第17話 愛人屋敷のメイドさん

「金貨300枚なんて、私には無理ですよ。」

「大丈夫よ。魔道具の代金、一部先払いしてあげるから。」

「あはは、マギGの担当がバックについているんだから、後払いでも大丈夫だよ。」

「内見できるの?」

「メイドが常駐しているから大丈夫よ。」

「メイドさんがいる家なんて、冗談いわないでくださいよ。」

「シャキ、あなたはSランクのマギ・デザなのよ。国に1万人近くいる魔道具師のトップなんだから、みんなが目指す生活をしてもらわないとダメ!」

「えっ、Sランクなんだ。じゃあ、半分貴族みたいなモンじゃない。決まりだね。」

「決まってないですよ!」


 ということで、私たちはその愛人邸を見に行くことになりました。

「いらっしゃいませ。」

「ああ、今日は下見なんですよ。」

「では、次のご主人さま……候補というわけですね。」

 出迎えてくれたのは、チーフメイドのセリカさんという黒髪美人さんです。

「セリカさんは、この後も働いていただけるのですか?」

「それは、次のご主人さまが判断されることですから、わたくしには分かりません。」

「少し寂しそうですね。」

「まだ、2年ですが、ここは楽しい職場でしたから。」

「楽しい?」

「はい。奥さまと4人で楽しく過ごしてまいりました。みな女性でしたし、貴族街ではありませんので普通にお買い物にも出られましたし。」

「ここには、あと二人のメイドさんがいるんですか?」

「はい。お料理の担当が一人と他全般の子です。」

「みなさん、秘密は守れますよね。」

「当然でございます。」

「シャキ、その気になってきたの?」

「とりあえず、家の中を見せてもらいます。」

「はい、どうぞ。」


「全体的に白が基調で、かわいらしい作りですね。」

「シャキのイメージにピッタリだろ。」

「うーん、でもプロフェッサーとしては、少女趣味すぎるかなって……。」

「プロフェッサーがシャキのために用意した家ならアリじゃないの?」

「えっ、私まさかプロフェッサーの愛人?」

「いや、そこは弟子でいいでしょ。」

「じゃ、決まりね。契約者はマギ・デザイナーのプロフェッサー様で、使用者はシャキさん。」

「マギ・デザイナーのプロフェッサーさま……ですか?」

「そう。新しいご主人は、新進気鋭のSランク:マギ・デザイナーのプロフェッサーよ。他の二人にも徹底しておいてね。」

「それで、シャキさまはいつからお住まいになられますか?」

「あっ、今日からでもいいですか?」

「はい。すぐに準備いたします。」


 こうして私はプロフェッサーの弟子という建前で屋敷に住むことになりました。


「すみません。軍からの発注が決まってしまったので、当面はギルドの用意してくれた家で泊まり込みます。時々は帰ってきますけど、何かありましたらギルドに連絡ください。」

「マギ・デザイナーっていうのも大変よね。了解よ。無理しないでね。」

「新しい魔道具のアイデアがあるので、完成したらすぐに持ってきますから。」


 新しい魔道具のアイデアはキックボードです。

 私は、道具屋さんに発注します。

「おじさん。こういう道具……というか、乗り物を作ってほしいんだけど。」

「これは、ゴムのタイヤなんだな。で、ハンドルっていうののところに魔法陣用の盤をつけて、小窓を開けるんだな。」

「そう、下の盤を回すと、この小窓に書いたものが変わる仕組みなの。」

「そうすると、仮に固定するストッパーが必要か。」

「うん。それで、折りたためるようにしてほしいんだ。」

「複雑だから、高くなっちまうぞ。」

「いくらくらい?」

「そうだな、金貨3枚でどうだ。」

「オッケー。動作確認したら、追加で発注するからね。」


【あとがき】

 わかりにくいので、魔法円表記をやめて魔法陣に統一します。

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