第3話

荒瀬との密談から数日後、明莉は小谷に与えられた簡単な仕事こなす毎日を過ごしていた


「ウチの社員もだいぶ減ったわね」

「…すみません…俺の監督不行で」

「別に斉木の責任なんかじゃないわ、落ち目の女になんてって見限ったんでしょ…」

「例の話、ホントに…」

「こんな所で喋る事じゃないわ、誰が…」


ーおい!なんだよあんた!勝手に入られちゃー


明莉と斉木がいる部屋の外から部下達が揉めている声が聞こえたので明莉は斉木に目で指示を出し斉木は黙って会釈し部屋を出ながら声を出した

「何騒い…え?おい!お前ら離…ちょっと!勝手に入ら…」

斉木の戸惑う声を不思議に思った明莉が部屋のドアを見ると同時にドアが開くと

「やっほ!急にごめんね!お邪魔するよ〜」

松田と名城が明莉の部屋に入ってきた

「なんですかいきなり松田さん、お約束も無しに」

「ちょっと直に顔を合わせて話がしたくてね、忙しかったかな?」

「別に…まぁお掛けになってください、斉木、お茶お出しして」

「お構いなく、要件だけ伝えたら帰るよ」

そういいソファに松田は腰掛けその後ろに名城が立った

「ご要件とは?松田さん」

「このソファいいね〜座り心地がいいよ!そうそうこの前顔合わせた時から気になっててね、顔の傷は平気かい?」

ソファの座り心地を確かめながら松田が言った

「まぁ…そんな大した傷でもないですよ」

「僕からも小谷君に言ったんだよ、バイオレンスな事やめろって、今度またキツく言っておくね」

明莉は流行りのゼロニコチンの電子タバコを吸いながら

「フー…それはどうも、で?要件ってそれだけでしょうか?ご存知かと思われますが私達は羽村の…」

明莉が言い終わる前に松田が口を挟んだ

「…今の明莉君の状況はちゃんと改善される、だから今は与えられた仕事をきっちり仕上げて耐えるんだ」

話を聞いていた斉木は必死で動揺を隠したが

明莉も動揺したのか咳き込んだ

「なんです?いきなり押しかけて訳の分からない事を」

「君の仕事を調べさせて貰ったよ、小谷君が目をかける理由がよく分かる。でも仕方なしの武力衝突もあったね、それは君が気に病む必要はないんだ」

「貴方に何がわかるのかしら?」

「わかるよ、自分の意思とは関係なく生殺与奪の権利をその場で決めなきゃならない辛さはね、でも君はそれを回避しようしたじゃないか、それで相手が乗らなきゃ仕方ないよ。こんな仕事だ割り切らなきゃね、その件で小谷君を恨むのはお門違いだ。」

「…別に私は小谷さんに恨みなんて」

「君は聖人君子か何かかい?じゃなきゃこの状況で恨まないなんて頭のネジ飛んでるよ」

「…私はどこかで色々無くしたんです」

「かもね、僕もとっくの昔に無くしちゃったよ、でも今君の状況に何かを唆す奴がいても耳を貸しちゃいけない、君は君の仕事を全うするんだ、いいね」

「私を唆すと言うなら今の貴方も一緒だわ」

「僕は違うよ、唆してない諭してるんだ」

「見解の相違ね」

「その落ち着きよう…もう覚悟は決まってるのかな?」

松田の一言に明莉と斉木が反応した

明莉は机の下に隠してある9mm拳銃に手かけ斉木が懐に手を入れた時

「聡明な明莉君らしくない短絡的行動は慎んだ方がオススメだよ」

松田が口を開くと同時に名城は斉木の腕を掴み関節技を決めながら床に転ばせ懐の銃を奪いマガジンを抜きチャンバー内をチェック後スライドを瞬時に分解し床に投げた

「護衛なら直ぐ撃てるようになさい、装填してない銃なんておもちゃみたいなものですから、そんな事もできないならオートマチック銃よりリボルバーの方をオススメしますよ」

と斉木に言い放った名城の目は殺気がこもった冷たい目だった

明莉も斉木も何が起きたか状況を掴めていない本当に瞬きする瞬間の出来事

「ね?僕の言うことに間違いはないよ」

明莉はそのまま銃を抜き松田に向けた

「お前は何を知ってる?!」

「何も?君…右腕も怪我してるね?それで照準ブレない?君は知らないと思うけど向かい合った時の拳銃って相手の目、肩、指を見てると何となくだけど狙いが分かるんだ。よしんば撃てたとしても僕か椿ちゃんどちらかだね、断言するよ、この場で君らじゃ僕らに勝てない」

「…私と斉木を殺しても外には社員がいるわ、無事にどうやってこのビルから出るの?」

「ご心配なく、経験の差だよ〜と言っても君達には伝わらないと思うけどね…今日は椿ちゃんと弟村君とで美味しいご飯を食べたいからちゃんと帰るよ」

暫しの静寂…明莉と松田が見合っていたが明莉は向けていた銃を机に置いた

「…斉木の事、起こしてあげて」

松田が目で名城に合図をして斉木を起こした

「伝えたからね、じゃ僕は帰るよ。何かあったら相談乗るからいつでも連絡してね。椿ちゃん帰るよ〜」

そういい松田が先に部屋から出て名城が会釈をし2人は出ていった

「明莉さん!なんでアイツが!」

斉木の問いかけに反応せず明莉は携帯を取り出した


「もしもし荒瀬さん?今松田が来たわ」


ーもう掴んできましたか…さすがというかなんて言うかー


「ノーヒントで私にたどり着いたとは考えられないわ、どこから…」


ーいやいやここも彼の凄い所でしてね、頭がよく回るんですよ。私にも連絡がありましたが私と明莉さんの関係は全く掴んでないですねー


「事を成す前に…貴方が持ってきた話なのにお粗末ですね、私は…」


ー私は彼をよく知っていてね、確実な証拠が無い状態で小谷に何かを報告する可能性はゼロです、確証もなくそんな事を報告したら小谷から松田に制裁され自身の信用も無くします、それにね?明莉さんはもう戻れないですよ?…「そうね、やるなら少数がいいわ、躊躇しない連中を小谷が別宅に泊まる日にぶつける、日程は探ってみるわ」…ー


「録音ね…ならこんなのどう?ー「小谷さんを殺すしかない」ーこれで私と貴方は立場は同等、貴方が私を小谷に売るならこれを聞かせるわ、地獄に行くなら貴方も道連れよ」


ーハッハッハ!合格です、明莉さん!貴方は素晴らしい。ここで焦って日和るような人間なら価値はない、貴方は交渉と言うものキチンと理解している。…でこれは共同作戦の了承として受け取っていいのかな?ー


「もう各勢力の指示なんて要らない、執行部なんて所詮勝った方、強い方になびく連中よ」


ーやはり貴女は器が違う、仰る通り事を済ませてしまえばどうとでもなりますね。ではこの…ー



「…最後に2つ聞かせて」


ーなんです?ー


「私を神輿に選んだ本当の理由」


ー神輿だなんて…ー


「建前はいいわ」


ー私、馬鹿と無能が嫌いなんです。一緒の空気を吸うのも嫌なんです、貴方は1を言えば10理解する。パートナーはそういう方でないとー


「それだけ?」


ーえぇご不満ですか?ー



「そういう事にしておく…ねぇ?松田をどう孤立させるの?」


ーもう考えています、生半可な連中だとダメなので…孤立させようも護衛の2人がかなりの強者ですから力技より公的な物で孤立させますよー


「護衛の件はもっと早くに言って欲しかったわ…分かった、そっちは任せる。襲撃メンバーはもう選別も終わってる、宿泊日も分かったわ」


ーさすがですね、ではこちらも松田を孤立させます、宿泊日の送信お願い致しますね…それではー


電話を切った明莉に右腕を抑えながら不安な顔をした斉木が尋ねた

「明莉さん…メンバー集めなんて…ホントにやるんですか?!」

「やりたくなかったら貴方は辞めていいわ」

「えぇ?!」

「気乗りしない奴をメンバーに入れる気は無いの!覚悟が無いなら今すぐ出ていきなさい!」

明莉は立ち上がり斉木の目の前に立って隠していた右目の傷を見せながら詰め寄った

「俺は明莉さんの下についた時から死ぬまでお供しますと決めています!やるなら俺が小谷をやります!やってやりますよ!」

「…ありがとう、斉木」

「で?メンバーはウチのから?」

「どこから漏れるかわからないからウチのからなんて貴方以外いらない…それにプロが欲しいのから、「確実」処理して欲しいから元国防軍や傭兵のフリーランス達を選んだわ、もちろん目標は伝えてない、ただの「処理する仕事」として集めたの。くれぐれも他の社員の前で口にしないで」

「分かりました」

そう一礼し斉木は部屋を後にした


「もしもし、明莉です。小谷さんに繋いでくれる?………お疲れ様です明莉です、羽村さん援護のメンバーは準備完了です、いつ出発されますか?」




ーサイは振られた…もう戻れない…ー

明莉は飾ってある写真に目をやった

その写真には小谷が明莉と肩を組みその周りに柴山、丹野、滝、それと新米の羽村達が酒を酌み交わす姿が写っていた




〜都内某所〜


明莉との電話を切った荒瀬の足元には男性3人遺体が転がっていた


「平和な日本の裏社会で偉そうにしてる奴らが…1度死んだ男を舐めるなよ、ゴミ共が…」


ブーブーブー


「ん?なんだよ…またか、もしもし荒瀬です。なんですかまた、話はついたでしょう?……別に貴方が協力しなければそれで結構です、貴方のやってきた事を上の方々や新聞社にリークするだけです、ついでに素敵なご趣味の恥ずかしい写真を流すのも良いですね…そうなると次の転職先を探す事に………えぇ……それは必ず…謝礼も振込ますよ……はい?…アナタは何か勘違いをされている、拒否する権利なんてないんですよ?…えぇ…それで結構です…それでは…」


ーこれであのニヤケ面も…ー


これからの事を想像する荒瀬の口元は少し笑っていた…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クライトンベイホテル1638号室では寝癖も直さずにテレビをみながら遅い朝食を食べていた

「ねぇ?きみぃふぁちも…」

「口に物を入れて喋らないでください」

PCを叩き画面を見ながら名城が叱った

「ゴクン、君たちも食べない?」

「俺と名城さんはもう済ませてますから」

「誰かさんは特ッッッ別時間にルーズですからね、待っていたら私達2人共も餓死してしまいます」

「普通さぁ…僕が起…」

「待ちませんよ、ねぇ?名城さん。社長の事待ってたら俺達いつ飯にありつけるか謎ですもんね」

弟村が新聞を読みながら答えた

「…ったく…これじゃぁ…ん?」

ふと松田がテレビのニュースに反応した


ー昨日未明、佐々原の飲食店が複数入る雑居ビルで中国籍の男3人の遺体が発見されました、3人とも死後2.3日は経っていて外傷が目立つ事から警察は他殺として捜査を開始…ー


「これ、この前僕達を監視してた奴じゃない?江さんにバレたのかな?僕の名前出せって言ったのに。椿ちゃん江さんに電話繋いでくれる?」

「少々お待ちを」

名城が端末を取り出し通話を繋げた

「もしもしこんにちは、Peace Cpの名城です。ウチの松田が江さんに至急お繋ぎ頂きたくご連絡を……はい…はい………もしもし名城です、いつもお世話に……えぇ…松田に変わります」

端末を松田に手渡した

「もしもし江さん?おはよう。ニュース見たよ、どうしたん?これ?え?本当に………うん……うん……うん…そうなんだ……いやいや……わかったよ。なんかあったらまた連絡するね。あ!くれぐれもバイオレンスな事はダメ!次から取引しないよ!はーい、じゃねぇ」

電話を切って名城に返し受け取りながら名 名城が尋ねた

「江さんは何と?」

「この3人ともあの日以来連絡つかなかったんだって、外注があった事もさっき知ったみたい」

「なんだか不気味ですね…名城さんの言う通りホテルを変えた方がいいんじゃないですか?」

「君まで何を」

「いや、もうこれは…」


ルルルルルルル


部屋の電話が鳴り名城が電話を取った


「もしもし…え?!…どういう…」

「名城さんどうしたんです?」

受話器の話口を抑えながら名城が

「警察を名乗る女性2人組がこちらの部屋に来ると」


ピンポーンピンピンピンポーン


インターフォンを連打されるとドアの外から女の声で


「おい!松田啓介!ここ開けろ!じゃねぇとドアぶっ壊すぞ!」


名城がドアを開けると


「退け!邪魔だ!」

「ちょっと!なんですか?!いきなり!」

短い日本刀を腰にぶら下げ細身のパンツにライダージャケットで髪を縛った女とスカートスーツの女2人組が名城、弟村の制止を振り切り部屋に入ってきた

「松田啓介!!佐々原の事件知ってんな?被害者とお前らが揉めてたって証言があった、大人しく署に来い!」

髪を縛った女刑事がバッチを見せながら松田に言い

「大人しく言ってるウチがおすすめよ」

スカートスーツの女が腰のホルスターに手を掛けながら言った

「ちょっと!なんだあんた達!被疑者としてか?それとも関係者として「任意」か?」

弟村が割って入った

「うるせぇな、外野は引っ込んでろ!」

「めちゃくちゃやられて黙ってられるかよ!」

「そうですよ、礼状くらい見せたらどうです?!」

名城も弟村と並び話に加わった

「あなた達には聞いてないの、そこの社長さんに用があるだけ」

「目撃証言だけなら断っ…」

バッチを見せた女刑事が刀に手をかけながら

「ガタガタ言うなら力づくでも来てもらうだけだ」

と言うと刀を抜いた、と同時に名城もナイフを抜き刀と合わせ横にいた女刑事も腰から銃を抜くと弟村も腰のG17を抜いて4人が武器を合わせる状態になった

「昨日のお酒が抜けてないから頭痛いの、だから野蛮な事はやめよぅ」

「てめぇら許可証もってんのか?」

「許可証はある、日本の警察ってのは随分なんだな?」

「…」


パチン!


手を叩く音が松田から発せられた


「ストーーーップ!バイオレンスな事はダメよ〜、僕が君たちの所に行けば良いわけね?いいよ、行くよ。だからみんな物騒なもんしまってよ」

暫しの静寂

「お前らから降ろせよ」

「向けられたらまま降ろせるか、クソ刑事」

「ねー私腕が疲れたー!」

「そっちこそ降ろしなさい」


「椿ちゃん、弟村君、武器を降ろすんだ、これは社長命令!それにこの2人はそこそこなじゃじゃ馬だ、理屈なんて通用しない」

不本意なオーラを纏いながら名城、弟村が武器をしまうと刑事2人も武器をしまった

「アタシら知ってるのか松田?だったら妙な真似すんなよ」

「しないよ、2人共すぐに帰るから心配しないでね」


そう言うと松田は弟村とすれ違う時に何かを弟村のズボンのポケットに入れた

「じゃあ行こうか、警察ミステリツアー」

「黙って歩け!」

バチン!

「痛!」

刀の刑事が松田の後頭部を叩いた

「乱暴な事はしないで!!」

名城が声を張って言ったがなんのアクションもせずに女刑事達は松田を連れ出した時松田のポケットから携帯が落ちた、それと同時によろけたフリをして自ら携帯を踏みつけた

「ちょっと!わざとそんな事やんないでよ!」

「ごめんごめ…」


バタン


ドアが閉まると弟村がポケットに何かがあるのに気づいた

「ん?USB?」

「いつの間に…」

「探ってみましょう、名城さんPCお願いします」

弟村に催促され名城個人のPCに繋いだが認識しなかった

「認識エラー…ってことは社長個人の端末って事ですね…解除ナンバーは…」

その場から離れ、名城が寝室から松田個人のPCを持ち出しUSBを繋ごうとしたするとUSBに小さな文字の羅列が記してあったのを見つけた

「それだ!」

弟村が羅列を入力するとロックが解除されUSBが認識されるとファイルが表示されそのひとつは「緊急」と書かれてあった

弟村がクリックして開くと



ーこれを見てるって事は僕が拘束、もしくは君らと連絡が取れなくなる状態になってるって事。なので緊急にここに記してある事を直ぐに実行してちょーだい

・僕の顧客、取引に関する書類の破棄

・椿ちゃんのPC、書類、手帳破棄

・今いる場所から直ぐ出て安全確保後に

080-××〇〇-〇×〇□に電話する

繋がったら合言葉は

「君の瞳に恋してる」

で通じる手筈になってる(この電話は弟村君の役目)

・報道されない限りは取引相手に僕の不在は伝えない


これを直ぐに実行してね!頼んだよー


松田 啓介


「名城さんすぐに取り掛かりましょう!」

「私は諸々を破棄後に小谷さんに連絡…でも本当に捨てていいものか…私…」

「大丈夫です!あの社長の事だ、どうせある程度覚えてるだろうから問題ないっすよ」

「…わかりました!直ぐに!」

名城は手帳や書類をシュレッターにかけ始めた

「俺は……ん?まだ先があるぞ?」

弟村が画面をスクロールしていくと続きが表示された




ーさすが!感のいい弟村君!素晴らしい!ブラボー!!イイコイイコゝ(*´ ˘`*)~♬︎

ゴホン!君なら最後まで読んでくれる信じてた。

僕は君らから逃げる事はあっても不意な逮捕、拘留、監禁みたいな事になった場合、椿ちゃんは恐らく少し不安定になり無理矢理僕を救出しようとする、それこそ警察だろうが軍隊だろうがテロリストだろうがね。彼女にはそれが可能だが絶対にそれはさせないでくれ

いつも言ってるけど彼女にも君にも無駄な殺しなんて僕はさせたくない、自分の始末は自分でつける、だから弟村君には名城君を頼むよ

君が彼女コントロールするんだ、いいね!

あと無駄な推察や推理は絶対にするな、僕から連絡があるまで大人しくしてるんだよ!




はい!読んだね?この画面にくると10秒後にこのPCのデータは全て破棄されるよ!

はい!離れて!ー


「どういう…」

弟村が不思議がっているとPCから煙が上がった

「なんだぁ?!」


ボンッ!


SSDの部分が破裂しPCの画面が消えた


「あっぶねーな!あの野郎!」

「弟村さん今のは?!」

「あ、何でもねぇっす。処理終わりました?」

「えぇ!あとは支度して出るだけです、早く出ましょう!」

そう言うと名城は長期滞在用に使ういつもの革トランクを手に持ち弟村も自分が管理している武器、弾薬が入っている鞄を持ってジャケットを羽織り部屋を後にしエレベーターで地下駐車場に向かい先頭の名城がストップの合図をした

「居ますか?」

弟村の問に名城が黙って頷き

「6人…か…弟村さん、車まで1人で行って貰えますか?」

弟村が黙って頷き

「1…2…3でお願いします」

名城が案を出した

「3は同時?それとも1呼吸置いてから?」

「3と同時!社長みたいな事…」

2人がカウントし3のタイミングで早足で弟村がクルマに向かうと弟村を追いかける形で物陰から数人の男が現れた

少し離れた男に後ろから名城が絞め技を駆使して落とすと

「なんだクソアマ!」

武器を抜こうとしてる男に即座に間合いを詰め顎に掌底を食らわしそのまま投げ技で処理、その騒動に気がついた他の4人が弟村の後を追うのを止め名城にターゲットを絞り名城に向かってくると今度は弟村が離れている男を絞め技で気絶させそれに気づいた男にテーザー銃を撃ち戦闘不能に、あっという間に追って達は2人になってしまった

「クソ!逃げるぞ!」

逃げようととしたそれぞれを弟村、名城が追いかけ名城は首もとへの手刀そのまま首を持ち膝蹴りで鳩尾に攻撃後に顎への掌底でフィニッシュ

弟村は男の服を後ろから掴み全力で引き戻し男を転倒させて物陰に引っ張った


「世話焼かせんなよ、ったく」

「誰の差し金?」

「……」

「喋らない気か…名城さんどうします?」

名城が無言で男の左足を踵で踏んだ


ゴキッ


足の脛骨が折れる音が響く


「ギャッ!」

叫ぶ前に弟村が男の口を塞ぎながら

「このまま喋らなきゃあと214本の骨を全部折るぞ?」

「次どこにしましょうか?弟村さん?」

「そうっすね〜腕いきま…」

「頼まれたんだよ!」

「左腕狙うので弟村さんしっかり抑えててくださいね」

「誰かは知らねぇ!死なない程度に痛めつけて連れてこいって頼まれただけだ!」

「どこに連れてく気だったんだ?それに誰か知らないのになんで受けたんだよ、名城さん左腕やっちゃって」

「金!金!金が良かったんだよ!金さえ貰えりゃ俺らはなんだって良かったんだ、場所は言われた所に連れて行けって言われただけだ!!」

「使えねぇな〜それしか知らねぇのか?」

そう言うと弟村は名城にアイコンタクトをした、と同時に男の顎を掠めるような鮮やかな右掌底を食らわすと男は気を失いその男がの衣類から携帯を弟村は抜き取った

「こいつら警察でもないとなると…とにかく車でここを出ましょう」

「最近弟村さんは誰かさんに似てきましたね」

「え?誰に?」

「容赦ない所とか社長そっくり」

少し笑いながら名城が言った

「俺はあんなに変人じゃないっすよ、ほら?行きますよ!乗って乗って 」

エンジンをかけて車を発信、ホテルを出て尾行がないか2人で確認後に弟村が例の番号に電話をかけた、2回の呼出音後に女が出た


「もしもし、俺は…」


ー合言葉は?ー


「え?」


ー合言葉?言わないとこの電話切って二度と連絡できないようにするよ?ー


「君…ゴホン!君のひ、ひ、瞳にこ、こ、こ、恋…してる!これでいいか?!」


ー間開きすぎ、合言葉の意味無いから続けてちゃんと言って、じゃないと切るよー


「君の瞳に恋してる!これでいいか?!」


ーアハハハハ!合格、そっちの端末に位置情報を送るからそこで待ってる、受付で「涼木に会いたい」って言えばいいから。あ!もうこの電話処分するからね。じゃあまたー


電話を切ると

「どういう合言葉なんだよ!あのクソ野郎!」

「そういう人ですから、データ来ました?ほら?行きますよ」

「あぁもう!位置はだいたい分かりました、車出しますよ!」


顔を真っ赤にした弟村は車を急発進させた





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