第7話 ささやかな反抗
身体強化と物理防御・魔法防御の動作確認を終えて、トロンさんとトイさんに確認をしてもらうことになりました。
「じゃあ、シャキの冒険者登録もやっておいてくれよ。」
「うん。明日行ってくるね。」
「アイリスさん、冒険者登録って……まさか……。」
「うん?」
「私を冒険者にするつもりなんですか?」
「そうだよ。」
「むり!ムリ!無理です!」
「でも、冒険者にならないとお金が稼げないわよ。」
「うっ……。」
「まあ、あんたは戦闘しなくてもいいから大丈夫よ。」
「じゃあ、なんで?」
「ほら、自分の作った魔法陣の効果を確認して、改善できるとこがあったら改善できるでしょ。それに、新しい魔法陣を思いつくかもしれないし。」
「ホントに?」
「なんで?」
「魔物の前に私を放り出して、魔物が私を襲っている間に倒すオトリ的な使い方したり……。」
「へえ、面白そうだねそれ。物理防御があればそれもできそうだよね。繰り返しできるし。」
「う、売られた方がましです!」
「へえ、売られたいんだ。結構、淫乱なんだ。へーっ。」
「アイリスは意地悪です!」
抵抗空しく、私はアイリスに連れられてドナドナした……いや、売られた訳ではないけど。
冒険者ギルドのカウンターにいたお姉さんは、金髪のギャルだった。
「あら、アイリスお久ー。」
「ちょっと、こいつ登録しちゃてくんない。」
「オッケー、じゃこれにチャチャっと書いちゃってねぇ。」
「了解。ほらシャキこれ書きな。」
登録カードという用紙は、簡単なものだった。
名前を書いて、年齢を書いて終わりだった。
「じゃあ、5分待っててね。」
5分後に金属製のカードを渡され、銀貨3枚を支払って完了でした。
「Fランクスタートよ頑張ってね。」
「まあ、あたしらと一緒だから、Cランクまではすぐに上がるけどな。そうだ、パーティー登録しといてくれよな。」
「オッケー、やっとくね。」
いや、上位ランクに上がるつもりはありません。
周辺で薬草をとってます……。そう思っていた時期が私にはありました。
「ぎゃあ!ムリムリ!コワイ!気持ち悪い!漏れる!」
Aランクパーティーの受ける依頼というのは、とっても怖いんです。
「あはは。シャキは大げさだな。」
「ちょっと、煩いんだけどぉ!」
「いやあ、この魔法陣は完璧ですな。」
「ああ、身体強化も障壁も最高だぜ。」
「グスッ……。」
Aランクの依頼に引っ張り出される方はたまったもんじゃありません。
アイリスの宣言通り、10日後にはCランクになっていました。
くっ、いつまでもやられっぱなしのシャキ様じゃないわよ。
密かな闘志を胸に、私は書き上げました。その名も魔法陣”自動小銃”。
木片をそれっぽくカットしてもらい、先端に金属製のパイプを取り付けています。
全体を黒に着色して魔法陣を刻み込んであります。
なにより、効果音も魔法陣に書き込んであるので、使用感は抜群です。
「シャキ、なによそれ。」
「私専用の武器です。」
「来たぞ、コボルトだ!」
「私がやります!」
一歩横に踏み出した私は、自動小銃を構えて魔法陣を起動します。
展開される魔法陣とダダダダッ!という効果音。
先端から発射される無数の氷の弾丸(アイスパレット)、霧散するコボルトの群れ。
「すげえな……。」
「相手がコボルトとはいえ、一瞬で全滅させるとは……。」
「いつの間に……。」
「えへっ。」
人気者(ヒーロー)でいられたのはその日だけでした。
「私の分も作りなさいよね。」
「はい……。」
二丁の自動小銃を得たパーティーは、水を得た魚のように次々とAランクの依頼をこなしていきます。
気が付くと、私もBランクに昇格していました。
【あとがき】
安全装置(スイッチ)を魔法陣の一部に組み込んであるので暴発はしませんよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます