第10話 評価

「魔法円の具現化が起きて、効果も確認できれば確かにSランクの要件を満たしていることになりが……。」

 この、ヒゲを生やしたおじさんは、ギルドマスターだと紹介してくれました、

 体格もよくて、髪を短く刈り上げた紳士です。

「まずは魔法円の具現化を確認しましょう。ほかの魔道具を起動すればいい。」

 このおじさんは、カウンターにいたリンさんの上司で、総括課長さんです。

 40才くらいでしょうか。銀髪で身長の高いメガネさんです。


「では、次の申請の物理・魔法防御ですね。」

「あっ、それは胸当ての右側にある魔法陣です。」

「そうか、じゃあリン、盾を持って魔法円を起動してくれ。」

「はい、ギルマス。」

 リンさんが魔方陣を起動すると、今回も青緑色の魔方陣が起動しました。

 そして、今度は青色の輝きがリンさんの体を覆います。

 これも、今回追加した仕様で、金色の光と青色が合わさって緑色に発光しています。

 盾は身体強化に影響されないので青色に光っています。


「本当に魔法円が具現化しましたね。」

「ああ、わしは3回目じゃな。見たのは。」

 そういったのはゲンさん。魔道具の鑑定専門の人だそうです。

「俺も2回目だ。」

「私は初めてです。いやあ、目の保養ができました。」

「じゃあ、効果の確認だな。」

 そういうと、ギルマスさんは木刀を取り出しました。

 盾を叩きますが音がしません。

「ふむ、完全に接触を防いでいるな。じゃ、これならどうだ!」

 ギルマスさんは大きく振りかぶって凄い勢いで木刀を叩き込みます。

「ひっ……!」

 リンさんの息をのむ声がもれます。それだけ、本気の気迫だったのでしょうか。

「い……いやぁ!」

 ビュッと風を切る音が聞こえバキッと……木刀の折れる音が響きます。

「これでも、ダメかよ。木刀に強化をかけたんだけどな……」


「ふむ、私の出番ですね。」

 総括課長さんが前に出てきます。

「小手調べに火球から行きましょう。」

 総括課長さんの腰には、いくつか魔法陣の書かれたベルトが巻かれています。

 そのうちの一つに左手を触れると、右手の先から炎の塊が飛び出しました。

「イ、イヤ……止めて……。」

 火の玉は、音もなく盾の表面で霧散します。

「焦げ跡すらつきませんか……、じゃあ、槍ならどうですかね。」

 別の魔法陣が起動したようで、今度は氷の槍が射出されますが、同じように盾に弾かれます。

「お願いです……止めて……。」

「傷もつかないというのは、ちょっと心に来ますね。仕方ないです。これで死んでください!」

 3メートルほどの火の玉がリンさんを襲います。

「ギヤー!死ぬ!熱ッ!……くない?……。」


「やれやれ、腕が鈍ったんじゃないかのう。こういうのは一点突破じゃよ。」

 ゲンさんがリンさんに近づいて、手にしていた杖を振りかぶります。

 杖の先端がつるはしのような形の光を発します。

「一点集撃!」

 バッティングのようなフォームで、盾に攻撃を加えます。

「やめて!殺す気ですかぁ!」

 リンさんの悲痛な叫びがあがります。


「ゲンさんも、ボケたんじゃないか。傷どころか、接触音すらしないじゃないか。」

「ゼイゼイ……確かに……隠居する時かのう……。」

 ギルマスさんの手には、いつの間にか剣が握られています。

「ギ、ギルマス?……まさか……。」

「これで最後だ。俺の魔剣を防げるなら、あとは魔王か四天王クラスの攻撃しかない……。」

「ダメッ、やめてください……、冗談なしですよ……。」

 ギルマスのキエーッ!という気合と、リンさんの悲鳴。どちらの声が大きかったか……。


「こんなものが出まわったら、ダンジョンじゃ無敵になっちまうな。」

「少し……漏れちゃいました……。」

「この胸当てだけでAランク冒険者が誕生してしまいますなぁ。」

「自力があれば、Sランクも可能じゃろ。どうじゃったリン?」

「グスッ……、怖かった……。何度も走馬灯が駆け巡りました……、ちょっと下着を替えてきます……。」


【あとがき】

 こういうシーンは想像するだけで楽しいですね。リンちゃんの恐怖感と下着の状況……。もう少し写実的に表現できたらなぁ……。

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