第3話 魔道具師

 家にいた女性はアイリスといって、私の2つ上の18才だといいます。

 ウエーブのかかった柔らかそうな栗色の髪は肩口まで伸びており、スタイルもボンキュッボンで羨ましい限りです。

 もし、売りに出されたら、私の何倍もの価格がつくことでしょう。


「私、本当に売りに出されるんですか……?」

「うーん、もうちょっと胸が成長したら考えよっかな。」

「ダメです。私なんてAカップで、お母さんもそうですから、大きくなんてなりませんよ!」

「Aカップって?」

「胸の高さのことで、一番低いのがAカップです……。」

「じゃあ、私は?」

「見た感じだと、DかFくらいじゃないでしょうか……。」


「それで、シャキは何ができるの?」

「料理とか、家事は一通りできます。あと、字を書いたり……。」

「へえ、字が書けるんだ。」

「あっ、でもこの国の字はまだ知りませんけど。」

「シャキの国の字ってどんな感じなの?」

 私はリュックからメモ帳とボールペンを取り出して、いくつかの漢字・ひらがな・梵字を書きました。

「あんた、それって……。」

「ええ、この字は普段使いの字じゃないんですけどね。」

「文字のことじゃないわ、何で墨もつけずにこんな細い字が書けるのよ!」

「えっ、ボールペンだから普通じゃないですか。」

「何よボールペンって!」

「えっと、この先っちょについているボールがくるくる回って中のインクが出てくるんですですけど。」

「そんなの聞いたことがないわよ。あんたの国って、こんな常識外れのモノ使ってるの?」

「ええ。普通に……。」


「ま、まあいいわ。それで、あんたの使っている文字って、随分と複雑そうだけど文字自体に意味はあるの?」

「漢字と梵字には意味がありますね。」

「やっぱりね。私の睨んだとおりだわ。」

「イヤです。睨まれるのは好きじゃありません。」

「……、面倒だからスルーさせてもらうけど、あんたって天然?」

「うーん、時々言われますけど……。」

「そう……なのね。まあいいわ。それでね、魔法なんだけど。」

「えっ、この国って魔法があるんですか!」

「えっ、あんたの国には魔法がないの!」

「そんなの当り前じゃないですか。魔法が存在するのはアニメや本の中だけですよ。」

「よく分からないけど、魔法は知ってるのね。」

「はい!ハリポタとか魔法少女ナンジャーとか大ファンなんです。」

「……知らんけど……。」


「まあいいわ。私たち魔法使いは魔法の詠唱を行うんだけど……。」

「詠唱!知ってます!『冥界に潜むサタンに告ぐ。汝、我との契約に則り……。』」

「そんな詠唱聞いたことがないわ。いいこと、詠唱の基本は、事象を明確に示して、それに付随する条件を述べる。」

「そんなの、ロマンがないですよぉ。」

「余計な言葉を入れたら、それだけ発動が遅れちゃうでしょ。遅くなったら魔物に食われちゃうじゃない。」

「魔物!」

「とりあえず、あんたの趣味は封印しとくわ。その詠唱を文字にしたものが魔法円よ。」

「魔法陣じゃないんですか?」

「どっちでも通じるけど、魔法円が一般的ね。」

「じゃ、私は魔法陣にします。」

「好きにしていいわよ。魔法円はね、最初に二重の円を書いて、真ん中に事象と外側の円に条件を記入するの。」

「ふむふむ。」

「書くのは文字だけじゃなくて、記号とか絵でも大丈夫よ。出来上がったら、外周円に魔力を流せば発動するの。」

「へっ、それじゃあ、魔法陣の方が詠唱よりも早く発動するじゃないですか。」

「確かにそうだけど、持ち歩けるような道具に魔法円を書こうとすると、文字数が限られちゃうじゃない。」

「そういえば……。」

「だから、細かい文字を書くとか、意味をもった効果的な文字って貴重なのよ。」


【あとがき】

 うーん、天然キャラというのは、話が進まないですね……。

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