第48話 初任務(4)

 しかし、初回の見回りから、あんな至近距離で吸血鬼が出るなんて、本当についていない。相方が手練れの黒砂さんだったからよかったものの、自分1人の時にあんなのが出たらどうすればいいのだろう。たぶん、さっきの男の子…ヤエちゃんの弟君も、私も、なすすべもなく吸血鬼に喉笛を噛み裂かれ、あの世に旅立っていたことだろう。今後の見回りも毎回同じようなことがあり、吸血鬼とかかわらないといけないと思うとぞっとする。そのことを黒砂さんにこぼすと、そう言っている割には、消毒機材を持って襲撃現場に走る姿はなかなか様になっていたけどね、島村さんならきっと大丈夫だよとのことだった。うう、そんなことで褒められてもうれしくない。わたしもとうとう消毒機材やら麻酔銃やらが似合うような物騒な世界の住人になりきってしまったのだろうか。生き残りたいのはやまやまだけど、多感で傷つきやすい14歳の乙女としては、あまりたくましくなりすぎてもなぁ…と思う。

 黒砂さんは私の困惑顔というかビミョーな表情が面白いのか、先ほどからうつむき加減になってくすくす笑っている。大人はよくわからないところでいつまでも笑っているから、すごく嫌だ。それにしても私、そんな笑われるほど変な顔してるかな…。制服のポケットから手鏡を出してみると、確かに、八の字眉の、なかなか間抜けな表情になっていたので、普通にへこむ。しかも、鼻の頭がニキビで赤くなってるし…これじゃあ、赤鼻のトナカイだよ。まあ、あこがれの人に笑顔になってもらえたから、とりあえずはそれでよしとするか。

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