一瞥

私はレオンハルトに連れられて、彼の馬車に乗せられた。


私は彼にいかにも文句があるような顔でほっぺを膨らませて見つめたが、彼は何事もないように無視した。   


「どうして私があなたと婚約する事になっているんですか?誰がこんな理不尽りふじんな事を勝手に……」


私は不安で声を震わせながら疑問をていした。


「王太子が決めたんです。あなたとの婚約を破棄する為にちょうど相手がいなかった私との婚約を。」


レオンハルトは当たり前のように冷たく答えた。


「王太子が?どうして……」


私は理解できなかった。


「王太子はあなたとの婚約破棄をして、彼女と婚約したいのです。しかしあなたは公爵令嬢で、王族との婚約を破棄されるというのは大きな不名誉であり、王太子はあなたひいては公爵家に対して何らかの損失の補償をしなければなりません。そこで、王太子は私にあなたと婚約するように命じたのです。」


レオンハルトはそう言って、私を見下した。


「私は王国最北端の辺境伯領を治める男です。王宮から遠く離れた土地で、魔物や敵国と戦っています。私は王太子にとって都合のいい駒です。私があなたと結婚すれば、王太子はあなたに対して責任を果たしたことになりますし、私もあなたの名誉と財産を守ることになります。」


レオンハルトはそう言って、冷笑した。


「つまり、あなたは王太子から捨てられたゴミであり、私はそのゴミを引き取る男です。こんな結婚に幸せはありません。しかし、これが現実です。受け入れるしかありません。」


レオンハルトはそう言って、馬車の窓を閉めた。


私は彼の言葉に打ちのめされた。


私はゴミだったのだろうか。


私は捨てられるべきだったのだろうか。


私は結婚するべきではなかったのだろうか。


私は涙が溢れるのを止められなかった。


私はレオンハルトに連れられて、彼の辺境伯領に着いた。


私は彼の屋敷に案内された。


私は彼の妻としての部屋に通された。


私は彼と同じ部屋に住むことをこばんだ。


私は彼を愛していなかったし、彼も私を愛していなかった。


私は彼との婚約を受け入れたが、それは名目だけのものだった。


私は彼との関係を最低限にするつもりだった。


しかし、私は彼の屋敷で暮らすうちに、彼の意外な一面や、辺境の人々の温かさに触れて次第に心を開かされた。


レオンハルトは冷酷で無慈悲という噂とは裏腹に、実は正義感が強くて優しい人だった。


彼は辺境の人々を大切にしており、民もまた彼を慕っていた。


彼は魔法剣士として優秀であり、魔物や敵国と戦う際には勇敢ゆうかんであり、仲間を守るために命を惜しまなかった。


彼は私に対しても、最初は冷たくあたっていたが、次第に優しく接するようになった。


彼は私の才能や努力を認めてくれたし、私の意見や感情を尊重してくれた。


彼は私に笑顔を見せてくれたし、時にはからかってくれた。


彼は私に手料理を作ってくれたし、時には一緒に散歩や買い物に行ってくれた。


彼は私に花やプレゼントを贈ってくれたし、時には抱きしめてくれた。


私はレオンハルトに惹かれていった。


私はレオンハルトが好きになった。


私はレオンハルトを愛した。






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辺境伯の花嫁は元悪役令嬢〜婚約破棄から始まる新しい人生•改〜 六角 @bdj

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