2.「好きな人の話、誰にも内緒だよ」

 彼女と出会ってからというもの、私の学校生活に色が戻ったのだ。

 彼女は私と似ていた。彼女も友達がいなく、すっかり引っ込み思案になってしまった私と同じで、孤立していた。彼女も友達と別のクラスになってしまったようだ。そんな、何かの同盟かのように、常に一緒に行動するようになったのだ。依存していたのだと思う。特に私が。中学校に進学する際、先生に「あの子と同じクラスになるように掛け合ってもらえませんか」と懇願するほどに。

 中学校に進学を果たした後も、私と彼女は相変わらず一心同体かのように一緒にいたのだが、中学2年生になった頃、大きな変化がひとつ、少しの変化がひとつあったのである。


 大きな変化。私たちの絆にもうひとり加わったのだ。Mちゃんという。Mちゃんは良い子だった。Mちゃんまた、クラス替えで独りぼっちになってしまったのだろう。昼休みには別のクラスに遊びに行き、移動教室の際は独りで行動していたから。私は躊躇いもせずに声をかけた。私は独りがつらいことを知っていた。Mちゃんと私の親友もすぐに仲良くなった。


 少しの変化。彼女に好きな人ができたのだ。聡明で剽軽な、陸上部の彼。のちに部長まで登り詰め、校内放送でのインタビューで「ハンバーガー…………………3個分かなっ!」と当時流行っていた(?)迷言を言ってしまうような、ユーモアのある彼。私は「私ちゃんにしかいえない。内緒だよ」とコソコソと惚気話を聞かされ、時には文通もしていた。


 私は少しうんざりしながらも頬を染めて話す彼女を見るのが好きだった。

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