第8話 開発

「アイリスさん、この自動小銃売れないですかね。」

「えっ、売れると思うけど。」

「ど、どうすればいいんですか?」

「そのまま、魔道具屋に持ち込んでもいいんだけど、無名のものは安く買いたたかれるのがオチね。」

「評価してもらうためにはどうしたらいいんですか?」

「魔道具ギルドに”マギ・デザイナー”の申請をして、認定をもらうんだけど、そのためには5種類の魔道具を提出して審査してもらうのよ。」

「5種類もですか……。」

「そう。身体強化と自動小銃で二つね。物理障壁と魔法障壁を組み合わせて一つだから、あと2種類ね。」

「うそ……あと2種類も……。」

「まあ、ゆっくり考えるんだね。」


 2種類という事実が私にプレッシャーを与えてくれました。

 一つは構想があるものの、もう一つという事実が邪魔をしてうまくイメージをまとめることができません。

「どうしたシャキ、集中できていないそうだが。」

「あっ、すみません。」

「討伐に集中できないなら入口に戻って待機してろ。」

「うっ……。」

 そうだった。こんなところで失敗したら、死ぬ……。それは私だけじゃなく、パーティー全体の問題になる。

 帰れと言われるのも当然だった。


「まあ、ちょっと休憩するか。」

「休憩……ですか?」

「ああ。時には休憩も必要だろ。まあ、魔物に備えながらだから、完全な休憩ではないけどな。」

「ちょっと待ってください!……物理障壁と魔法障壁を組み合わせれば……。」

「おいおい、何を書いているんだ?」

「分かりづらいから、外周を発光させて……。」

「内側から外側へは出られるし、魔法も物理攻撃も通過するけど、外部からの攻撃と侵入は不可にして、効果は半径5メートル。」

「何を言ってるんだ?」

「完成です。魔道具”エリアシールド”。」

「エリアシールドだと?」

「ちょっと作動させます。」

 ブン!空気を震わせるような鈍い音がします。

「なんだ、このドーム状の光は?」

「術者から半径5メートルに物理障壁と魔法障壁を張りました。」

「なんでそんなことをする必要があるの?」

「休憩のためでしょうね。」

「はい。オフにしなければ、5時間有効です。」

「だが、その間に魔物にかこまれちまうぜ。」

「内側から外側には物理攻撃も魔法攻撃も有効です。エリアから出ることもできますが、入ってくることはできません。」

「本当に効果があるのか、戦闘でチェックしてみるか。」


 戦闘で確認したところ、シールドは狙いどおりに作動していました。

「これがあれば、仮眠も楽になるな。」

「ゆっくり食事もとれるわね。」

「迷宮でも、屋外でも使えそうだな。」

「コロンは寝相が悪いから、転がって外に出ちゃうかもね。」

「バカいえ、いくら俺でも5メートルは転がらねえよ。」


「これで、残りはひとつ!」

「そうね、頑張りなさい。」

「何だそれ!」

「マギ・デザイナーの申請に必要な5種類の魔道具よ。知ってるでしょ。」

「ああ、審査に必要なやつか。」

「それって、必須要件じゃなかったはずだけど。」

「えっ、トイさん、どういうことですか?」

「優れたものがあれば、数が少なくても審査してくれるんだよ。」

「ああ、確かに聞いたことがあるな。」

「審査の対象となった魔道具は、魔道具ギルドが販売権を持ってしまうから、それを嫌がって少ない数で審査依頼する魔道具師も多いって聞いたよ。」

「シャキの魔道具なら、少なくても十分じゃね。自動小銃だけでもいけそうな気がするぜ。」

「ホントですか!」

「ああ、魔道具ギルドは申請料も登録も無料なんだから、やってみろよ。」

「はい!」


 こうして私はマギ・デザイナーの申請をすることになりました。

 まさか、あんな大騒ぎになるなんて夢にも思わないで……。


【あとがき】

 うん。いい感じで進んでいます。

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