第7話 罪な女性

「ごちそうさまでした。お邪魔しました」


「ええ、またいつでもいらっしゃい」


 玄関先にて、何よりも慈愛に満ちた微笑みに見送られる。


 けど俺は、彼女の瞳と口元に、俺に対する色香を感じた。


 もし、この場に他に誰もいなかったら、俺の方から迫る……


 なんて度胸は、まだ持ち合わせていないけど。


「小林くん、また来てね」


「あ、うん……」


 優太と彩香は、テンプレ主人公&テンプレヒロイン同士、よろしくやっている。


 うん、それで良い。


 お前らがそうやって、真っ当な青春模様を繰り広げているそばで、俺は……


「……じゃあ、優太。帰ろうぜ」


「あ、うん」


 最後に、俺は彼女に……志津子さんに目線を向ける。


 お互いに、含みのある微笑みを浮かべて、そのまま別れた。




      ◇




 お腹だけでなく、胸もいっぱいだ。


 帰宅後、シャワーを浴びた俺は、自室のベッドに寝転がっている。


 今日、志津子さんとしたやりとりを思い出して、ひとり悦にふけっている。


 分かっている、最高にキモいことは。


 けど、あれほど素敵な美熟女と仲睦まじく過ごせたのだから。


 その思い出に浸ってしまうのは、熟女スキーとして仕方のないこと。


 ましてや、彼女はゲーム世界の住人だけあって。


 男の熟女に対するザ・理想が詰め込まれている。


 正に王道の魅力。


 優しく、家庭的で、エロい(主に巨乳が)


 しかも、まさかあちらの方から、俺に対してアプローチをして来るなんて。


 マジメで大人しそうなのに……そのギャップが、またたまらん。


 まあ、現実世界でも、女性は年齢を重ねると、エロくなるって言うからな。


 性欲がマシマシになって……しかも、旦那が海外出張で寂しいとか……



 ピロン♪



「ビクッ」


 キモさそのまま、ついついキモ反応をしてしまう。


 俺はビクらせの当人、スマホちゃんに手を伸ばす。


「……あっ」


 やっぱり、熟女って、積極的だ……


『こんばんは、元則くん。さっきはありがとうね』


 志津子さん……


『こんばんは、志津子さん。いえ、こちらこそ、今日はありがとうございました』


『ごめんなさい、すぐに連絡してしまって……やっぱり、がっつきすぎで気持ち悪いかしら……?』


『いえ、そんなことありませんよ。志津子さんみたいに美人でスタイルの良いオトナの女性なら、いくらでも来て欲しいくらいです』


『もう、この子ってば……嬉しいわ』


 はぁ~、可愛すぎる。


 もうこのスマホを志津子さんだと思って抱きしめたい。


 いや、俺の方が抱き締めてもらいたい。


 美熟女の無限大の魅力に……


『ちなみに、元則くんって何か部活には入るの?』


『部活ですか? そうっすね……今のところ、入りたい部活もないんで、予定はないですね』


『そうなの……じゃあ、土日は時間が空くのかしら?』


『まあ、そうですね……どうかしましたか?』


『えっと、その、もし良ければだけど……ちょっと、お茶でもしたいなって』


『お茶ですか?』


『ご、ごめんなさい。嫌だったら、断ってくれて良いから』


『だから、志津子さんならオールオッケーですって。喜んで行きます』


『本当に?』


『はい。どこか、良いお店を知っているんですか?』


『うん。ここは私に任せてちょうだい』


『さすが、頼りになるお姉さんです』


『やだ、お姉さんだなんて。もう、おばさんよ』


『最高です』


『もう、バカ♡』


 こうして、志津子さんとのやりとりを終える。


 俺はスマホを枕脇に置いた。


「ふぅ~……」


 とりあえず、


「……シ◯るか」


 やはり、彼女は罪な女性である。




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