第4話

「いつまでふざけた事ぬかしてんだ!」


バァン!


「うるさいな〜そんな大きな声出さなくても聞こえてるよ、何時間も暇だねぇ〜僕なんかの相手してて、てか本庁の連中に引き渡されると思ってたけど君らが担当なんだねぇ…痛いから手錠外してよ、これって任意同行の類でしょ?」

松田は取調室をキョロキョロ見回しながら答えた

「お前は殺人事件の関係者だ、お前みたいなのは何するかわかんねーから手錠を…」

刀を下げ髪を縛っている女刑事の話にもう1人の女刑事が口を挟んだ

「何も私達は松田さんが殺したとは思ってないの」

「おい!余計な…」

「はぁ…この手の人に駆け引きは無理、私達には…それに手錠なんて外せるでしょ?」

スカートスーツの女刑事がため息混じりに言った

「てへ、バレた?」

松田は外していた手錠を机に置いた

「てめぇ何勝手に外してんだ!」

「だって痛いんだもん」

「そういう……はぁ……初っ端から無理だったんだこんな拘留」

「上は何を考えてるやら…」

2人の刑事が肩を落とした

「話が見えないよ、どういう事なの?」

スカートスーツの刑事が口を開いた

「うちの副署長から通達がきたの、貴方がこの前の佐々原の殺人に関与してるから署に連れてこいって。曖昧な目撃証言をあたし達に突きつけてね」

刀を持った刑事が話に付け加えた

「殺された3人のうち、1人はあたし達が使ってる情報屋だった…」

「エスか…相変わらず警察ってのはえげつないね」


バチン!


「やめなよ!」

「お前みたいやつに何がわかんだ…」

「痛いなぁ…まぁいいや、いい機会だからお互いの情報を整理しない?君らは誰を追ってる?僕じゃない事は確かだと思うんだけどねぇ…」

「なんでてめぇなんかにペラペラ話さなきゃならねぇんだ」

「…松田さんは何を知ってるの?」

「さぁねぇ〜公務員さんは大変だなぁ」

ニヤニヤしながら松田は続けた

「しかし君達らしくないね〜前に記事で読んだよ「立て篭り事件!人質のいる前で銃撃の大立ち回り、警察の強権力に疑問!!」ってのを。君達だよね?記事を読んだ時凄く面白い警官がいるんだなぁと思ったよ、でもこんな無茶をするのに上の命令で僕を拘束?意外と大したことないんだぁ、やっぱりサラリーマンなんだねぇ」

刀を下げた刑事が松田の胸元を荒々しく掴んだ

「てめぇなんかに!てめぇなんか…」

「やめなよ、この人に八つ当たりしても好転しない、アンタもわかってんでしょ?この人が犯人じゃないって」

「…あたしらの情報屋の遺体からマイクロSDが見つかってね、ある男が裏の世界のバランスを変えようとしてるって」

「バランス?」

「そう、その男はとにかく事細かな情報を得ていた。死んだ3人は国の家族構成まで調べられて脅されてたみたい、でも電話でしか指示が無かったから顔を合わせた事がなかった、だから名前が分からない」

「恐らくだけど…僕そいつ知ってる」

「「はぁ?!」」

「びっくりしたー!」

「誰だ!誰なんだよ!」

「任意同行なら黙秘したいけどね…ちょっと整理しようか?君らの上から僕を拘束しろと命令があったんだね?その人ってどういう人?」

「副署長?もとキャリアかなんかだったけど降格して今の役職なの?」

「降格の理由は?」

「噂程度でしか知らないわ」

「おいおい、こいつにペラペラ喋っていいのかよ」

「この人は少なくとも「今は」敵じゃないわ、とっくにアンタも分かってるクセに」

髪を結んだ女刑事がパイプ椅子を蹴りながら

「簡単に認められねぇじゃんか…あぁ分かったよ!あくまで噂だけど副署長は本庁時代にひき逃げ事件を担当、容疑者を特定したのに何故か渋って礼状請求しなかったんだ、その隙に容疑者は海外へ留学、その後全然違う人間が出頭してきたんだ。んでお決まりのパターン…それがバレたって噂だよ」

「そっか…読めて来たぞ…僕は基本ホテル住まいなんだけどあのクライトンベイホテルを拠点にしてる事を知ってる人間って限られるんだ、僕は色々売り歩く人間だけどやり取りをする場合はサーバーを経由して居場所を分からせないようにしてるんだ、なのにピンポイントで君らが分かった理由は?」

「サラッと違法な事してるって自供してんぞ?」

「まぁまぁこの際硬いこと言わないでよ、で確信して君らを送ったのは副署長さんでしょ?」

刑事2人はお互い見合った後少しして頷いた

「ふーん…でさ?お願いがあるんだけど…いいかな?」

「はぁ?お前どんだけ図々しいんだよ!」

「いちいちイライラしない!聞ける事と聞けない事があるわ」

スカートスーツの女刑事と松田が向かい合い

「僕はどうせまだ出られないでしょ?留置所は僕1人の個室にしてくれない?」

「…それで?何が狙いなの?」

「僕の想像通りなら面白い物が見られるよ…策はこうだ…」

3人は頭を寄せ合い密談をしだした


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


弟村が電話した相手から送られてきた位置情報は6階建ての建物で受付がコンシェルジュを兼ねている高級志向の短期契約マンションだった

近くのパーキングに車を停め名城と弟村はビルに入りコンシェルジュに話しかけた

「すみません、ここに住まわれている涼木さんにご要件が…」

名城が尋ね終わる前にコンシェルジュが机下を触ると非常階段入口手前の壁が開き地下に続く階段が現れた

「伺っております、さぁどうぞ」

弟村と名城は顔を見合わせた後コンシェルジュに一礼して階段へ進んだ

階段を降りた先にはドアがありその上には監視カメラまであった

弟村がインターホンに手をかける直前


ー空いてるよ、入って入ってー


電話で話した女の声だった

2人はドアを開け中に入ると部屋にはおびただしいケーブルとPCが乱雑置かれ正面には大きなモニター、どうやら監視カメラの映像のようだ

モニター前に座っていた女が弟村達に体を向けるとそこには小さめの丸い薄ブルーのサングラスをかけた青髪の小柄な女性が座っていた

「やぁいらっしゃい、あたしゃ涼木、よろしくね」

「あ…初めまして、社長のお世話係…」

「知ってる、メイドさんが名城さん、さっき電話で話したのが弟村さんでしょ?いつも聞いてるよ」

涼木と名乗った女は近くにあった棒付きキャンディを口に含み

「松田から話は聞いてるよとりあえずこれ」

そう言うと弟村に車の鍵を投げた

「あとこれ」

名城に封筒を渡した

「この2つを松田から預かってる、渡したよ」

「すみません、貴女がこれの中身を見ていないという保証…」

名城が怪訝な顔をしながら口を開らくと涼木が遮った

「あたしがそういうタイプなら可愛がってるあんたら2人をここに寄越しゃしないよ」

「根本的な事聞いていいですか?涼木さん…?と社長ってどんな関係なんです?」

弟村も話に加わった

「商売仲間って所、あとアイツにあたしの資産運用してもらってる、あ!邪推するなよ!アイツはタイプじゃねー」

そう言うとモニターの前に涼木は椅子を戻した

名城が封筒から手紙らしき物を出すと


ー何かあったらそこの涼木ちゃんを頼りな。君達が何かを頼べば勝手に僕の口座から金抜くからそこの人。それと新しい隠れ家ねー

の文と住所が載っていた


手紙を置いた名城が涼木に声をかけた

「涼木さん」

「なーに?」

「わかってる範囲でいいので教えてください、今何が起きてるんです?」

弟村も尋ねた

「それはちょっと教えられないな、そういう事を調べるのがアタシの飯と酒の種なんだ」

「お金は払います、なので知ってる事教えてください」

名城は深々と頭を下げ頼んだ

「…松田はとりあえずここの所轄に連れてかれた、本庁だと思ったけどあの男を捕まえらる連中は警察庁にいないよ、上層部はアイツの存在を黙認してる。でも所轄は松田を引っ張る理由として佐々原の事件の関係者というかなり無茶なこじつけだ、それもアンタらが一緒にいる目撃情報なのに松田だけってね。恐らく上層部は知らない、所轄の誰かが仕組んだか…嵌められたか、んでこの松田が捕まったタイミングで小谷は東京を出て徳宮と別宅に向かってる、明莉達を連れてね。これは偶然じゃない、そしてこの男が明莉と数日前にホテルで会っていた…」

涼木がキーボードを叩き男の写真を出した

「あ!こいつ」

「…こいつが今回裏で動いてる荒瀬 村邦だよ、こいつと明莉がフリーの傭兵達に声をかけてるって掴んでね。ついでに調べたらなんで松田に目をつけたか遡ったら出てきた」

涼木が画面を切り替えた

「この荒瀬ってのは元々ブローカーだったんだ、…例の国での取引を仲介したのがこいつ、まぁそん時なんかあったんだろうねぇ、あたしゃ知らんけど。まぁでもあの記憶力お化けが覚えないってのは妙だとは思うね」

弟村は車の鍵を持ち名城は言った

「涼木さん色々ありがとうございました」

「ちょい待ち!メイドさん、あんた無茶な事がすんなよ?そんな事あいつは望んでない」

「……」

「アイツは自分の不始末は自分でどうにかするタイプだ…アンタら2人が今やる事は松田が1番嫌がる事を阻止するか身を潜めるか…仮にアンタらが身を潜めてたとしてもアイツは絶対咎めたり怒ったりしない。どっちかって言えばアイツはあんたらに無茶はして欲しくないって思って…」

「…小谷さんを助けましょう、名城さん!急ぎますよ!」

「ちょっと!社長は…?!」

「警察相手に無茶はできない、なら今やるべき事は1つですよ。あとすみません涼木さん、写真を作ってこの携帯から送信してくれませんか?」

弟村が襲撃者から抜き取った携帯を涼木に渡した

「ツケにしちゃ随分とまぁ働かせるねぇ…まぁあのバカから金は貰うからいいや、それとホレ」

涼木が小さな紙を弟村に渡した

「小谷の別宅の住所はそこに書いてある、さっきの電話番号は残しておくからなんかあったら連絡しな。頼まれた分はやってやった、後はあんたら好きにやりゃいい、そこのドアから抜けて進むと駐車場に出るよ。そこにその鍵の車があるから」

「涼木さんホントに色々…」

弟村が例を言おうとすると

「そういうのいらねー、早く行きな」

2人は案内されたドアに向かい涼木に一礼してドアから出ていった




「いい仲間を持ったねぇ〜あんたにゃ惜しいよ

、さてあたしも仕事仕事と…」




「涼木さんって社長と長いんですかね?」

「私も名前は初めて聞きました」

2人は地下道を歩きながら話した

「社長が信頼してる人って事ですかね?」

「弟村さん気づきません?あの人前に私達を撒く時に車を運転してた人ですよ」

「え?マジっすか?よく見てますね」

「これでも護衛ですから。さ、着きました」

階段を登った先のドアを開けると先程とは違った駐車場で鍵に書いてるナンバーの車を見つけると弟村が驚いた

「すげぇ!GF-ER34じゃん!」

弟村が驚くのも無理はないのはその車は廃盤になった国産スポーツカーのセダンタイプでウィング着きだった

最高馬力200PS最大トルク26.0kg.m駆動形式はモデル違いのBNR34いわゆるGT-R34がアテーサETSを詰んだ4WDだがER34はFRでもバランスが良くできており隠れた名車だ

運転席に座りエンジンをかけるとけたたましいエンジン音が響き油圧計、水温計、ブーストメーターが反応ハンドルの下にはターボタイマーまで着いていた

「これ…どこで手に入れたんだ…社長は…クラッチが強化クラッチ…乗る前に見たけどタイヤかなりいいモノだ、このエンジン音…相当金がかかってる、これなら!名城さん!乗って!」

「あ、…はい」

弟村のテンションについていけずに大人しく助手席に座ると

「ちゃんと4点ベルトして!」

「は、はい!」

いつになく気合いが入った弟村に圧倒されおとなしくベルトをすると

ブォォォォォン!

ハンドルをめいっぱい切りエンジンを吹かしてサイドブレーキを解除、すると車スピンターンしそのまま駐車場を出て轟音を響かせながら走り去った


「この車ならどこでもあっという間に着きますよ、まずは社長から貰った住所に行きます!」

そう言った弟村の横顔は玩具を与えられた少年のようだった

「ねぇ弟村さん、やっぱり私警察署に…」

「バカ言わないでください、どうせ行ったって返してくれませんよ、そしたら名城さん力づくでも返して貰おうとするでしょ?余計に立場悪くなるからそれは絶対止めてください」

「…でも」

「大丈夫です、あの人は」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「痛いな!そんな事しないでも歩いて行けるよ!いちいち叩くなよ!」


「お前がいちいちうるせぇ事言うからだ!それに1人用なんて生意気言いやがって!さっさと入れ!」


ギギギィィィガチャン!


留置所の扉が閉まり鍵をかけられた


「なんだか悪い事したって実感が出てきたなぁ」

留置所には煎餅布団、アクリル板仕切りがあるトイレあるだけ


「クッサ!ちゃんと掃除しろよ…もう…まぁでもこんな所でもマシか…ねー!お巡りさーん!綺麗な布団出してよー!ねー!」


松田の声には誰も反応しなかった

返ってきた反応は他の留置所にいる者達だけ


「なんで新入りのアイツが1人用なんだ!」

「てめー!生意気な野郎だな!ぶっ殺してやる!こっちこいこらぁ!」


「鍵がかかっててどうやってそっち行けるのさ、まぁ後は…」

そういい煎餅布団を敷き

「なにこれ…シミが凄い…もう嫌だなぁ…」

ブツブツ言いながら布団を敷いて寝転んだ


(僕を閉じ込める…理由…恐らく小谷君と僕を何がなんでも遮断したいんだな…なら事が起きるのは…)


カツンカツンカツン…


「おら、飯だ」


鉄格子のスペースから乱雑に食事が渡され置き方が乱雑過ぎてスープが零れた

「僕はお客さんだよ?もてなすならちゃんともてなしてよ!あーあースープが」

「生意気いってんな!この犯罪者!」

「まだ僕は嫌疑の状態でーす、逮捕拘留されても有罪かどうかは送検して…」

「うるせぇ!」

そういい看守の警官は去っていった

「僕はそれなりに税金納めてるんたけどなぁこの仕打ちはいかがなもんかね…してもこれ…マッズそうだなぁ」

松田は食事の匂いを嗅ぎそのまま放置した


そのまま布団の上で考え事をしていたら食器を下げに来た警官に

「お前食わなかったのか、腹減ってないのか?」

「遠慮しておきまーす、僕が今食べたい物じゃあないんでねぇ…あ!UberEATSとか…」

相手にするのもアホらしいと感じたのか警官はすぐに去っていきその際

「もう消灯だ、電気消すぞ」

「えーーー!もう!うそー!」

少し経つと留置所の明かりが落とされ廊下の小電灯以外明かりがなくなった


「はぁ…こんな布団で寝なきゃならんのか…おやすみなさい…」





夜も更けて他の留置所の人間も寝静まった夜中


カツン…カツン…カツン…カツン…


留置所の廊下をゆっくり歩く音が松田の留置所の前で足音が止まり


ガチャン、ギィィィ


鍵を開け誰かが室内に侵入し服の内ポケットから布の紐のような物を構えた時…


「いらっしゃいませ〜お待ちしておりました〜」


松田が布団を勢いよく剥ぎ相手の顔に覆いかぶせ右顎に1発お見舞いし男の利き手に関節を決め相手を床にそのまま倒した

「もういいよー電気つけて!」

留置所内が明るくなり取調べをした女刑事2人が唖然と見ていた

「こりゃ…ホントに言う通りに…」

「ね?言った通りだろ?絶対僕を殺しにくるって、僕は食事に手をつけなかった、恐らくそれにも何か仕込んだんだろうよ。さて…君は誰かなぁ?」


松田が布団を剥ぐと


「副署長…?!」

関節を決められて床に押し付けられてる男を見て女刑事2人は唖然としていた

副署長と呼ばれた男は2人を見上げながら

「何を勘違いしてるんだ!私は…!」

「勘違い?何に勘違い?僕を殺して何か見返りあるの?それとも脅されたかな?荒瀬に」

副署長と呼ばれた男は「荒瀬」の名前を聞いたとたん顔が青ざめた

「…何故その名前を?!」

「おおかた君が降格したのも荒瀬を舐めてかかって金を払わなかったからだろう?馬鹿だなぁ〜」

「…てめぇ…それでも警察官かよ!」

刀を持った女刑事が詰め寄ったがもう1人の女刑事が間に体を入れて制止した

「やめなよ!なんで副署長がこんな事…」

「……荒瀬に…脅されて…今度は降格くらいじゃ済まないぞ、金を払わない奴は信用しないと言って…」

「だったら警察官なんて辞めちまえ!この面汚し!…ペッ!」

「その荒瀬ってのは何者なの?…まさかそいつが裏の社会のバランスをって奴?!」

「だよ、ただの政治ゴロが裏社会をめちゃくちゃにするついでかなんかで僕を狙っててね〜それが皆目見当がつかない、ていうかこいつの関節そろそろ離していい?手錠かけてよ」

スカートスーツの女刑事が手錠を取り出し腕時計を見ながら

「午後10時17分、殺人未遂で現行犯逮捕。でもどこに拘留…」


「そいつの身柄は俺が本庁に渡す」


気づくと夜なのにサングラスにグレーのスーツ男が立っていた


「「部長!どうして」」

2人がハモった


「お前らが何かしでかすくらいお見通しだ、副署長に関しては俺も疑ってたからな、知り合いの内務調査官に引き渡す」

「話の途中で悪いんだけど…1本電話をさせてくれない?このとおり!」

「そんな要望聞けるわけ…」

スカートスーツの女刑事が喋り終わる前に部長と呼ばれた男が間に入った

「その電話をしたら今の点が繋がるのか?」

「間違いない、僕が信頼している人だ、その人なら何故こんな事が起きてるかおそらく知ってる」

部長が松田の目を直視し

「こいつに電話させてやれ」

「いいんですか?!拘留中の容疑者ですよ?!」

「構わん!形はどうあれ今の所警察には協力的だ、我々より何かを知り得る可能性がある。その代わり俺らの前で電話しろ」

「話がわかる人大好き!」

「ほら、ついてこい、お前らもだ!目を離すと何するかわからんから!」



部長と呼ばれた男について行くと男の個室に案内された


「ちょっと!もう少し優し扱ってよ!さてさて…じゃ電話をかけさせてもらうね」


「てめー妙なこと言うなよ!怪しい事言ったらたたっ斬るからな!」

髪を結んだ女刑事が腰に下げた刀に手をかけた

「やめないか!松田、手短にな」

「はいはい……もっしもーし!警察署から生中継でー………はい…ごめんごめん、うちの2人はどうした?………うん…ありがとう…え?!ホントに?!マズイな…状況わかったよ。これで繋がった!いつもありがとうね!このお礼はデー……切れちゃった…」

「何かわかったのか?!」

「えーーどうしよう…言おうか…」

女刑事が刀を抜き相棒と思われる女刑事も拳銃を松田に向けた

「素直に吐け、このクソ野郎」

「ちょっと!これ!怖いよ!部長さ…」

部長と呼んだ男の方を見るとショットガンを松田に構えていた

「なんなんだよ!ここはマフィアやヤクザじゃないだろ!?」

「余計なお喋りはやめろ」

「わかったわかった!とんでもない事が起きるよ?」

両手を上げながら松田が言った

「とんでもない事って何?」

「…小谷君が別宅で今日殺されるかもしれない」

「小谷…ってぇあの小谷か?!」

「そうだよ、今からで間に合うか…でも僕は小谷君を助けたい、その為には無茶だってするつもりだ」

「警察官3人相手にどんな無茶すんだよ」

刀を松田の首元に向けて言いショットガンを構えた男はフォアエンドを引き装填して向けた

「力づくでも…やる。3人とも…殺気がこもってないのは分かってる、こんな事してる場合じゃない、君らにとっては敵かもしれないが小谷君は僕にとって友人なんだ。彼に死んで欲しくない。それに小谷君が今死んだらまた世の中は荒れるよ?そしたら一般人に被害が出る。それでもいいの?」

「小谷の救出は警察が…」

「どうせ荒瀬が手を回してるよ、それに縦割りの君たちが荒くれ者の小谷君の為に何かする理由なんてないでしょ?」

「荒瀬を緊急手配をする」

「君達は分かってないね、裏稼業の人間はどう転んでも良いようにしてる、おそらく小谷襲撃に荒瀬は参加するが全てを見届ける前に消えてその後処理をするだろうね、僕ならそうするよ。てかそろそろお喋り止めていい?君らがやらないなら僕…」

「お前ら、こいつ連れて現場に行け」

スーツの男はショットガンを下ろしながら刑事2人に命令した

「え?いいんですか?!」

「俺は何も見てない、いいか?ここに武器保管庫の鍵がある、俺は副署長を本庁まで引渡しに行かなきゃならん。ちゃんとこいつにも防弾チョッキくらい着させろ、いいな」

そう言うと部屋から男は出ていった


「話がわかる上司さんだねぇ〜ほら!急ぐよ!早く早く!」

「何お前が仕切ってんだ!」

「そういうのいいから!急ごうよ!!」


そういい3人も急ぎ足で部屋を後にした



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


渡された紙の住所はマンションで指定の部屋に入るとそこは変哲もない普通の部屋だった


「社長はなんでこんな所に俺たちを?」

弟村が部屋の家具を調べ名城はキッチン周りを調べた

「このクローゼット開かない…なんで?」

「キッチン周りも調べましたがしばらくは生活できるくらい物資はあります、ここで安全を確保しろって事ですかね…あれ?これなんでしょう?」

給湯操作スイッチの横に液晶画面があり画面には

「シモンニンショウカクニン」

と表示されていた

「指紋て…俺らのっすかね?」

名城は黙って頷き2人は恐る恐る画面に右手親指を押し付けた

すると置いてあった液晶画面に電源が入り松田が映し出された

「え?社長?」


ーゴホン!やぁ!2人ともお疲れ様!これを見てるって事は僕に何かがあったったて事だ、涼木ちゃん所に行って車もあるよね?それは弟村君にあげるよ、あの車は絶対気に入ると思ってあれを選んだ、椿ちゃんには…ー


画面の松田が時計を見ると開かなかったクローゼットが開き中から黒のチェストリグと、投げナイフ、小型ナイフ、日本刀、プレートキャリア、ベネリM3カスタムやMCX、コルトガバメントMEUピストル、サプレッサーとドットサイトの着いたM9が現れた


「え?え?どういう…」


ー今戸惑ってるよね?椿ちゃんには1番似合いそうな獲物を選んだ、刀以外は適当に見繕ったんだけど刀は鞘から抜いてみるといい…そのままだと刃こぼれしにくいというより切れない刀、だけど刀の柄のスイッチを入れてごらん?超振動ブレードだ、これはどんな物でもぶった切れる。実はこれ試作品を無理言って譲って貰ってね、でも実用実験はまだで稼働時間は短いらしいの。いつも護身用特殊警棒使ってるけど使いにくいそうにしてるの知ってたからこれも一式持っていくといい、振動させない状態なら刃の無い刀でも銃弾は弾けるくらい硬度はある。銃器類は弟村君向けね、それとカバンがあるだろ?その中にパスポート…流石に日本製のは偽造できないから他の国のだけど使ってね、それと…君達の名義で作った口座に退職金いれといたからぜーんぶあげる、だから君らの自由にしていいよ。僕が君達といないという事は僕自身の責任だ、僕に何かあっても君達はなんの責任も感じることは無いからね。逆に君達2人にはいくら礼を言っても足りないよ、こんな僕を信用してくれてありがとう、良くしてくれて本当ありがとう。これからは君達自身の人生を好きに生きるんだ、念の為に武器も用意した、でもこれは身を守る為に使って欲しい…けど僕の願いは君達が二度とこんなもん使わない人生を送ってくれること切に願うよ、じゃあね!バイバイ!ー


名城が刀を抜くと

「綺麗…本当に切れない、柄の所の…」

スイッチを押すと刀から振動音が聞こえた

試しに近くにあったテーブルを名城が切るとテーブルはまるで豆腐のように切れた

「…凄い…こんなものを」

アタッシュケースを弟村が確認すると

「名城さん…これ…」

2人の名義を確認するととんでもない額が振り込まれていた

「あの人…何度も自分を大切にしてって言ったのに…どうして…どうして私達にばかり…」

「…俺達護衛失格ですね…守ってるつもりがこうやって社長に守られてたのは俺達だ…このままじゃ俺引き下がれないですよ」

「当たり前です!絶対に…絶対に荒瀬を…刺し違えても!」


パチン!

弟村が名城を叩いた


「刺し違えるなんて社長が1番嫌がる事だろう?!あんたがそんな事したら誰が1番悲しむんだ!え?…お願いですからそんな事言わないで下さいよ!」

叩かれた頬を抑えながら

「…弟村さんはやっぱり社長に似てきましたね。でも…」


ドゴォ


「ぐはぁ…!」

名城の掌底が弟村入った

「1発は1発です、これでおあいこですね。さて!急ぎましょう!」

「…ちょっとは加減…待っ…動け…」

2人は装備を整え表の車に向かった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜静岡別宅〜


「なんだよ徳宮〜せっかくだから泊まってけよ」

「そうはいかないよ、小谷の兄貴」

まだ新築の香りがする小谷の広い別邸の玄関で小谷と徳宮が話していた

「住民運動なんててめぇの部下に任せておけよ」

「ゆっくりしたいのは山々なんだけど俺が不在だとまだまだでさ、ご馳走になりました!また伺いますよ」

「なんだよ…啓ちゃんとも連絡つかねぇし…つまんねぇなぁ」

「啓ちゃん?」

「あぁ徳宮は会ったことねぇか…そのうち会わせるよ、コイツとはツテを作っておいても損はねぇからな」

「へぇ〜まぁいつか会わせて下さいよ」

「おぅ、明莉!」

隅にいた明莉が小谷の傍に来た

「徳宮を門まで送れ失礼のないようにな!」

「いいよ、自分で帰れるから」

「うるせぇ、明莉分かってるな!」

「はい、徳宮さんお送りします」

「いちいちオーバーなんだよ、兄貴は。わかったよ、明莉さんよろしく」

徳宮がジャケットを着ながら答え

「今日は色々ありがとうございました」

玄関から出た徳宮は自身の車へ乗る時に明莉も車に乗ったのを疑問に思い

「明莉さん門までですからいいすよ」

徳宮がそう言うと

「すみません、私も少しコンビニ行きたくて…先導しますね」

と明莉が車に乗りながら答えた



小谷は寝室へ向かう途中飲み足りなかったのか自身が来客へのもてなしのために作ったBARスペースへ向かう途中、中庭を見ると護衛が数名いたが特に気にもせずスペースの部屋に入りカウンターを模した席でスコッチウイスキーのロック用意しガウンを羽織った小谷が窓際で月を見ながら酒を飲んだ


「結局1人って事か…フッ…」


















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