第15話 認定式

 認定式は、城の会議室で行われました。

 主催者側は陛下と産業大臣、兵団長と総務大臣。および冒険者ギルドマスターと魔道具ギルドマスターの6人。

 私の側は、シランから同行してくれた二人だけでした。

 陛下から認定書と刻印をいただき、その後は歓談になります。


「それで、プロフェッサー君は、王都に来る気はないのかね。」

 総務大臣に聞かれ、私は正直に答えます。

「私を拾ってくれた冒険者パーティーのメンバーがおりますし、当面はシランを離れたくありません。」

「残念だねえ。城のお抱えマギ・デザイナーになってもらいたかったのだが。」

「申し訳ございません。」

「まあ、軍としては今回提案してくれた3品を納品してくれれば良いので、どこで作ろうが問題ありませんがね。」

「わしも見させてもらったが、あの自動小銃と胸当てがあれば我が国は安泰じゃな。」

「陛下、お言葉ですが、彼ならもっと素晴らしい魔道具を開発してくれると思います。シランにいるよりも王都にきてくれれば……。」

「まあ、冒険者ギルドとしたらそうだろうな。」

「いや、産業局としては、武器・防具だけでなく、生活に役立つ魔道具を期待しておるのだが……。」


 こんな風に意見が飛び交い、認定式は終わりました。


「それにしても、完全に男の子だと思われていたわよね。」

「ああ、俺だってシャキだって分からなかったからな。」

「えへへっ。うまくいきました。」

「それで、俺はこのまま帰るが、お前たちはどうするんだ?」

「すみません。用事ができましたので、2・3日こっちに残ろうと思います。」

「だったら、私も付き添うわよ。」

「そうか、気をつけてな。」


 私はリンさんと一緒に刀鍛冶の工房へおじゃまします。

「おお、やっぱりきおったな。」

「はい。最初にお断りしておきますが、タングステンは刀に向かないと思います。」

「ほう、なぜじゃ。」

「硬すぎるので、衝撃には弱いと思います。」

「ああ、その通りじゃ。傷はつかないのじゃが、何度も衝撃を加えると割れてしまうのじゃ。」

「ですから、刀の心材には使えると思いますが、周りには柔らかい鉄が最適だと思います。」

「満点じゃな。まあ、タングステンの使い道としては、短いナイフや彫刻刀のような道具じゃろうな。」

「それでも、素材としてお持ちなのはなぜでしょうか?」

「鍛冶職としてな、これを叩いてみたいのじゃよ。」

「そうですか。私なりに加工する方法を見つけました。」

「奇遇じゃな、わしも思いついたぞ。まあ、それなりのマギ・デザイナーが必要じゃがな。」

「今日、それなりのマギ・デザイナーだと認定されました。」

「ああ、白ヒゲのジジイから聞いておるよ。」

「まずはレンガで作った炉が必要です。」

「中庭に作ってあるぞ。」

「工具にはすべて、この耐熱と強化の魔法陣を貼り付けていただきます。」

「ほう、もう作ってあるのかよ。」

「炉に張るのは、この耐熱・強化と内部を3700度まで加熱する魔法陣です。」

「うまくいったら、紙じゃなくきちんと書き込んでくれよな。」

「当然です。」

「道具の耐熱はどれくらいにしたんじゃ?」

「5000度です。」

「十分じゃな。」


 こうして、私はタングステンのキリ先を5本手に入れました。

 刀鍛冶のクニシゲお爺さんは、キリ先を取り付ける軸受けまで作ってくれました。

 私は軸受けに魔方陣を刻みます。キリ先の強化と2000度の過熱をして、軸受け部分は冷却します。

 その特製ペンを使って、クニシゲお爺さんの工具に直接魔方陣を書いていきます。

「凄いです。タガネで刻むのよりもスムーズで思った通りの字が書けます!」

「光栄じゃよ。プロフェッサー一発目の仕事をしてもらったんじゃからな。これで、わしは国で唯一のタングステン技師になったわけじゃ。」 



【あとがき】

 爺さんとシャキの会話が気に入っています。気のあった仲間のようなセリフが……。

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