すいたずらな口元。


 そして、俺のことを見つめる目が……


「……おーい、童貞くん。何をボケッとしてんの?」


「……ハッ、すみません……って、童貞じゃないっすから」


「だって、まだ来栖さんしか知らないんでしょ? じゃあ、童貞みたいなもんだよ」


「ひ、ひどいなぁ~」


「で、どうよ、あたしのデート装いは?」


「ああ、はい……正直、メチャクチャ可愛すぎて、言葉を失っていました」


「まあ、だろうね」


「でも、家族に怪しまれなかったですか?」


「うん、大丈夫。ダンナはあたしよりも仕事にお熱だし、日向も好きな男子のことで頭がいっぱいだから」


「そうっすか」


「だから~、この可愛いあたしは~、ノリ坊だけが堪能できるんだよ?」


 と、玉枝さんはあざとく俺に迫る。


「……いや、でも」


「何よ?」


「周りの男性たちが、玉枝さんのことをチラ見しているんで……」


「んッ? ふふん、まあ、あたしはモテるからね」


「ですよね」


「だから、あまり放っておくて、すぐ他の男に抱かれちゃうから」


「……とりあえず、お茶しましょうか」


「ええ、そうね。オホホ」


 わざとらしく上品な所作をする玉枝さん。


 正直、普段のラフな作業着とのギャップも相まって、最高です。




      ◇




 てっきり、上品な服装にふさわしく、上品に紅茶をたしなむかと思ったけど。


「んッ、んッ……ぷはッ、うまッ」


 彼女がゴクゴクとイッキ飲みしたのは、レモンスカッシュだ。


「お姉さん、レスカおかわりね」


 ここは飲み屋かよ……


 まあ、こういう所も、魅力的なんだけど。


「で、ノリ坊。来栖さんとは、どんなセッ◯スをしたの?」


「ぶふッ!?」


 俺はオレンジジュースを噴き出す。


「ゲホッ、ゴホッ……い、いきなり何すか?」


「だって、気になるし」


「ここで話すようなことじゃありませんよ」


「じゃあ、さっさとホテルに行こうよ」


「俺は高校生ですよ?」


「じゃあ、カラオケでする?」


「経験あるんですか?」


「うん、昔のカレシと」


「さすが、ギャルっすね」


「じゃあ、もう公衆トイレでも良いよ」


「色々な意味で嫌です!」


「ったく、ワガママだなぁ~、ノリ坊は」


 玉枝さんは眉根を寄せながら、2杯目のレスカを飲む。


「ちなみに、来栖さんとはどこでシたの?」


「それは……志津子さんのご自宅で」


「ああ、来栖さんとこ、旦那さんが海外出張中なんだっけ?」


「ええ、まあ」


「良いな~、自由で」


「旦那さんのこと、嫌いなんですか?」


「ううん、そんなことないよ。ずっと、一緒に仕事して来たし、同志って感じ」


「そうですか」


「でも、男としてはもう……ねっ?」


「なるほど……」


「ぶっちゃけ、旦那は今日も仕事だから、家にはいないけど……いつ帰って来るか分からないし。まあ、そのハラハラ感を楽しむのもアリだけど……でも、日向もいるしなぁ~」


「そうですよ。たった1度の過ちで幸せな家庭を壊すなんて、ダメです」


「とか言って、旦那の居ぬ間に人妻を食べちゃったのはどこのどいつだ~い?」


「……ぼくです」


「ねえ、ノリ坊。やっぱり、ホテルに行かない?」


「いや、でもラブホは……」


「ううん、普通のホテル。それなら、保護者同伴ってことで高校生も大丈夫でしょ?」


「ああ、まあ……ってことは、泊まりっすか?」


「ドキドキするでしょ?」


「いや、まあ……ていうか、家のことは大丈夫なんですか?」


「うん、今日も高校のプチ同窓会だって言って来たから。そのまま盛り上がって、お泊りだって言えば良いし」


「そ、そうっすか……」


「ノリ坊も、適当に友達の家にお泊りって言いなよ。ダメ?」


「いや、まあ……うちの親は、大丈夫だと思います」


「オッケ♪ じゃあ、ホテル行こっか」


「は、はい……」


 俺は飲みかけのカフェラテを一気飲みする。


 その甘さで、脳みそがバグりそうだった。




      ◇




「ええ、そうなんです。友人の息子を預かることになって……」


 清楚な格好が功を奏したかもしれない。


 また、玉枝さんの口の上手さもあり、ホテルのフロントさんはあまり疑った様子もなく。


「では、こちらが部屋のカギです」


「ありがとうございます♪」


 難なくチェックインを果たした。


 すげぇ……


「ほら、ノリ坊、行くよ」


「う、うっす……」


 エレベーターには、俺たち以外に数人の男性客が乗っていて。


 みんなして、やはりジロジロと、玉枝さんを見ていた。


 顔とか口とか胸とか。


 気持ちは分かるけど、さすがにちょっとイラッとするな。


 だってこの女性ひとは、俺のモノなのに……


 って、違うだろうが。


 紳士さだけが俺のウリ、なはずなのに……


「オープーン♪」


 とうとう、部屋に来てしまう。


「へぇ~、けっこう良い部屋じゃない。眺めも悪くないしね」


「そ、そうっすね」


「どうしよう、まだ明るいけど、お酒でも飲もうかな」


「えっ?」


「その方が、テンアゲだし。ノリ坊は、どうする?」


「いや、だから、俺は高校生なので」


「ちぇっ」


「ていうか、本当に飲むんですか?」


「んっ?」


「いや、ほら、だって……玉枝さんと初めてするから……シラフの方が良いなって」


 と、俺が正直な気持ちを言うと、彼女はニヤッと笑う。


「もう、可愛いやつだな、ノリ坊は♪」


 ギュッと抱き締められる。


 魅惑のEパツ巨乳が押し付けられた。


「じゃあ、このまますぐ、エッチしちゃおうか?」


「お、お願いします」


 俺と玉枝さんは至近距離で見つめ合う。


 そのまま、キスをした。







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