第28話 警告
おかしな夢を見た。月も星もない真っ暗な夜、中世ヨーロッパの古城を思わせる、石造りの塔の屋上に、提灯を持って豪華な着物を着た芸者風の女性が一人たたずんでいた。塔の周りはお堀の水で囲まれており、そのさらに外側には深い森があって、遠くには高い山脈が見えた。女の人は山の方を見て何やら思案顔だったが、やがて意を決したように提灯を床に置くと、1匹の大きなコウモリに姿を変え、暗い夜空へと飛び去って行った。
目が覚めると、まだ夜中だった。同じ部屋で寝ているヤエちゃんもなかなか寝付けないらしく、後ろでもそもそと布団の動く音がした。私たちが寝室として使っている面会室は、監獄時代の名残をよく残している部屋だった。慣れないうちは眠れないだろうなと思う。特に、部屋の奥と手前を隔てるアクリル板のパーテーションが生々しい。いつ容疑者と弁護士が入ってきて裁判の打ち合わせを始めてもおかしくない雰囲気だった。
とにかく寝る場所がもっと生々しい地下牢や取調室じゃなくてよかったなとつまらないことを考えていると、私のそばを離れていくヤエちゃんの足音が聞こえ、背中の側でドアの閉まる音がした。やっぱり落ち着かないのだなと心配になったが、たぶん行く先はトイレか、飲み物のある給湯室だろうと思ったので、特に後を追うことはせず、そのまま寝てしまった。
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