第3話 演者

 テンプレギャルゲーは、トントン拍子に進む。


 その後、テンプレ主人公こと、小林優太こばやしゆうたは、テンプレヒロイン①こと来栖彩香くるすあやかとそこそこ交流をしているらしい。


 そんな話を、昼休みに弁当を食べながら聞いていた。


「ねえ、元則」


「何だ、優太?」


 いつの間にか、お互いに名前呼びになっていて。


 俺もすっかり、親友キャラって訳だ。


「実は今度、来栖さんのお家に呼ばれているんだ」


「……マジで?」


「うん。ほら、来栖さんって、頭が良いでしょ? だから、勉強を教えてもらおうと思って……お願いしたら、まさかお家に招待されて」


「よっ、色男。隅に置けないね~」


「や、やめてくれよ」


「良いじゃん、行って来なよ」


「う、うん。ただ、やっぱり1人じゃ心細くて……」


「何を情けないことを言ってんだよ。男なら、ビシッと決めろ」


「そ、そんなこと言わないで、元則……助けて」


「あん?」


「だから、その日……元則も一緒に……来て?」


「お前……俺は別に良いけど、来栖さんに迷惑なんじゃないか?」


「だ、大丈夫だよ。来栖さん、良い人だし」


「まあ、そうだけど……一応、話はしとけよ? それで、彼女の了解を得たら、俺もついて行くから」


「ほ、本当に? ありがとう、元則」


「はいよ」


 その後、来栖彩香の快諾を得て、俺も同行することになった。


「いや~、悪いね。お二人さんの邪魔をしちまって」


 放課後、帰り道。


 俺はそんな風に茶化す。


「も、元則ってば、やめてよ」


「ふふ、本郷くんは、面白い人ね」


 来栖彩香が微笑む。


「いやいや、そんな。所詮、友達どまりが関の山よ。この色男と違ってな」


「だ、だから、元則」


「うふふ」


 そんなこんなで、彩香の家にやって来た。


「どうぞ、入って」


「ご、ご立派なお宅だね」


「確かに、すげ~」


「そんなことないわよ」


 笑顔の彩香に迎えられて、俺たちは良い匂いがするお家に入った。


「2人とも、飲み物は何が良い?」


「あ、お構いなく」


「俺は炭酸ね」


「元則、ちょっとは遠慮しなよ」


「はは、悪い、悪い」


「炭酸ね。小林くんは、とりあえずお茶で良いかしら?」


「あ、ありがとう」


 彩香は3人分の飲み物を持って来てくれる。


「お菓子はまた、後でね」


「お、お構いなく」


「じゃあ、とっととやろうぜ」


 そんな感じで、勉強会がスタートする。


「あ、来栖さん。この問題なんだけど……」


「ん? ああ、これはこの公式を応用して……」


「ああ、そっか……すごい、やっぱり頭が良いね」


「そんなことないわよ。小林くんこそ、飲み込みが早いわ」


「い、いやぁ~、そんなぁ~」


「お二人さ~ん、やっぱり俺ってば、お邪魔かな?」


「も、元則」


「そんなことないわよ。じゃあ、ちょっと休憩する?」


「イエーイ、お菓子くいてー」


「もう、元則ってば」


「うふふ」


 微笑む彩香が立ち上がった時、


「――ただいま~」


 玄関先から声がした。


「あ、あれ? お家の人?」


「ええ、お母さんが帰って来たみたい」


「そ、そうなんだ。あの、ご迷惑じゃないかな?」


「大丈夫よ、お母さんにはちゃんと話してあるから」


 少し待つと、リビングの扉が開く。


「あら、にぎやかね」


 現れたのは、彩香と同じ栗色の髪を、しっとりポニテにしている、美女。


 熟女、熟女、熟女……


「は、初めまして。お邪魔しています」


 慌てて立ち上がった優太が、ぺこっとあいさつをする。


「いいえ、娘がお世話になっています」


「そんな、お世話だなんて、こっちの方が……元則? どうしたの?」


「あ、いや……」


 俺はのそっと立ち上がる。


「……須郷です。彩香さんと同じクラスで、こいつの友人で」


「ええ、いらっしゃい」


 その微笑みを見て、俺は未だかつてないほど、胸がトキめいた。




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