【実話怪談ふうフィクション・エッセイ】 坂

雫田保


その坂には絶えず目撃談があって「やれ、火の玉がポンポン降りてきた」だの「やれ、側溝の近くに手形の水たまりが湧き出てくるように見えた」だの、なんだの。

先週、ぼそぼそとBさんが言うことには「あの坂って、やたらた長いでしょう」だって。

そりゃあ、ねぇ。

って返すけど、続きを促す。

それで、ちょっと時間があったから興味本位で登ってみたの。両脇を木々で覆われてて、うっすら暗いけど、眩しくはないくらいに木漏れ日はあって。マフラーを結び直したけど、そんなに寒くはないなって思った。

もちろん、いろんな噂があるのは聞いてたから、だから興味本位なんだけど。

みんな、登りの方で目撃をすると思うんだけど。というか、登り始めるまで、そう思ってたんだけど。

それでね。

それで?

この坂の先には何があって、みんな、何の用事で向かっているの?

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【実話怪談ふうフィクション・エッセイ】 坂 雫田保 @mu_imiiii

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