幕間 かなり隣に来た私と、口を開いたままの君
事の始まりは結構唐突だった。ちーくんが休んでいたある日の朝方、もう1つの家に帰ろうとした私と青い服を来た人々はすれ違った。
「叔父さん、私やっと一人暮らしを始めるかもしれない」
「そっか、寂しくなるな」
そう今の保護者である叔父に言ったのはそこから帰った後すぐだった。次の日早速あのアパートを取り扱ってる不動産屋に叔父と2人で行って無事彼の隣の部屋を掴み取った。そして今日、引っ越したという訳だ。
「そういや一応安否確認とかたまにはくれると嬉しいんだけどまあ自由にしておくれ、荷物の配置はこんな所でいいかい?」
「うん、ありがとう叔父さん、色々わがままを聞いてくれて」
叔父は私の要望を何から何まで聞いてくれた聖人だ。引っ越しも手伝ってくれたし中学後半の頃から面倒も見てもらった。ちーくんの次に大切な人だ。
「いや大丈夫、兄の可愛い忘れ形見のためだもの。あ、結婚式は親族席でいいか?」
「勿論、待っててね」
こういうところが早いのは我が一族共通なんだろうか、ちなみに叔父にはちーくんの事は1から9.8位まで話してる。祖父母も両親も早くに亡くなった私にとって、約30歳差の叔父は第2の両親みたいなものだ。ちーくんに出会う前はあんまり話せて無かったんだけど、ちーくんとの出会いで浮かれている私を心配してくれた事からこうして仲良くなっていった。
「うん、じゃ行くから元気でやるんだぞ」
「はーい」
そんな叔父との生活も今日で終わる。そして最愛の人との壁を一つ隔てた生活が始まるのである。私を見たらどんな顔をするんだろうな、この間伝えそびれちゃったみたいだし。
『無事引っ越し終わりました!!』
そう言えば○に投稿するのを忘れていた。ちーくんとは数回通話したりしたウエストキャニオンこと西谷、この垢での投稿は所謂逆監視みたいな感じに最近なっている。好きな人に自分の動向というのは伝えたいものというのが私の意見で、あくまでそれを推し進めてるだけなんだけど。ちーくん大好き。
『お!おめでとうございます!』
即座に新田ことちーくんの○垢から返信が来る。前監視カメラで見た所通知オンにはなってた。でもこのスピードは流石ちーくんとしか言いようが無い。返信早いのも大好き。さて準備は済んだ、さあいざ関ヶ原。
「すみませーん、越してきた西谷と申すものなのですけどー」
「はーーい………」
はーいと言ってドアを開けたきり彼の口は開いたままになっていた。しかし僅かながらに生気はある。
「あ、隣に越してきたよ、ちーくん。改めて西谷叶音です。不束者ですがよろしくお願いします」
ちーくん完全にノックアウト。多分記憶とかも無さそうなので適当に部屋まで運んでベットで休ませておいた。さてこれからどんな事が起こるかな。
それにしても口開いてるちーくん、可愛かったな。いつかその口と唇を奪えたらな、なんて思ってしまう。罪な私をちーくんは受け入れてくれるかな。多分あとは気持ちを伝えるだけになったし、ラブコメ最終章突入、かな?
無能で死に損ないの俺と、それに着いてく君。 タービン(道路歩行者) @Ta-bin15
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