第11話 新たなるヒロイン♪

『元則くん、今日のデートすごく楽しかったわ♡』


『俺の方こそ、最高でした』


『ねぇ、また……してくれる?』


『デート、ですよね?』


『……うん』


 何だ、この含みのある感じは……


『じゃあ、おやすみなさい』


『おやすみなさい』


 志津子さんとやりとりを終えると、俺はベッドに身を投げ出す。


「……ぐふふ」


 我ながら、クソキモい笑いだと思う。


 でも、仕方がない、許して欲しい。


 あれだけ素晴らしい熟女とデート出来たのだから。


 しかも、志津子さんは控えめながらも、グイグイ来る最高にして最強っぷり。


 ぶっちゃけ、もう決まりで良いかもなぁ。


 志津子さんさえいれば、俺はこの世界を楽しく生きて行ける。


「寝よ」


 また興奮して、シコシコしないと眠れないかもしれないけど。




      ◇




 きらめき高校1年1組の教室に入ると……


「うふふ」


「あはは」


 テンプレ主人公こと優太と、テンプレヒロインこと彩香が、仲睦まじく会話していた。


 俺はその光景を見て、うんうんと頷く。


 テンプレ、テンプレと言っているけど、決して嫌っている訳ではない。


 むしろ、微笑ましいし、応援したくなる。


「……あー、ムカつくなぁ」


 その時、ふとそばでそんな声がした。


 もちろん、俺の声ではない。


 女子の声だと分かり、ハッと顔を向ける。


 そこには、金髪ツインテの美少女がいた。


 こいつは……


「……南条日向なんじょうひなた


「あ?」


 ギロッと睨まれて、ビクッとする。


 けど、相手はすぐにハッとして、ニコッと微笑む。


「どうして、あたしの名前を知っているの?」


「いや、その……」


「ああ、そっか。やっぱりあたしが可愛いから、有名人なのかなぁ~?」


「そっ……そうそう、そうだよ」


「えへへ~、そっか~」


 彼女はなおも笑う。


 そう、こいつは……テンプレヒロイン②だ。


 金髪ツインテールで勝ち気な美少女。


 正に、ザッて感じだろう?


 ニコニコとあざとく笑って……


「そういえば、君の名前は?」


「えっ? ああ、俺は須郷元則すごうもとのりだよ」


「須郷くん……小林優太こばやしゆうたくんと仲良しだったりする?」


「いや、まあ……一応、親友だけど」


「まじぃ?」


 その目がキランと輝く。


 いや、ギランだったかもしれない。


 獲物を逃さない、みたいな。


 俺はビクッ、ゾクッとした。


「え、どしたの?」


「ねぇ~、須郷きゅ~ん?」


 急に猫撫で声を出して甘えて来た!


「は、はい?」


「ちょっと~、相談したいことがあるんだけど~、今日の放課後って空いている?」


「ま、まあ、特に予定はないけど……」


「だよね~!」


 だよね~、って、おい。


「じゃあ、今日の放課後、ちょっとあたしに付き合ってよ」


「う~ん、そうだなぁ~……」


 俺は正直、すでにこいつに対して辟易としている。


 やっぱり、クソ生意気なJKとかナッシングだな。


 もう、適当な理由をつけて断って……


「……あっ」


「えっ?」


「いや、その……どこかで、お茶しながらって感じかな?」


「う~ん、でもそれだと、あたしと須郷きゅんがデートしているみたいになっちゃうから~」


「まあ、そっか」


「だから、あたしのお家に来てよ」


「……はっ?」


 おいおい、この女、バカか?


 それって、余計に……


「何よ、嫌なの?」


「……マジで良いの?」


「だから、そう言っているでしょ?」


「わ、分かった……」


「じゃあ、放課後にね」


 最後にまた、ニコッと腹黒スマイルを浮かべて去って行く。


 俺はそんなバカ女の背中を見送りながら……


「……やば、こうもトントン拍子で行っちゃう?」


 だって、あいつの家には、真なるヒロイン様が……


「……ちょっと、マウスウォッシュしよ」


 志津子さんとちょっとムフフな関係になってから、常備してある。


 マセたガキだと言われても構わない。


 ていうか、中身はアラサーの男だし。


 まあ、まだ童貞だけどな。


 それでも……良い具合にみなぎって来た。


 新たなる、熟女ヒロインとの出会いを前に。







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