第16話 工房が必要なんじゃない?

「こんにちわ。」

「おお、この間のお嬢ちゃんじゃねえか。似合ってるぜ、イケメンの少年みてえじゃねえか。」

「ありがとうございました。明日の朝帰りますので、一言お礼を言いたくて。」

「まあ、売れ残りの商品だったからな、気にする必要はないさ。」

「それで、間に合わせで作ったもので恥ずかしいんですけど、もう使わないのでよかったら貰ってくれませんか?」

「なんだいそれは?」

「アイロンと言って、布のシワを伸ばす魔道具です。」

「えっ?」

「ちょっと、この端切れで試していいですか?」

「ああ、どうせ捨てちまうもんだから構わないが……。」

「魔法陣を起動すると、この先端から蒸気が出ます。それで底面を布に押し当てると……。」

「おい、シワが消えたぞ!」

「あとは、肩の丸みを出したい時にも使えると思います。」

「驚いたな、こんな魔道具初めて見たよ。あんた、マギ・デザイナーだったのかよ。」

「よかったら使ってくださいね。じゃあ、また来ます。」

「おお、こっちこそありがとうな。」


 私とリンはお世話になった人たちにご挨拶をしながらお土産を物色して帰りの馬車に乗り込、いました。

「あーあっ、私だったら絶対に王都生活を始めるんだけどな。シャキは本当にシランへ帰るの?」

「当然ですよ。私、賑やかなのは好きじゃないので。」

「ほら、冒険者ギルドへ行った時だって、カウンターのお姉さんたちがキャッキャ騒いでたじゃない。絶対モテルわよ。」

「いや、女性からモテても嬉しくないですよ。」

「エーッ、シャキってそういう系統だと思うんだけどな。」

「まあ、男性にも興味はありませんけどね。」

「えっ、まさかそっち系?」

「そっちって、どっちですか!」

「ほら、えっと、ケモノ好きとか、後ろからされないと燃えないとかさ。あっ、悪魔専とかの人もいるみたいだよ。」

「ないですよ。ほら、今は魔法陣考える方が楽しいんですよ。」

「はぁ、羨ましいな……、年収金貨1万枚……。」

「今の所持金は金貨3枚ですよ。」


「あっ、そういえばさ。」

「はい?」

「今の家だと、素材が入らないでしょ。」

「えっ?」

「だって、ミスリルの胸当てを100個注文してるんだよ。」

「何で?」

「いったじゃない。軍から発注受けたって。」

「うん……。」

「自動小銃も、デザインが決まったら100丁単位で納品されるんだからさ。」

「……ムリです。」

「認定受けちゃったんだから、もう断れないうわよ。」

「そんな……。」

「だから、専用の工房を持ちなさいよ。できればギルドの近くで。」

「はあ……。」


 町についた私は、リンに連れられて商業ギルドに来ました。

「この子が家を探してるんだけど。」

「条件はどのようになります?」

「魔道具ギルドの近くで……。」

「あれ、リンじゃない。何してんの?」

 奥からリンの知り合いらしい人が出てきました。

 金髪のギャル系です。

「あっ、サキいたんだ。えっとね、この子の家探しだよ。ほら、この間発注した胸当ての納品先。」

「あっ、マギ・デザなのね。いいわ、ここ私が対応する。」

「お願いします。」

 新人さんなのだろうか。最初に対応してくれたお兄さんは奥に引っ込んでしまった。

「それでー、納品先ってことは工房よね。」

「そういうこと。」

「しかも、新人ぽいのにいきなり100ってことは、腕がいいってことだよね。」

「あったりー!」

「お買い得物件があるよ。冒険GとマギGの中間くらい。貴族の愛人邸ってやつ。」

「ああ、あそこ空いてるの?」

「奥さんにバレちゃったみたいでさ、急に処分依頼が入ったのよ。まだメイドは残ってるんだけど、愛人は追い出されちゃったから、そのまま入れるわ。」

「いくら?」

「金貨300枚。」

「ええーっ!」

 私はその時初めて声をあげました。



【あとがき】

 さて、急展開……。

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