第11話 暴徒襲来(2)

 ウィルさんは腰に下げているポケットラジオのような機械を耳に当て、本社との通信を開始する。


「こちら第一営業所。緊急事態発生。鉄パイプと松明、石つぶてで武装した10人組が敷地内に侵入。門のカギをダイナマイトで破壊している。他にも爆弾を所持している可能性あり」


 ウィルさんが連絡している途中で、上のモニターに黒砂さんの姿が現れる。先ほど持っていた刺又はすでに見当たらず、玄関の前でバズーカを構えている。ちょっと待って、まだ相手はドアというか門を壊しただけなのに、いきなりそんなあぶないものをぶっ放しちゃうの…。しかし、門から敷地内へとわっと押し寄せてきた盗賊団の人々はひるむことなく、黒砂さんの待ち構える玄関へと突っ走っていく。

 ここで本社への連絡が終了。通話を終えたウィルさんは私にここで待っているように伝え、階段を上へ登って行った。どうやら加勢するつもりらしい。画面の中では黒砂さんが引き金を引いている。出てきたのは煙でも銃弾でもなく、漁業に使うような巨大な網だった。走ってきた集団の先頭にいる人たちは網に突っ込まないようにととっさに減速したが、後ろの人たちがそれに追い付かずつんのめってしまい、後ろから順にバタバタと将棋倒しに転び、前の人は後ろの人の下敷きになった。その上に容赦なく網が降ってきて、うつぶせのまま身動きが取れなくなった人たちに覆いかぶさる。盗賊団はすぐに起き上がろうとするが、地面に固定された網と、自分の上に倒れた後ろの人の体重が邪魔でなかなか脱出できない。ぼやぼやしているうちにウィルさんも出てきて、導線のついた青いソフトボール大の玉を盗賊団に向かって投げつける。


―よっしゃあ、これでとどめだぁッ!

 

 と、ウィルさんが叫んだかどうかはわからないが、口をパクパク動かしていたので何か言っていたのは確かだ。彼の手を離れた玉は見事に網の下でもがいている人たちに命中し、破裂して青白い煙を放出した。煙が晴れると網の下の人々はみな目を閉じて動かなくなっていた。苦しんでいる様子は見られなかったので毒ガスではないのだろう。火傷など目立った外傷もないので爆弾でもなさそうだ。煙玉の正体がただの麻酔であることを祈りながらウィルさんたちが降りてくるのを待つ。20分ほどして本社の護送車が着いたときにはすでに勝敗は決していた。車から降りてきた警備服姿の人々は、警棒と、機動隊が使うような透明な盾を持っていたが、それらの武器を使う必要はなかった。ただ淡々と事後処理をこなしていく。網を外しながら中にいる盗賊を一人ずつ立たせ、連行していくのだ。1人の賊につき2人の警備員がついて両脇を固め、護送車に向かって引き立てていくという要領で。仲間が来てくれたからもう大丈夫と黒砂さんが呼びに来たので私も上にあがる。


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